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尿はどのようにして作られる? 腎臓の重要な役割とは?

私たちの体に2つある腎臓は体液濃度の調整などを行い、体の恒常性の維持に多大な貢献をしている。

今回は腎臓について簡単に学んでいくとともに、その重要な機能の1つである尿生成を特に見ていこう。

 

目次

 

 

腎臓の役割

腎臓は血圧の調整尿生成(老廃物の排出)の役割を担う器官である。

体に不要な物質を血液からこしとって最終的に尿として排出させる一方で、必要な物質は血液中に戻している

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腎臓は豆のような形をしていて、左右に1つずつあり、実は片方が使えなくなっても生きていける

 

腎臓から伸びた尿管は文字通り腎臓で生成された尿が通る管であり、尿はこの管を通って膀胱に溜まっていく。

 

腎臓の構造

では腎臓を拡大して詳しく見てみよう。

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腎動脈から入ってきた血液は腎臓の外側(腎盂の先々で部屋のようになっている部分)に流れ込み、腎静脈から出ていく。

そしてその過程で生成された尿は腎盂に集合して尿管を通って出ていく。

腎動脈・腎静脈=大動脈・大静脈です。腎臓に直接繋がっている部分なので、特に腎動脈・腎静脈と名前がついています。

 

今度は腎盂の先々の部屋のようになっている部分を拡大して見てみよう。

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上図のような、糸球体〜腎細管までのまとまりをネフロン(腎単位)という。

糸球体+ボーマンのう腎小体と呼び、さらに腎小体+腎細管ネフロンである。

ネフロンは腎臓片方あたり100万個あって、両方を合わせると200万個にも及ぶ。

 

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尿生成

腎臓の重要な機能の1つとして、尿生成がある。

腎臓では、ネフロンの1つ1つがろ過や再吸収などを経て尿を生成し、それが腎盂という一箇所に集められる。

 

腎動脈から血液が入り、毛細血管がくしゃくしゃになったもの(糸球体)から押し出されボーマンのうにキャッチされる。

これが尿のもとになり、腎細管を通って集合管へ行き、尿となっていく。

 

2つのプロセス

尿生成は、ろ過再吸収と呼ばれる2つのプロセスを経て完了する。

以下は、最終的に尿となる液体の流れをかなり雑に示したものである。

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ろ過とは糸球体からボーマンのうに液体成分(原尿)が押し出されることをいう。

この押し出しは血圧によってなされ、血液中の小さな液体成分だけが押し出される

 

毛細血管には小さな穴が空いているから、その穴よりも小さな物質だけが押し出されるよ!

 

次のプロセスの再吸収は、ボーマンのうを通過した成分が腎細管や集合管を通過する途中で、一部が血液中に戻されることをいう。

糸球体からボーマンのうに押し出された成分の中には、尿として排出してはいけないような大事なものも混ざっている。

そこで、そうした大事なものを再び血液に戻してやるのが再吸収だ。

 

尿の元になるものを原尿といい、原尿は1日180リットル作られ、そのうち尿として排出されるのが2リットル程度。

 

腎細管では一部の水分グルコース(糖)ナトリウムイオン(塩分)が血中に戻される。

集合管では仕上げとしてまた水分が戻され、これにより原尿から最終的な尿の量が決定する。

 

腎機能とホルモン

こうした腎機能をコントロールしているのはホルモンである。

ホルモンはホルモン産生細胞という細胞で作られる物質で、体内の状況に応じて分泌される。

 

例えば鉱質コルチコイドというホルモンが分泌されると、ナトリウムイオンの再吸収が促進される。

 

また、体内の水分量が少ないときには、体からガンガン水分を出すわけにはいかないので、今度はバソプレシンというホルモンによって集合管における水分再吸収が促進される。

 

体内成分の測定

当たり前の話だが、体にとって不要なものは排出され、重要なものは体内に残る。

では、実際本当にいらないものは出され、大事なものはちゃんと体内に残されているのだろうか?

 

実は血しょう(血液)中や原尿、尿の濃度を測定することで、体の状態を知ることが可能だ。

 

血液中の血しょうから原尿が作られ、そして最終的に尿ができる。

このプロセスにおいて、物質の中には再吸収により戻されるものもあれば、高い濃度に濃縮されて排出されるものもある。

 

以下の表は、ある物質が、ある段階で、それぞれどれくらいの濃度で存在しているかを示した表である。

※数字は仮のものです。

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血しょう→原尿→尿になるにつれ、濃度が変わっていないものや0になるもの、高濃度に濃縮されるものがあるのがお分かりだろう。

 

例えば、タンパク質は血しょう中(血液中)ではある程度の濃度で観測されるが、原尿以降の存在は0となっている。

これはタンパク質が単純に大きな物質であるため、ろ過されないからである。

 

糸球体は毛細血管だから、毛細血管の小さな穴をタンパク質は通り抜けられないんだよ!

 

次に尿素を見てみよう。

尿素は何十倍にも濃縮され、全て排出される。

つまり、再吸収はされていないのである。

 

では最後にグルコースはどうだろうか。

グルコースは、原尿中には存在するが、尿では0である。

これは、通常であればグルコースは全て再吸収され、尿としては排出されないことを示している。

 

ところで、病気にかかった人は尿検査でグルコースが検出されることがある。

これがいわゆる糖尿病であり、本来体のエネルギー源になるはずのグルコース(糖)が、尿として体外に排出されてしまう病気である。

 

このように、ある段階で、糖や塩分などの濃度を測り、それがどの程度濃縮され、再吸収・排出されるのかを調べることによって体の健康状態を知ることができ、同時にそれはあらゆる病気の処置の指針となるのだ。

 

※一番下のイヌリンについて

イヌリンは人体(動物の体)には存在しない物質で、植物由来のものです。注射をするなどして意図的に体に入れない限りは検出されませんイヌリンは人体に全く不要なものなので、濃縮されて全て排出されます。今回は「体に何かが入ってきても、それが体にとって全く不要なものであれば基本的に濃縮されて全て排出される」という例を示すためにあえてイヌリンを書きました。

 

まとめ

  • 腎臓は体の左右に1つずつ合計2つあり、尿を作ったり血圧の調整などをしている。

 

  • 腎臓の働きにより、体にとって不要なものは何倍にも濃縮されて排出され、必要なものは血中に戻される

 

  • 腎臓は糸球体ボーマンのう腎細管といった組織から構成されており、これらをまとめてネフロンと呼ぶ。

 

  • 腎臓内ではネフロンが片方あたり100万個、合計200万個存在し、ネフロン1つ1つが尿生成を行っている

 

  • 尿はろ過再吸収というプロセスを経て生成される。

 

  • 腎臓の機能はホルモンによってコントロールされている。

 

  • 血液中、原尿中、尿中の成分や濃度を測定することで体の健康状態を知ることができる。

 

肝臓とは? その多機能っぷりにはどのようなものがあるか? 

肝臓は「沈黙の臓器」、「ヒトの臓器の中で最大の臓器」とも呼ばれ、さらには「脳や心臓と並んで第三の急所」とも言われることがある。

このように肝臓が様々に表現される理由の1つには、肝臓自体の多機能さがある。

今回は基本的な肝臓のつくりと役割について学んでいこう

 

 

肝臓

肝臓は人間の臓器の中で最も大きく、その重さは体重の1/50くらい、1.2~1.5キロほどである。

肝臓は当然ながら細胞が集まってできているのだが、肝臓を作っている細胞を特に肝細胞という。

 

肝細胞は50万個ほど集まり、肝小葉という1つのユニットを作る。

そして肝小葉がさらに50万個集まると1つの肝臓になる。

肝臓の中心には太い静脈が通っている。

 

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肝小葉では周囲から中心に向かって血液が流れ、その途中で細胞に酸素を供給する。

血液は最終的に中心の太い静脈(中心静脈)に集まって出ていく。

 

肝臓とその周囲

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小腸で吸収された栄養分は血液にとともに一度肝臓に集められる。

小腸と肝臓は静脈系の特殊な血管で繋がっており、この血管を肝門脈(門脈)という。

栄養分を豊富に含んだ血液はこの肝門脈(門脈)を通って肝臓に運ばれる。

 

また、肝臓には肝動脈という、大動脈由来の動脈も繋がっている。

つまり肝臓には肝動脈と門脈の2カ所から血液が集まっているのである。

 

肝臓は血液が豊富なのはこういう仕組みがあるからなんだね!

