サンゴの白化とは? サンゴと地球環境問題
前回サンゴの生態について記事を書いた。
今回は一歩先に踏み込んで、サンゴと環境問題について解説しようと思う。
目次
サンゴ礁の危機
観光資源としても、多様な生態系の維持としても我々にとって重要なサンゴ。
彼らは常に、環境の変化というストレスと闘い続けている。
そして、その彼らにとってのストレスが年々深刻化してきている。
例えば、彼らにとって温暖化によって海水温が上昇することは非常に都合が悪い。
最近では、2016年、海水温度が30℃を超える期間が2ヶ月も続き、日本の石垣島と西表島の間にある石西礁湖と呼ばれる場所では、なんと89%のサンゴが白化に見舞われたという。
石西礁湖のサンゴ白化現象の調査結果について(お知らせ), 図2 各地点の白化調査結果, 環境省 那覇自然環境事務所, 2016年08月31日より
サンゴが死滅する原因
サンゴはストレスがかかると白化(文字通り体が漂白したように真っ白になる)してしまう。
サンゴが白化する原因はいくつかあるが例えば以下のようなものが挙げられる。
ただ、白化する=死ぬというわけではなく、白化しても環境をただちに改善すればサンゴは回復できることが研究で分かっている。
だから、サンゴの死滅はこの白化の状態が続くことによって起こるものである。
※サンゴは共生している褐虫藻の色素によって色を出しているため、白くなったサンゴは本来の白い透明な骨格がむき出しになった姿である。
白化が起こる仕組みと海水温の上昇
サンゴは体内に褐虫藻という光合成を行う藻類を共生させている。
そして、いわゆる白化はその褐虫藻がサンゴからいなくなってしまった、あるいは減ってしまったことにより起こる。
どうしてサンゴから褐虫藻がいなくなるのかな?
上記で白化の原因となるものをいくつか挙げたが、中でもサンゴに最もストレスになるのは海水温の上昇である。
まず、サンゴは海水温が29℃程度までなら耐えられるのだが、近年のように30℃を超える期間が長期に続くとストレス状態になる。
実は、このストレスを受け続けたサンゴにとって、日光が害になってしまう。
30℃っていう水温は魚にとってもキツいよ。弱って病気にかかりやすくなる・・・・。
サンゴは浅い海に生息しており、光合成のために通常強い日光を浴びる必要があるが、ストレスによって弱ったサンゴになると話は違う。
サンゴは褐虫藻に光合成をさせてエネルギーを得ている生き物だが、その褐虫藻が正常に光合成をできなくなってしまうのだ。
すると、サンゴは正常な光合成をできない弱った褐虫藻を自ら外に排出してしまう。
こうして、褐虫藻がサンゴからどんどんいなくなり、白化してしまうのだ。
サンゴに大ダメージ? 赤土とは?
赤土の流入も、サンゴにとって大きなメージとなる。
赤土の問題は日本国内にとどまらず、むしろ海外のほうが被害が深刻な国が多いとのことだ。
そもそも赤土とは南西諸島に一般的に見られる赤茶色の土のことで、毒性もない。
しかし、赤土は粒子が細かいので、いったん水に混ざると、沈殿せずに長期間水を濁らせてしまう。
特に海は波や潮の干満があるせいでなかなか沈殿せず、長期間巻き上げられることになる。
すると水中に届くはずの日光が遮られ、サンゴの褐虫藻が思うように光合成ができなくなってしまうのだ。
さらに悪いことに、たとえ沈殿したとしても、それがサンゴの上だったりしたらなおさら光合成ができなくなる。
赤土は、植物が植えられている環境では流出しにくくなる。
自然開発によって海に近い場所や川辺の植物を減らした結果、赤土が海に流入する問題が頻発するようになったのである。
現在では土地利用の改善や、植物の植え方を工夫するなどの対策が考案されている。
畑や河川など、海よりも前の場所からの見直しが必要なんだね。
サンゴと台風
我々の暮らしに多大な被害をもたらすこともある台風だが、実はサンゴにとって台風は非常に重要である。
まず、台風は雨や風によって、通過した海域の海水をかき混ぜるという役割を持っている。
夏の期間は太陽の光が当たり続ける海の浅い部分は絶えず暖かくなり、一方で深い部分は冷たいままである。
サンゴは浅い海域に生息するから、このままでは水温がどんどん上昇し、白化を引き起こしてしまう。
そこで登場するのが台風である。
台風が通過することで風で波が荒立ち、雨が降り、海の浅い部分と深い部分がかき混ぜられて水温が均一になるのだ。
これによって、浅い海での一方的な水温上昇を防ぐことができるのである。
確かに、強すぎる台風はサンゴ礁を根こそぎ破壊してしまう危険はあるものの、台風が少ない年はサンゴの白化も多くなる。
地球環境が変わって台風の進路が変わったり、台風が少なくなっちゃったりしたらまずいね・・・。
まとめ
- サンゴは海水温の上昇などの様々な要因からストレスを感じ、白化という現象を引き起こす。
- 白化はサンゴに共生する褐虫藻がいなくなってしまうことで起こる。
- 白化した状態が続いたサンゴは死滅し、辺りの生態系に深刻な影響を与える。
- 台風は海水をかき混ぜて水温を均一化させるはたらきがある。
終わりに
10年前くらいに比べて、最近は本当に暑くなったと思う。
私の記憶では、夏なんて30℃を超えれば全国ニュースになったもので、今やそれが40℃に迫る世界。
これからどんどん暖かくなって、日本を含めた温帯の四季の変化はマイルドになって、冷帯や寒帯といった地域は消えていくのだろうか。
渓流のような冷たい水に棲むヤマメや北方に棲むニホンザリガニなど、低温でしか生きられない生物には厳しい時代がやってくるのだろうか。
そして一方でゴキブリが北上してきたり、変な病気を媒介する蚊が増えたり・・・。
それまでにどうなっているか分からないが、環境問題への理解と知識は深めておきたいね。
今日はここまで!
参考文献、サイト
東京大学海洋研究所/編 『海の環境100の危機』東京書籍
沖縄のサンゴ脅かす「白化」なぜ起きる? 色は生きるための「秘策」 | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス
サンゴ礁を救おう、静岡大の挑戦(上)世界初、白化現象の仕組み解明(1/2ページ) - 産経ニュース
環境省HP 環境省_西表石垣国立公園 石西礁湖のサンゴ白化現象の調査結果について