『オスとメスはどちらが得か?』を読んで
みなさんは、男(女)に生まれて良かったと思ったことはあるだろうか。
あるいは、異性に生まれたかったと思う人はいるだろうか。
本書は生物学的観点から、オスとメスは一体どちらが得なのかということを真剣に考察した一冊となっている。
また、ギンブナやクマノミ、タツノオトシゴなど、アクアリストにとっては割と馴染みがある生物たちが例に挙げられていて親しみやすい。
性って何故オスとメスの2種類しかないの?
ハーレムって憧れるけど、実際どうなん?
性転換したり、メスだけで子孫を残せる生物がいるのはどうして?
上記のような疑問に、本書は示唆を与えてくれるだろう。
【生物に当たり前なんて無い】
人間とサル類などを比べるだけでこんなに違う。
・人間は一夫一妻制
・ゴリラやオラウーンタンは一夫多妻制
※乱婚制・・・オスもメスも特定のパートナーを持たず、不特定の異性と自由に交尾をする婚姻形態
私たちが普段当たり前だと思い込んでいることの多くは、実は当たり前ではない。
一人の男性と一人の女性が夫婦になって、十年以上もかけて子供を大切に育てて…。
子育ては女の仕事だとか、イクメンだとか、よく分からん言葉作ってあれこれ論争しているのは人間(特に日本人)くらい笑
その一方で・・・
・クマノミは全てオスで生まれ、集団の中で最も大きい個体がメスに性転換する。
・ミシシッピワニは33℃より高い温度でオスが生まれ、31℃より低い温度ではメスが生まれる。
・99%がメスであるギンブナはドジョウやコイの精子でも子供を生むことが出来る。
もちろんこれらは氷山の一角で、植物の中にだって性転換を行うものもいるし、そんな生物たちが私たちの周りにうようよいる。
生物にとって「当たり前」なんてものは無いんだなと。
【男はつらいよ】
そのような多様な生殖形態中で、筆者は
オスはメスが効率的に子孫を残すために作られた"道具"
と述べる。
実は、驚くべきことに生物学的なオスの存在理由は分かっていない。
メスだけで直接子孫を残す生物が存在する。
一方、オスだけで直接子孫を残す生物はいないし、できない。
オスはあくまで繁殖のサポート役であり、必ずいなければならないものではない。
どんなに着飾ろうと、戦いに勝とうと、あくまでオスはサポート役なのだと(絶望)
【結局自分が一番つらい】
本書ではボロクソに言われていたオスだけれども、どれだけ色々つらい状況にあろうが、何と言われようがオスも生きている。
そう考えると、オスほど立派なものはいないんじゃないか。
でも、オスはきっと「オスはつらい」って思ってるだろうし、
メスはメスで「オスは苦労を知らない。子供を生まなければいけないメスのほうがつらい。」なんて思っているんだろうな。
自分は何となく男に生まれて良かったって思っているけれど、それでも毎日色々あって結構きついっす。
てか性別関係なく豆腐メンタルだともうアレ
ああ、結局みんな自分が一番つらいなんて思ってたりして
底無しの奥深さと面白さがつまったこのコンパクトな一冊、興味を持った方は是非読んでみては?