 

ちなみに肝臓の右下あたりにちょこんとくっついているようなものは胆のうという。

胆のうは肝臓で作った胆汁という液をストックしておく場所である。

 

多機能な臓器

肝臓はただ大きいだけの臓器ではない。

その大きさに見合うかのように、実に多大な働きをしている。

その中でも特に重要な機能をいくつか紹介する。

 

血糖量の調節

肝臓は血液中のグルコースの量を調整している。

グルコース糖の一種で、私たちが活動するためのエネルギーになるものだ。

 

口から食べたものは胃などで消化され、栄養分は小腸で吸収される。

グルコースは小腸で吸収されたあと、前述の門脈を通って肝臓に集められる。

このとき、肝臓はグルコースグリコーゲンという物質に変え、蓄えておく。

 

グルコースがグリコーゲンに変えられると、グルコースグルコースではなくなった分、量が減るので血液中のグルコース量(血糖値)は下がる

逆に、蓄えてあるグリコーゲンをグルコースに戻せば、グルコースの量が増えるので血糖値は上がる。

 

このように、肝臓はグルコースの量を調整することで血糖値をコントロールしている。

 

タンパク質の合成と分解

肝臓は重要なタンパク質の合成や分解の場である。

摂取したアミノ酸を吸収したり、タンパク質をアミノ酸に分解している。

 

肝臓は重要な血液凝固に関するタンパク質(フィブリノーゲン)など、様々なタンパク質を合成している。

 

※血液凝固に関しては以下の記事で簡単に解説しています。

inarikue.hatenablog.com

 

尿素の合成

有害な物質であるアンモニアを、無害な尿素に作り変えている

アンモニアアミノ酸を分解すると発生する。

 

ちなみに尿素とは字の如く尿のもとになる成分であり、尿はこのあと腎臓にて生成される。

 

解毒作用

肝臓は、体にとって有毒な物質を解毒している。

ここでいう有毒な物質とは、例えばニコチンアルコールアンモニアなどのこと。

 

つまり上記で述べたアンモニアの分解も解毒作用の一つ。

病気の時に飲む薬も分解されてしまったりする。

 

私たちが飲む酒に含まれるアルコールも有害物質であり、アルコールを分解するとアセドアルデヒドというさらに有毒な物質が生まれる。

アセドアルデヒドは最終的には無毒な酢酸に分解される。

 

ちなみにアセトアルデヒドが体に多くあると頭痛や吐き気を感じ、これが体内に数日間たまった状態が二日酔いである。

酒を飲んでひどい頭痛や吐き気を感じる原因がこのアセトアルデヒドなのである。

 

また、肝臓の解毒作用は子供の頃は弱い

20歳未満は酒を飲んではいけない理由は、このアルコールを分解するための解毒作用がまだ弱い可能性があるからである。

 

胆汁の生成

肝臓は胆汁と呼ばれる物質を作っている。

胆汁は黄緑色の液体で、それ自身は消化酵素を含んでいないが、脂肪の分解を助ける役割を担っている。

 

通常、体が栄養を分解・吸収するには、その栄養を水に溶かす必要がある。

しかし脂肪は脂(あぶら)なので水に溶けにくく、分解と吸収が難しい。

そんな大変な脂肪の分解を助けるのが胆汁である。

 

胆汁は脂肪を乳化させ、リパーゼという消化酵素を効きやすくする。

乳化とは簡単に言えば水と脂肪を混ざった状態にすることで、リパーゼは膵臓から分泌される消化酵素の一種である。

 

胆汁によって乳化された脂肪がリパーゼによって分解されるんだね。

 

赤血球の分解

血液中に含まれる赤血球は120日ほどで寿命を迎え、肝臓や脾臓で破壊・分解される。

赤血球が分解されると、その中に含まれているヘモグロビン胆汁色素という黄褐色の(茶色っぽい)色素に変換される。

 

胆汁色素はいわゆるヘモグロビン分解後の残りカスのようなもので、最終的に胆汁とともに便に混ざって体外に排出される。

 

大便の色が茶色である理由もここにあり、胆汁色素が大便の色を決めているのである。

 

沈黙の臓器

肝臓の細胞は再生力が高く、ある程度の障害を受けただけでは肝臓では症状や不全がはっきりとあらわれない。

その再生力は臓器の3分の1を切り取っても数か月で元に戻ってしまうほどという驚くべきものだ。

 

このように肝臓は症状を自覚しにくく、気付いたときには時既に遅し・・・な状態になっていることも珍しくないため、沈黙の臓器とも呼ばれている。

 

なお、肝臓が調子を崩してしまう要因には、過度な飲酒やウイルス、メタボリック症候群など、日常生活の態度に起因するものからそうでないものまで多岐にわたる。

 

自力で肝臓の状態を確認することは難しいので、健康診断など、定期的な健診は欠かさずにやろうね!

 

まとめ

  • 肝臓は人間の臓器の中でも大きさが最大であり、多機能である

 

  • 肝細胞50万個集まって肝小葉という1つのまとまりを作り、さらに肝小葉が50万個集まって1つの肝臓を構成している

 

 

  • 肝臓は血液凝固に関与するタンパク質など、体にとって重要なタンパク質の合成や分解をおこなっている

 

  • 肝臓は有害な物質を無害な物質に分解するという解毒作用をもっている

 

  • 肝臓は脂肪を分解するのに必須である胆汁を生成している

 

  • 赤血球脾臓と肝臓分解・破壊され、それによって最終的に生じる胆汁色素という色素によって大便が茶色になる

 

  • 肝臓は損傷しても再生力が高く、さらに病気になってもすぐには症状が出ないため、沈黙の臓器とも呼ばれている

 

食虫植物始めました! ハエトリソウ、モウセンゴケの紹介

私は小さい頃から食虫植物や多肉植物の飼育に憧れていて、つい先日、念願の食虫植物の育成を開始した。

今回は初回ということで、現在飼育中のハエトリソウモウセンゴケについて生態などを紹介しながら観察日記を綴ろうと思う。

 

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目次 

 

食虫植物の魅力

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食虫植物の魅力はなんといっても、植物が動物を食べてしまうことだ。

植物は本来は食物連鎖の中で生産者に位置し、消費者である動物たちの重要な餌となる。

 

しかし、食虫植物はその常識を覆し、自身の葉にひっかかったりした虫などを捕食する。

小さなハエからナメクジに至るまで、消化できるものであれば食べてしまう。

 

私はハエトリソウやモウセンゴケウツボカズラといった食虫植物たちの、こうした一転攻勢的な生き方に非常に魅力を感じるのである。

 

ハエトリソウ

正式名称はハエトリグサ

後述に紹介するモウセンゴケとともに、5月25日に飼育を開始。

ホームセンターで売っていた株を購入、ミズゴケを単用し、施肥もなし。

 

撮影日:5月25日

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ハエトリソウはアメリカが原産で、野生では湿地帯に生息している。

また野生では絶滅危惧種となっているが、栽培が比較的容易なので園芸店などでもよく見られる。

 

前述の通り湿地帯に生息する植物なので、飼育の際は土が乾燥してしまわないように気を付ける。

また腰水といって、水を張った皿の上にハエトリソウを植えた鉢を置き、根やその下の部分を常に湿らせておくといった飼育法が推奨される。

なお、腰水は普通の植物でやると根が腐ってしまう場合があるので注意。

 

食虫植物の多くにも言えることだが、実はハエトリソウは別に虫を与えなくても十分生育していける

重要なのは日の当たりの良いところに置きつつも、水分に常に気を付けて飼育することであり、これができれば容易に育てることができる。

 

さて、この2枚貝のような、ハエトリソウの口のようなものは花ではなくである。

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↓の写真でお分かりいただけるだろうか。

ハエトリソウの葉の内側は鮮やかな赤色をしていて、しかも内側には数カ所にがある。

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この棘はセンサーであり、この数カ所にある棘に同時に触れるか、1つの棘に数回触れると1秒もしないスピードで葉が閉じる。

しかし、この葉の開閉には相当なエネルギーを消費するらしく、1つの葉は数回開閉すると弱って枯れてしまう

 

むやみにいじって葉を閉じさせたりすると死んでしまうよ!

 

さらにハエトリソウは臭いを出すとか、特殊なフェロモンを出すとか、意図的に虫などをおびき寄せて捕食しているのではなく、偶然止まったものを捕食しているに過ぎない。

つまり、名前に反して虫の防除には役に立たない

 

葉にも大きなものや可愛らしい小さなものまで様々ある。

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モウセンゴケ

本当はハエトリソウだけを飼育するつもりだったけれど、一緒に売っていたのでつい購入してしまい、飼育開始。

飼育法はハエトリソウと全く同じ方法で腰水をし、ミズゴケ単用で施肥もなし。

 

ハエトリソウとともにホームセンターでは屋外で売られており、既に小さなハエを結構捕まえていた。

ハエトリソウはほとんど捕まえていなかったので、もしかしたらこちらのほうが捕獲率は高いのかもしれない。

 

何匹か生きたハエがもがいていたが、気にせず購入、植え替えをして現在に至る。 

 

撮影日:5月25日

ちなみに買ってきたのはアフリカナガバノモウセンゴケというモウセンゴケの種類。

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葉を近くで注意深く観察してみると、無数の毛のようなものの先端に水滴のようなものがついている。

実はこれは水ではなく粘液であり、モウセンゴケの最大の特徴である。

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モウセンゴケは、この粘液を使って虫を捕まえる。

虫は粘液にひっかかって動けなくなり、やがて消化液が分泌されて消化される。

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調べたところ、この粘液はモウセンゴケの調子が良いとかなり綺麗な赤色になるらしい。

我が家のは購入時から透明なままなので、これから変わっていくのだろうか?

 

特に、アフリカナガバノモウセンゴケの場合は時期や生え替わりのために一時的に粘液の出が悪くなることがあるのだそうだ。

様子見をしながらしっかりと育て、粘液の鮮やかな色彩を見てみたいものだ。

 

心臓と血管の関わりは? 生物によって心臓の構造や血管系は違う?

血液は酸素や養分などを全身の細胞など各所に運び、再び心臓に戻ることで循環している。

その血液を全身に送るのが心臓というポンプの役割をした臓器である。

今回は血液の体内循環と、その要となっている心臓について雑学を交えながら学んでいこう。

 

 

 

血管系とその種類

血管系は開放血管系閉鎖血管系の大きく2つに分けられる。

我々人間の血管系は閉鎖血管系で、開放血管系を持つのは昆虫類やエビなどの甲殻類など。

 

ちなみにミミズなんかも閉鎖血管系を持つよ! 外見は全く別の生き物だけどね。

 

開放血管系

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主にエビや昆虫などの無脊椎動物が持つ血管系。

毛細血管を持たずそのため動脈と静脈が繋がっていない

 

血液は動脈から出てから拡散して全身の組織の間に染み出し、その染み出した一部が静脈に入って心臓に戻るという循環が起こる。

「開放」という名がつくのもこのためである。

 

閉鎖血管系の生物では、血液は基本的に血管の中を通り、細胞や組織液の間は組織液という体液で満たされている。

一方で血液が染み出す開放血管系を持つ生物では、血液と組織液の区別がつかないし、動脈血と静脈血も混ざっていたりする

 

血液がリンパ液や組織液の役割を兼ねていたりするよ!

 

※血液や組織液、リンパ液については以下の記事で簡単に解説してます。

inarikue.hatenablog.com

 

閉鎖血管系

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動脈と静脈が毛細血管で繋がり(上図ではこれらを区別して描いてません)、血液は血管の中に基本的に閉じ込められた状態で体内を循環する。

人間を含む脊椎動物やミミズ、タコなどの頭足類がこのような血管系を持つ。

 

血液が血管の中にあるため、血液・組織液・リンパ液は区別しやすい

 

血液の循環

我々人間の血液循環(閉鎖血管系によるもの)を見てみよう。

心臓→肺→心臓の血液の循環を肺循環といい、心臓→全身→心臓の血液の循環を体循環という。

 

肺循環

まず肺循環では肺動脈と肺静脈により心臓と肺が繋がっている。

その詳しいルートは心臓→肺動脈→肺→肺静脈→心臓

※分かりやすいようにかなり簡略化して描いています。

 

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ここでちょっとややこしい話があって、肺動脈の中を流れる血液は静脈血肺静脈の中を流れるのは動脈血となっている。

肺循環では、血管名とその中を流れる血液の名前が一致しないのだ。

 

どういうことかというと、動脈とは血液を送り出す血管であり、静脈とは血液が戻ってくる血管である。

そして動脈血とは酸素に富んだ血液であり、静脈血は酸素が乏しい血液である。

 

肺動脈は心臓から肺へ血液を送り出す血管なので動脈である。

しかし、肺動脈を流れる血液は肺でガス交換が行われる前の酸素が乏しい血液なので静脈血なのだ。

そんな訳で、肺循環では血管名とその中を流れる血液名にズレがある。

 

体循環

では次に体循環を見てみよう。

体循環では、血液を送り出す大動脈と戻ってくる大静脈を無数の毛細血管が繋いでいる

ルートは心臓→大動脈動脈→各内臓などに分布する毛細血管→静脈大静脈→心臓

 

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体循環では大動脈の中を動脈血が流れ、大静脈静脈血が流れる。

 

酸素を豊富に含んだ動脈血は細胞や内臓など、全身の様々な場所に送り届けられ、その各所で酸素→二酸化炭素ガス交換が行われる。

ガス交換が行われると血液は酸素が乏しくなった静脈血となり、心臓に戻っていく。

 

ちなみに肺循環と違って血管名と血液名は一致しているので心配ご無用。 

あと、肺循環だろうが体循環だろうが、心臓に繋がっている動脈と静脈は血管が筋肉でおおわれている

 

特に動脈血液が勢いよく送り出される心臓から直接のびている血管であるため、血管を補強するかのように厚い筋肉が覆っている。

 

一方で毛細血管には小さな穴が空いており、この穴から血液の中の血しょう成分が染み出し、組織液リンパ液になる。

 

心臓

心臓は血液を全身に送り出すためのポンプの役割をしている。

以下の絵はヒトの心臓を超簡単に書いたもので、番号と矢印は血液が流れる順序を示している。

 

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心臓は4つの部屋に分かれており、上側を心房、下側を心室という。

心室からは大動脈が伸びており、全身に血液を送るために勢いが必要なのでこの部分は特に心臓の筋肉が分厚くなっている

 

このような心臓の構造を2心房2心室と呼び、哺乳類や鳥類がこのような心臓の構造をしている。

心臓に各部屋があることで、酸素が多く含まれる動脈血と酸素が少ない静脈血が混ざらないようになっているのだ。

 

鳥類や哺乳類は外気温に左右されず体温を常に一定に保つことができる恒温動物であり、しかも呼吸手段は肺のみである。

体温維持には結構なエネルギーが必要で、酸素を得るための呼吸手段も1つしかないことから、代謝にあまり余裕がない。

 

そのため効率的に酸素を送り出すことができるよう、心臓はしっかりと部屋分けされているのである。

 

ちなみに、右心房や左心房などの"右"や"左"は、心臓を持つ本体から見た視点でつけられているので間違ってはいない。

 

あくまで心臓をもつ本体側から見ると右心房はちゃんと右になってるし、左心房は左になってるよ!

 

さまざまな生物の心臓

例えば魚類はこんな感じの単純な心臓のつくりをしている。

構造は1心房1心室

 

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魚類は鰓(えら)で血液に酸素を取り込み、全身を回ったあと、静脈血となった血液は心臓に戻りまた出ていく。

 

人間と違って魚類の心臓は常に静脈血が通るよ!

 

では今度は両生類と爬虫類の心臓を見てみよう。

 

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両生類と爬虫類の心臓では、2心房1心室の構造になっている。

※図にはありませんが、爬虫類では心室の中央に、仕切りのようなものが出来はじめています

 

この構造の心臓は動脈血と静脈血が心室で混ざってしまい、酸素と二酸化炭素の交換効率があまりよろしくない。

 

ただ、その代わり両生類や爬虫類の多くは肺呼吸の他に皮膚呼吸も併用しており、酸素を取り込む手段を複数持っていたりする

※爬虫類の場合、全てがこのような心臓をしているわけではなく、例えばワニは完全な2心房2心室の構造をしています

 

拍動

心臓がドクンと収縮することを拍動という。

心臓は心房→心室の順で収縮し、拍動する。

 

拍動は動脈にも伝わるので、動脈も拍動する

この動脈の拍動を特に脈拍と呼ぶ。

 

また心臓の右心房には神経が集まって束になった部分があり、この神経から興奮などの刺激が伝わり、拍動を早めたりしている。

 

ちなみに最も強く拍動する部分は、全身に血液を送り出す大動脈が始まる左心室である。

 

心臓は私たちの胸の間、つまり中心にあるが、胸に手を当てると何だか心臓は中心よりも左か、ちょっと左下にあるように感じられる

その理由は、心臓の拍動が最も強い部分が中心部ではなく心臓の左下の左心室であるため、まるで左側に心臓があるかのように感じられるのだ。

 

心拍数の不思議

一定時間当たりの拍動の回数心拍数という。

人間の場合、1分間の拍動回数(心拍数)は60回程度で、一生のうちに約20億回拍動する。

 

実は生物の一生の心拍数には法則がある。

なんと、同じ哺乳類であれば人間だろうとネズミだろうと一生のうちに心臓が拍動する回数は同じなのである。

 

生物の寿命が短いほど心臓は早く拍動する。

人間よりずっと寿命が短いネズミは、1分あたりの心拍数が600回で、これは人間の約10倍の回数である。

 

拍動の速度に違いがあっても、一生のうちの拍動の回数は人間もネズミも同じくらいになるよ! 不思議だね。

 

まとめ

  • 血管系には開放血管系閉鎖血管系があり、人間は閉鎖血管系をもつ

 

  • 開放血管系では血液が途中で血管を通らず全身に拡散し、閉鎖血管系では血液は血管の中を流れ続ける

 

  • 心臓→肺→心臓の血液の循環を肺循環といい、心臓→全身→心臓の血液の循環を体循環という

 

  • 肺循環では血管名とその中を流れる血液名が一致しない

 

  • 心臓の構造は生物によって異なり哺乳類や鳥類は心臓が4つの部屋に分かれている

 

  • 心臓がドクンと収縮することを拍動といい、拍動は生物の寿命が短くなるほど早くなる傾向にある

 

  • 同じ哺乳類であれば人間だろうとネズミだろうと一生のうちに心臓が拍動する回数はほぼ同じである

 

 

 

 

免疫には他にどのようなものがある? 拒絶反応、アレルギー、エイズなど!

生物の体には免疫機能が備わり、体を守っているが、この免疫が時として体を好ましくない状態に陥れてしまうことがある。

今回は自然免疫や獲得免疫の以外の、様々な免疫反応を見ていこう。

 

 

※今回の記事は免疫に関する基礎知識を持っていることを前提に解説しているので、以下の記事もぜひ参考にしてください

inarikue.hatenablog.com

 

目次

 

移植組織と免疫

皮膚や臓器など、他人の組織を自分の体に移植すると、それを体が異物と認識して攻撃する

これを拒絶反応という。

 

移植組織は抗原と認識され、しかも移植された組織はそれ自体が巨大であるため、細胞性免疫がはたらく。

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するとキラーT細胞がやってきて移植組織の下の皮膚ごと食べ、組織は定着せずに脱落してしまう。

 

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これが臓器などの場合も、機能できなくなるくらい攻撃を受ける。

 

二次応答

二次応答による免疫反応の強化は、実は拒絶反応に対しても見られる

これはマウスを使った実験で確認されている。

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あるマウスXにマウスYの皮膚を移植したところ、10日で脱落した。

その後、また同様にマウスYの皮膚を移植すると、今度は3日で脱落したのである。

 

 ※抗体や二次応答についてはコチラ

inarikue.hatenablog.com

 

アレルギー

免疫反応が過敏に起こることによって生じ、体に様々な異常が見られる反応

アレルギーを引き起こす抗原をアレルゲンという。

 

アレルギーには症状が出るまでの時間によって、即時型遅延型の2種類がある。

 

即時型は文字通り、アレルゲンが体内に入ったりすると即座に反応が起こる

花粉症食物アレルギーが例である。

 

一方で遅延型は、反応が出るまでに1〜2日かかり、1ヶ月後もあとになって反応が出るものもある

金属アレルギーが例で、汗などにアレルゲンとなる成分が溶け込んで反応する。

 

アナフィラキシーショック

即時型のアレルギーの中でも、特に激しい反応をアナフィラキシーショックと呼ぶ。

 

即時型のアレルギーを引き起こすアレルゲンに接すると、個人差はあれど重篤なショック症状を起こすことがある。

 

 例えば、ダニにアレルギーを持つ人がハウスダストを吸ってしまったとき、その人の体はアレルゲンを吸い込まないために、なんと呼吸を止めてしまう

 

また、ハチ毒やヘビ毒を注入された人の体が、毒が全身に回らないよう、血液循環の要である心臓を止めてしまう

 

このように、アレルゲンに対して体が極端な反応を起こしてしまうのがアナフィラキシーショックなのである。

 

自己免疫病

自己免疫病とは、自己であるはずのものに対して、何らかの理由で免疫細胞が攻撃を始める病気である。

自己免疫病は自己形成の例外である。

 

自己の成分に対して抗体が結合したり、キラーT細胞が攻撃をしてしまうことで引き起こされる。

例えば関節リュウマチバセドウ病がある。

 

関節リウマチ

関節に痛みや炎症が生じ、ひどくなると骨が破壊されたり、関節が変形してしまう病気

女性に多い病気でもある。

 

我々の関節は膜につつまれていて、この膜を免疫細胞が異物とみなして攻撃することによって炎症などが生じる。 

 

同じくリウマチという名前がつく「リウマチ熱」という病気もあるけれど、関節リウマチとは全然違う病気だから注意してね!

バセドウ病

別名で甲状腺機能亢進症とも呼ばれる。

抗体が甲状腺にくっついてしまうことで、甲状腺が刺激され、脳から指令が来たと勘違いし、ホルモンを大量に分泌して代謝を上げまくる病気である。

 

原因は免疫細胞によって作られる抗体

本来は抗原を標的にする抗体・・・ではなく、自己を標的にしてしまう抗体が作られることによって起こる。

 

甲状腺とは脳から指令を受けてホルモンを分泌し、代謝を維持する役割を持つ場所だ。

過剰なホルモンが分泌され、代謝が上がりすぎてしまうと、やたら汗っかきになったり、しっかり食べているのに体重が減るなどの異常が出る。

 

眼球が飛び出すなどの症状が出る場合もあるよ!

 

AIDS

ほとんどの人が一度は聞いたことがあるだろう病気で、通称エイズ

 

後天性免疫不全症候群とも呼ばれ、詳細は分からないが感覚的に何となく恐ろしい病気だと思っている人も多いだろう。

原因はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)

 

HIVは感染者の血液や精液、母乳などに多く含まれ、これらが体内に入る(性行為をする、注射器を使いまわすなど)ことで感染する。

 

エイズ感染のプロセス

エイズはこれまで紹介してきたアレルギーや自己免疫のような、免疫が暴走したものではなく、免疫そのものが失われてしまう病気である。

 

HIVは体内に侵入すると、獲得免疫を司るヘルパーT細胞に感染し、ヘルパーT細胞が死んでしまう。

これは、獲得免疫が機能不全になることを意味する。

 

ヘルパーTは獲得免疫において、樹上細胞から直接抗原提示を受ける唯一の免疫細胞だ。

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そして実はヘルパーT細胞は一度死んでしまうと、再生産が二度とおこなわれない

理由は、ヘルパーT細胞は胸腺という場所で作られるのだが、その胸腺が5〜6歳頃に消滅してしまうからである。

 

つまり、HIVに感染すると重要な免疫の1つである獲得免疫が全てストップしてしまうのだ。

 

ここで注意したいのは、不全になるのはあくまで獲得免疫であり、自然免疫は機能し続けるので抗原に対して全く無力になるというわけではないということだ。

 

免疫が一切なくなるわけじゃないよ!

 

ただし、自然免疫は加齢とともに低下する

エイズが恐ろしい病であることに変わりはない。

 

まとめ

  •  皮膚や臓器などの移植組織に対してはたらく免疫を特に拒絶反応という

 

  • 二次応答による免疫の強化は拒絶反応においても見られる

 

  • 免疫反応が過敏に起こることによって生じ、体に様々な異常が見られる反応アレルギーという

 

 

  • 自己免疫病とは、免疫細胞が何らかの理由で本来は抗原でない自己の細胞などを攻撃してしまう疾患である

 

 

  • AIDS獲得免疫が機能不全になってしまう病気で、HIVというウイルスが原因で起こる

 

抗体とは何か? 二次応答とは何か?

免疫には段階に応じて種類があり、その中でも体液性免疫がはたらくと抗体が産生されて抗原の排除がおこなわれる。

また体液性免疫の段階からは、免疫が発動すると免疫細胞が抗体の産生情報を記憶するようになる。

今回は抗体について解説し、二次応答にも触れたいと思う。

 

※免疫についての基礎的な知識は以下の記事で解説しているので参考にどうぞ 

inarikue.hatenablog.com

 

目次

 

抗体とは何か

抗体は、体液性免疫という免疫段階で生み出される物質で、免疫グロブリンというタンパク質でできている。

 

↓抗体はこんな感じ

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抗体を生み出すのは、B細胞という免疫細胞が分化した抗体産生細胞という細胞である。

 

抗体は特定の抗原に対してのみはたらき、特定の抗原と結合して複合体を作る役割を担う。

この複合体を目印に、他の免疫細胞が抗原をピンポイントで攻撃して排除をおこなう。

 

1種類の抗体は1種類の抗原にしかはたらかないよ!

 

抗体の構造

抗体は重いH鎖と軽いL鎖というパーツで構成され、可変部(結合部)とそれ以外の定常部がある。

下図は、赤い丸で囲った部分がH鎖で、青で囲った部分がL鎖である。

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H鎖とL鎖が結合したものを1セットとし、さらにそれが2セット結合したものが1つの抗体となっている。

 

また抗体は可変部という部分で抗原に結合する。

可変部は抗原の情報に基づいて作られるため、抗体によって遺伝子構造が異なるが、定常部は抗原によって形や構造が変わることはない。

 

抗体と遺伝子

抗体の可変部を詳しく見ると、合計で5つの領域に分かれ、領域ごとに異なる遺伝子が入っている

 

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可変部の各領域に割り当てられる遺伝子の候補は複数あり、1種類が選ばれる

例えば、H鎖のV領域(図では赤の部分)には150種類の遺伝子の中から1つが選別させて割り当てられる。

 

このようにして各領域に1つずつ遺伝子が割り当てられ、その組合わせで抗体が作られる

これを専門用語で遺伝子再編成といい、おかげで侵入した様々な抗原に合わせて抗体を作ることができるのである。

 

繰り返すが、B細胞は分化して抗体産生細胞になり、その抗体産生細胞はたった1種類の抗体のみを作る。

B細胞が分化するということは、言い換えれば抗体に割り当てられる遺伝子が決定することを意味するのだ。

 

免疫記憶と二次応答

二次応答とは、同じ抗原の2度目の侵入に対して起こる免疫反応である。

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1回目に抗原が侵入したときよりも、2回目に抗原が侵入したときのほうが、短時間でしかも大量に抗体が生産されているのが分かるだろう。

 

抗体産生細胞は目的の抗原が体内から排除されて役目を終えると、一部は破壊されずに、免疫記憶細胞という細胞になる

免疫記憶細胞は、その抗原への抗体産生の記憶を保持したまま長期間保存される。

 

そのため、免疫記憶細胞が保存されている期間中にまた同じ抗原が体内に侵入すると、即座にその抗原に対する抗体産生能力を持った免疫記憶細胞が対応し、前回侵入されたときよりも強い免疫能力を発揮する。

 

風邪などを一度引くと、しばらくは引きにくいのはこのためである。

 

B細胞が分化する時間が省略されるから、短時間で抗体が作られるよ!

 

まとめ

  • 抗体は体液性免疫の発動の際に生み出される物質で、免疫グロブリンというタンパク質でできている

 

  • 抗体を生み出すのは抗体産生細胞という細胞で、この細胞はB細胞が分化したものである

 

  • 1つの抗体産生細胞につき1種類の抗体が生み出され、その抗体は目的の1種類の抗原に対してのみはたらく

 

  • 抗体は可変部で抗原と結合し、可変部は様々な遺伝子の組み合わせで作られるため、様々な抗原に対応することができる

 

  • 同じ抗原の2度目の侵入に対してはたらく免疫を二次応答という

 

  • 二次応答では免疫記憶細胞が即座に対応でき、1度目の抗原の侵入のときよりも強い免疫反応が起こる

 

 

 

免疫とは何か? どのようなものがあるか?

私たち人間を含め、生物の体には常に外からさまざまな異物が進入し、それを体の免疫システムが排除したり、発病から守っている。

今回は、私たちの体を守る免疫というシステムについて、基礎的なことから簡単に学んでいこう。

 

目次

 

"自己"と"非自己"

免疫とは体内に侵入した異物に対する抵抗力である。

 

生物の体は、体内に侵入した「自分でないもの」を排除しようとする。

この「自分でないもの」を非自己といい、逆に「自分であるもの」、「自分のもの」を自己という。

さらに非自己のことを専門用語で抗原と呼ぶ。

 

つまり、免疫は抗原(=非自己)に対して働く防御システムなのである。

 

"自己"はいつ決まるか?

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自己は生まれる前から決まっているわけでもなく、生まれた瞬間に決まるものでもない

決定されるのは生後半年~1年くらいの間であるため、幼児期に突入するころにはもうすでに決まってしまっていることになる。

 

つまり上記の時期の時期までに体の中にないものが非自己になり、自己の決定以降は異物と見なされ、排除の対象になる。

 

また、異物は必ずしも病原菌のような生物である必要はなく、花粉なども異物とされる。

 

抗原への対処と免疫の種類

体内に抗原が進入すると免疫が発動し、血球の一種である白血球たちがその役割を担う。

 

ここからは、過去に体内に進入したことのない新たな抗原が進入したとき、体内ではどのような免疫がはたらくのかを見ていこう。

 

まず免疫には自然免疫と獲得免疫がある。

 

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自然免疫

別名で先天性免疫とも呼ばれ、体内に異物が進入するとまず最初に発動するのがこの免疫である。

 

この免疫で抗原に対応する白血球は主に好中球、樹状細胞、マクロファージである。

※白血球には色々な種類がいます。

 

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例えば、好中球は抗原を見つけるとそれを自らの体内に取り込み、中でバラバラにして消化してしまう。

 

そして限界まで抗原を食べ続け、食べきれなくなると自殺する。

 

このように体内に取り込むことを食作用といい、バラバラにして消化することを細胞内消化という。

 

自然免疫は主に食作用で抗原を排除する免疫なんだね!

 

獲得免疫

別名で後天性免疫とも呼ばれ、自然免疫では排除できなかった特定の抗原に対してはたらく免疫であり、さらに獲得免疫は体液性免疫細胞性免疫の2つに分かれる。

 

そして獲得免疫が発動するときは、まず体液性免疫が発動する。

今回は、体液性免疫について解説する。

 

体液性免疫とは

体液性免疫とは、抗原に対し特異的にはたらく抗体を生産しておこなう免疫で、いくつかの細胞が連携して特定の抗原をピンポイントで攻撃する。

 

体液性免疫で要となるのは抗体と呼ばれる物質で、これが血液中(体液中)に分泌されて免疫がおこなわれることから、体液性免疫と呼ばれる。

 

体液性免疫の流れ

抗原が体内に侵入すると、まずは自然免疫において好中球などが対処する。

それでも対処できない場合は樹状細胞の出番だ。

※実は樹状細胞は自然免疫、獲得免疫の両方に関与しています。

 

樹状細胞はまず、抗原を見つけると食作用で取り込み、細胞内消化をおこなう。

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ここまでは自然免疫と同じだね!

 

次に、樹状細胞は取り込んでバラバラにした抗原をチラ見せし、「こんなのが入り込んだぞ!」と周囲に抗原の情報を提示する。

これを抗原提示という。

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提示された抗原の情報はヘルパーT細胞という細胞が受け取り、これをもとにインターロイキンという物質を出してB細胞の分化と増殖を促す。

※分化とは、役割がまだ決まっていない細胞が役割を持つようになることです

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分化したB細胞は、その抗原に対する抗体を生み出す抗体産生細胞となり、どんどん抗体を産生するようになる。

抗体産生細胞は目的の抗原に対する抗体のみを産生するため、1個の抗体産生細胞につき1種類の抗体しか作れない

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 抗体は目的の抗原に結合する性質があり、実際に結合するとそれを目印にマクロファージがその抗原をピンポイントで攻撃し、排除していく。

このように抗体が抗原に結合することを抗原抗体反応という。

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こうして、抗原が体内からどんどん消えていくと抗体産生細胞の増殖も終わっていく。

増殖して生き残った抗体産生細胞は役割を終えると一部が長期間保存され、その期間は30年とも言われている。

 

細胞性免疫

抗体を産生しておこなう体液性免疫をもってしても抗原を排除できなかった場合、最後の砦でもある細胞性免疫が発動する。

細胞性免疫は抗体産生をおこなわず、食作用によって抗原を排除する免疫である。

 

抗体では排除しきれない抗原たち

では、細胞性免疫が発動するほどの抗原とは何だろう?

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以下で例を挙げてみる。

 

  • ウイルス
  • がん細胞
  • 結核
  • 移植組織

 

ウイルスは体内に入るとまず細胞に侵入して増殖をおこなう。

ウイルスが細胞に侵入してしまうと、抗体はそれ以上追いかけることができないため、食作用で感染した細胞ごと食べてしまうほうが早いのである。

だからウイルスに対しては細胞性免疫で対処するのだ。

 

一方がん細胞結核分裂速度が早すぎて、抗体を産生していては追いつかないので、これらもまた見つけた瞬間にすぐに食べてしまったほうが良い。

 

最後に移植組織だが、移植組織とは文字通り他から移植した皮膚や臓器などを指す。

移植組織はそれ自体が巨大であるため、体液性免疫の抗体産生とセットで細胞性免疫が発動する

 

※移植組織は拒絶反応などとも関わってくるので、今後別記事で詳しく解説しようと思います。

 

細胞性免疫の仕組み

細胞性免疫においても、まずは抗原(今回はウイルスとする)が樹状細胞などによって食作用を受け、ヘルパーT細胞に抗原提示される。

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ここまでは体液性免疫と同じだよ!

 

細胞性免疫が体液性免疫と違うのはここからである。

抗原提示を受けたヘルパーT細胞は今度はB細胞ではなく、キラーT細胞という細胞に接触し、情報を伝える。

するとキラーT細胞はそのウイルスを認識する能力を得るように分化し、さらに増殖もしていく。

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特定のウイルスを認識できるようになったキラーT細胞は、そのウイルスに侵された細胞を探すのだが、ここでちょっと細胞の話をしよう。

 

細胞はその機能の1つとして、自身が中で作ったタンパク質などを周囲に出すというものがある。

ウイルスに侵入された細胞は乗っ取られてウイルスのタンパク質を作り出し、それを周囲に分泌したりしているのでキラーT細胞はそれを認識して侵された細胞ごと食作用をおこなう。

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※キラーT細胞は便宜上球体で書いていますが、アメーバ状で食作用をおこなうことができます。

 

そして役目を終えるとキラーT細胞は徐々に数を減らしていくが、B細胞と同じように一部が残り、長期間保存される

 

免疫記憶

ここで重要なのは、生き残った抗体産生細胞やキラーT細胞は抗体を生産する能力や、抗原を認識する能力を記憶したまま保存されるという点である。

 

このような抗体産生細胞やキラーT細胞は免疫記憶細胞と呼ばれ、また同じ抗原が体内に入ってきたとき、その抗原に対する抗体の記憶を持つため、即座に対応できる心強い細胞となる。

 

これがいわゆる免疫記憶であり、一度かかった病気にはかかりにくい・かかっても重体になりにくいのはこのためである。

免疫記憶は獲得免疫でのみ見られ、自然免疫の段階では記憶がされない

 

記憶」と言っても、脳じゃなくて抗体産生細胞に記憶されるんだね!

 

 

まとめ

  • 免疫とは体内に侵入した異物に対する抵抗力である

 

  • 免疫の対象となる、対外から入ってきた異物を抗原(非自己)という

 

  • 免疫は血球の一種である白血球が担い、免疫には自然免疫獲得免疫がある

 

  • 自然免疫は抗原が体内に入ってきたときに最初にはたらく免疫であり、食作用細胞内消化で免疫細胞が排除をおこなう

 

  • 獲得免疫は自然免疫で排除できなかった特定の抗原に対してはたらき体液性免疫細胞性免疫の2つがある

 

  • 体液性免疫は抗体を生み出しながらいくつかの細胞が連携して免疫をおこない、異物を排除する免疫である

 

  • 抗体は抗原に結合することで目印になり、抗体が結合した抗原は集中的に攻撃される

 

  • 抗体を産生しても対処できない抗原に対しては、免疫の最終手段でもある細胞性免疫がはたらく

 

  • 細胞性免疫では抗体は生産されず、キラーT細胞が関与し、ウイルスやがん細胞などを食作用で感染した細胞ごと食べてしまう

 

  • 抗体産生細胞やキラーT細胞は抗原が排除されたあとも一部が長期間保存され、これが免疫記憶である

 

  • 免疫記憶がされるのは獲得免疫の段階のみである

 

 

血球はどのような役割をしているか? 赤血球、白血球、血小板とは?

私たちの体内を流れる血液は体液の一種であるが、100%の液体ではなく、約半分が固体成分である。

そしてその固体成分が血球である。

今回は血球について詳しく見ていこう。

 

 

↓一応コチラの記事も参考にどうぞ

inarikue.hatenablog.com

 

 

目次

 

血球

血液の成分は液体である血しょうが55%と、固体である血球が45%の割合で混ざったものである。

血球は骨の中の骨髄という場所で作られ、赤血球白血球血小板の3種類がある。

 

赤血球 

ヘモグロビンというタンパク質を含み、中央がくぼんだ、やや扁平な形をした細胞

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特徴

  • ふつう細胞にあるはずの核がない
  • 大きさは8μm
  • 含有量は400万個/m㎥

 

400万個/m㎥とは、1mm×1mm×1mmの小さな箱に400万個入っているイメージだよ!

 

赤血球は酸素や二酸化炭素を運搬する役割を持つが、それには赤血球に含まれるヘモグロビンが多大な貢献をしている。

ヘモグロビンはタンパク質でできており、酸素と結合しようとする性質を持つ。

 

例えば、血しょう(ヘモグロビンなし)に溶ける酸素は1リットルあたり3ミリリットル。

それに対し、ヘモグロビンを含む赤血球には1リットルあたり200ミリリットルの酸素が溶けこむことができるのであある。

 

すごい量!ヘモグロビンを含むからこそ、赤血球は酸素の運搬を効率よく行えるんだね!

 

ヘモグロビンと酸素

ヘモグロビンは肺で酸素を受け取ると、酸素ヘモグロビンになり、赤血球に含まれ全身を回る。

そして行く先々の組織(細胞など)に酸素を供給する。

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組織では呼吸などにより酸素が絶えず消費され、二酸化炭素が発生するため、赤血球が行く先々の組織は二酸化炭素分圧(量)が高くなっている

 

そして二酸化炭素は酸素とヘモグロビンの結合を阻害するはたらきがある

これによって二酸化炭素分圧が高い組織に赤血球が辿り着くと、ヘモグロビンと酸素が切り離され、最終的に組織に酸素が供給されることになる。

 

このようにして、赤血球は全身のあらゆる組織に酸素を運ぶのである。

 

白血球

白血球は体内に入ってきた異物を排除する免疫細胞である。

 

特徴

  • がある
  • 運動する(自ら動く)
  • 形は不定で、大きさは16μm
  • 含有量は4,000個/m㎥

 

白血球は異物を排除する免疫機能としてはたらき、血球の中で最も大きさが大きいが、数は最も少ない

そして白血球には様々な種類がある。

 

好中球

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樹状細胞f:id:inarikue:20190417222511p:plain

 

マクロファージ

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リンパ球(T細胞)

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リンパ球(B細胞)

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これらは全て白血球の一種である。

ちなみにリンパ球であるB細胞とT細胞は作られたあとに成熟が必要で、B細胞は脾臓、T細胞は胸腺で成熟する。

 

血小板

血小板は巨核球という細胞がくずれたものである。

 

特徴

  • 核なし
  • 大きさ、形がバラバラ
  • 2~4μmの大きさ
  • 含有量は40万個/m㎥

 

先述の通り、血小板は元は細胞だったものがくずれ、断片となったものなので核はないし、大きさも形もバラバラである。

そんな血小板の役割は血液を凝固させ、血餅(けっぺい)を作ること

 

ケガをして血を出すと、だんだん血が固まってきて、数日後にはすっかり血の固まりができるよね。血餅とはいわゆる"かさぶた"のことだよ!

 

血小板と血液凝固

血小板の大きな役割は、血餅を作るためのフィブリンという物質の合成に関与していることである。

 

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先ほど述べた血餅は赤血球や血小板といった血球とフィブリンという繊維状の物質が絡み合ってできている

そしてこのフィブリンという物質は血液中には存在しない

 

もし存在していたら血液の中で勝手に血が固まって大変なことになるよ!

 

ではフィブリンはどこから来るのかというと、フィブリンは血液中でバラバラの形をしたフィブリノーゲンという別の物質として存在している。

必要に応じてフィブリノーゲンがフィブリンになるのだが、フィブリノーゲンをフィブリンに変化させるためには、"トロンビン"という酵素が必要である。

 

そしてこのトロンビンも血液中に存在しない

もし存在したらフィブリノーゲンを変化させて結局フィブリンを作ってしまうからである。

そのためトロンビンは普段は"プロトロンビン"という物質として、不活性の状態で待機している。

 

では、プロトロンビンをトロンビンに活性化させるものは何か。

それは血小板因子カルシウムイオン凝固因子(組織液に含まれる)の3つである。

このうち血小板因子とカルシウムイオンは血液中に存在するが、凝固因子だけが組織液中に存在する。

 

 したがって勝手にプロトロンビンがトロンビンに活性化されることはないし、結果的にフィブリンが作られることもない

逆に言えば、血小板因子、カルシウムイオン、凝固因子のいずれか1つでも欠けるとフィブリンが作れないのである。

 

※この性質を利用し、血液を採取して研究する場合はカルシウムイオンをクエン酸ナトリウムで除去するなどして血液が固まってしまわないようにしている。

また、血液が特に多く集まる臓器である肝臓では、ヘパリンという、トロンビンを抑制する物質が絶えず生産されて血液が簡単に固まらないような仕組みになっている。

 

まとめ

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  • 血球は骨髄で作られ、赤血球白血球血小板の3種類がある

 

  • 赤血球はヘモグロビンを含み、全身に酸素を輸送している

 

  • 白血球にはいくつかの種類があり、成熟が必要なものもある

 

  • 血小板は元は1つの細胞が崩れたもので、フィブリンを作るための血小板因子として関与している

 

 

体液は体の中でどのような役割をしているか?

私たち人間を含め、生物の体内の環境(体温、血圧、体液濃度など)は常に一定を保たれている。

そして、それが乱れたとしても、生物は自己の体内環境を一定に保とうとする。

今回はそういった体内環境の維持に重要な役割を果たす体液について簡単に見ていこう。

 

目次

 

 

恒常性と代謝

生物が生物であるための条件に、恒常性の維持と代謝がある。

恒常性はホメオスタシスとも言い、恒常性を維持する=外の環境の変化に対して体内環境を一定に保つという意味である。

 

ではなぜ生物は恒常性を維持しなければならないのかというと、それは代謝のためである。

代謝とは、生物が生きていくために体内で起こすあらゆる化学反応のことだ。

外の環境の変化によって、体内の環境がいちいち変化してしまうと、代謝が安定的に行えないからである。

 

↓以下の記事も参考にどうぞ

inarikue.hatenablog.com

 

inarikue.hatenablog.com

 

 体液

生物の恒常性の維持に大きく貢献しているのは体液だ。

体の中心で作られた熱や摂取した栄養分など、生きるために必要な様々な物が体液によって全身のいたるところに運ばれる。

 

つまり、体液が体中を循環することによって体内の環境が一定に保たれるし、恒常性の維持において体液は非常に重要である。

 

そして体液は、それが存在する場所によっていくつかの種類がある

体液の種類

生物の体の中を流れる体液は、大きく分けて3種類ある。

その3種とは、血液組織液リンパ液である。

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矢印は体液の流れる方向を示し、橙色をした丸っこいものは体内の細胞である。

体液は、血管を流れる血液から始まり、組織液、そしてリンパ液になっていく。

 

血液

見たことがない人はいないであろう、血管の中を流れる赤色の体液。

赤血球などを含み、体中に養分や酸素など、様々なものを運搬している。

 

ところで、血液は100%液体ではなく、内訳は55%が液体成分45%が固体成分である。

また性質はアルカリ性で、血液の量は体重の13分の1の重さである。

 

例えば体重65キロの人であれば、その人の血液量はだいたい5リットルだよ!

 

血液の成分

では血液の成分を具体的に見ていこう。

血液は先述の通り、55%が液体成分、45%が個体成分で構成されている。

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ここでいう液体成分とは血しょうのことで、固体成分は血球のことである。

 

血しょう・・・栄養分や老廃物、タンパク質などを運搬する液体

 

血球・・・赤血球白血球血小板の3種類がある。

 

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組織液

毛細血管を通る血液が血圧によって血管外に押し出され、細胞などの組織の周りを満たすように染み出る

このような体液を組織液という。

全身の細胞はこの組織液に浸った状態で存在しているのだ。

 

ところで毛細血管とは動脈や静脈以外の、全身に張り巡らされている極めて細い血管のことである。

この毛細血管にはごく小さな穴が空いており、血圧によって血液が勢いよく流れると、その穴を通り抜けられる小さな成分(血しょう)が穴から流れ出る

これが組織液になるのである。

※赤血球は大きすぎて通り抜けられない。

 

組織液は細胞などの組織の周りを満たすとともに、細胞内でできた老廃物を受け取ったり、逆に細胞に養分を運んで来たりしている

 

細胞は組織液を介して血液に養分や老廃物を送ったり、もらったりしているんだね!

 

ちなみに人間の体内に含まれる組織液は11リットルにもなる。

 

リンパ液

リンパ管という管を流れる体液で、その正体は組織液の一部ががリンパ管に入ったもの

リンパ液はよく「液」を省略して「リンパ」と呼ばれることも多い。

 

リンパ液は全身のどこの血管から外に出た組織液を取り込んだかによって、成分などが異なることが特徴である。

例えば小腸から取り込んだリンパ液の場合、脂肪分を運搬する役割を担う。

 

また、リンパ液が通るリンパ管は開始地点が閉じられていて、入口がどこの組織とも繋がっていない

そのためリンパ管には血管と異なり、心臓のような液体を押し出してくれる強力なポンプがなく、ゆっくりと流れている。

 

こういった特性から、リンパ管では圧力が弱くリンパ管から外に液体が漏れることはない

また、圧力の弱さにより逆流しないように管内には逆流防止の弁もついている

 

リンパ管は終点は鎖骨下にある静脈につながっているので、最終的に合流して中のリンパ液も血中に戻ることで循環している。

 

 

まとめ

  • 生物は外の環境の変化に対して体内の環境を一定に保とうとし、それには体液が重要な役割をしている

 

  • 体液には血液組織液リンパ液の3種類がある

 

  • 血液は液体成分である血しょうを55%固体成分である血球を45%の割合で含み、完全な液体ではない

 

  • 血球にはさらに赤血球白血球血小板の3種類ある

 

  • 血液の成分(血しょう)が毛細血管の穴からしみ出し、細胞などの組織の周囲を満たすものを組織液という

 

  • 組織液は細胞内でできた老廃物を受け取ったり、逆に細胞に養分を運んで来たりしている

 

  • 組織液の一部がリンパ管に入ったものリンパ液という

 

  • リンパ液は全身のどこの血管から外に出た組織液を取り込んだかによって、成分が異なる

 

  • リンパ液が流れるリンパ管は鎖骨の下あたりにある静脈に繋がっており、リンパ液は最終的に血液に合流する

 

 

 

 

 

体細胞分裂、減数分裂とは何か? 違いは?

生物は細胞を分裂させながら成長するし、子孫を残す際にも細胞を分裂させる。

それが体細胞分裂減数分裂である。

今回は、体細胞分裂減数分裂について、その仕組みと違いを簡単に解説していこうと思う。

 

目次

 

細胞分裂

1つの細胞が分裂して2つ以上の細胞に増加することを細胞分裂というが、実は細胞分裂には2種類ある。

それが体細胞分裂減数分裂である。

 

↓そもそも細胞分裂とは何ぞやということを知りたい方は以下の記事も参考にどうぞ!

inarikue.hatenablog.com

 

体細胞分裂

分裂によって生じる細胞が、分裂前と全く同じものであるような分裂体細胞分裂という。

体細胞分裂は、体のいたる場所に分布する分裂組織という場所で行われる。

 

例えば「手の細胞が分裂したら肝臓の細胞ができた」なんてことはありえないよね。体細胞分裂は元の細胞と全く同じ細胞を作り出す分裂だよ!

 

動物の体細胞分裂

ここで、動物体細胞分裂の流れを見てみよう。

まずは間期

 

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あれ・・・変わらないね。

 

間期はG1期、S期、G2期とあるのだが、実は見分けがつかない

ただ間期全てにおける特徴として、細胞の核が観察できるというのがある。

分裂期になると核は見えなくなってしまうからだ。

 

では次に分裂期を見てみよう。

分裂期はその段階によって前期~終期と分かれている。

 

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動物細胞では終期において、細胞にくびれができ始める。 

このくびれがだんだん大きくなり、最期には細胞が二分される。

このような終期における細胞の分裂を特に細胞質分裂という。

 

 

ちなみに細胞分裂の直前(間期)に、あらかじめDNAの複製によってDNAの量が2倍になっているから、体細胞分裂をしても細胞1個あたりのDNA量は減ったりしないよ!

 

植物の体細胞分裂

今度は植物体細胞分裂を見てみよう。

まず、間期は動物の細胞と同様に、見た目に違いがないので割愛。

 

分裂期を見てみると・・・

 

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ご覧の通り、動物細胞と植物細胞では終期において大きな違いがある。

動物細胞では細胞にくびれができて最終的に細胞が二分されたが、植物細胞では細胞板と呼ばれる仕切りのようなものができて細胞を二分する。

 

動物細胞は細胞にくびれができることによって細胞質分裂が起こり、一方植物では細胞板が出現することによって細胞質分裂が起こるのである。

 

 

※動物細胞と植物細胞の前期~後期はほとんど同じだが、中心体は一部の植物細胞にしか見られないという違いがある。

中心体が見られるのは裸子植物やコケ植物のみの細胞で、被子植物などの高等植物には見られない。

 

減数分裂

一方で、配偶子(精子または卵)を作るための細胞分裂減数分裂という。

減数分裂生殖細胞という細胞のみが行い、生殖細胞はオスであれば精巣、メスであれば卵巣にある。

 

減数分裂分裂が2回連続で起こることが特徴で、それにより分裂後の細胞1個あたりのDNA量(染色体数)が減少するため、"減数"分裂と呼ばれる。

2回の分裂はそれぞれ第一分裂と第二分裂という名称もついている。

 

減数分裂の流れ

減数分裂においても、体細胞分裂と同じように間期と分裂期があり、間期においてDNAの複製もしっかりおこなわれる

そのため、間期は体細胞分裂とほぼ同じである。

 

では分裂を見てみよう

まずは第一分裂から。

 

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第一分裂を終えると、間期などをはさまずにすぐに第二分裂が始まる

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減数分裂では、DNAの量が2倍になるDNAの複製が1度しか行われないのにも関わらず、分裂が2回行われるため、結果的に分裂後の細胞は分裂前の細胞の半分の数のDNA(染色体)になる

 

まとめ

最後に、体細胞分裂減数分裂について表にまとめてみた。

 

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※分裂後の1個あたりの細胞に含まれる数

 

  • 動物細胞の体細胞分裂では、分裂の終期に細胞にくびれができ、細胞が二分される

 

  • 植物細胞の体細胞分裂では、分裂の終期に細胞内に細胞板という仕切りができ、細胞が二分される