海水ハゼの入門種! 魅力あるアゴハゼの紹介と飼育
今回は「アゴハゼ」というハゼについて紹介していこうと思う。
私はまだこの魚の飼育歴は浅いのだが、それでも飼育をしている者として、アゴハゼの魅力を伝えていけたら嬉しい。
目次
基本データ
【種名】
アゴハゼ
【学名】
Chaenogobius annularis
【英名】
Forktoungue goby
【分類】
【大きさ】
最大で8センチほど
【食性】
雑食
【生息地】
朝鮮半島にも分布。
海水水槽で飼育可能な小型のハゼ
アゴハゼは大きくなってもサイズが10センチを超えない小型のハゼだ。
英名はForktoungue goby。
ハゼは英語でgoby(ゴビー)と言うので、熱帯魚などでゴビーという名前がついた魚がいたらハゼだね。
日本近海の岩礁地帯(いわゆる潮だまり)に行けば必ずと言っていいほど見かける種で、
他に潮だまりで必ず見かけるであろうホンヤドカリ、イソスジエビらと日々不毛な生存競争を繰り広げている。
潮だまりに行けばまずいるので、近場に海がない人でなければ、通販で購入するよりも自力で採取したほうが楽しいよ!
ちなみに我が家のアゴハゼも全て自然採取個体です。
アゴハゼのここが魅力!
私が飼育して感じた、飼育魚としてのアゴハゼの魅力をご紹介しよう。
食欲旺盛で何でも食べる丈夫な魚
餌をよく食べてくれることは、そのまま飼いやすさに直結する大きな要素だ。
特に好き嫌いはなく、人口餌から冷凍シーフードミックスのエビ、イカ、アサリなどの生き餌も食べる。
唯一食べなかったのは海藻類だから、アゴハゼは肉食寄りの雑食なのかもしれないね。
魚に限らず生き物は、自然採取の個体の場合、市販の人口餌を食べないことも多いのだが、アゴハゼは心配なさそうだ。
私は4匹のアゴハゼを飼育しているが、どの個体も導入初日から人口餌にがっついたし、とにかく口に入るものは入れようとする。
その食欲は同居しているヤドカリのための甲殻類専用餌まで横取りする始末だ。
あと余談だが、餌をくれる人が分かるらしく、水槽に近づくだけで隠れ家から出てきたりしてとっても可愛い。
簡単な設備で飼育できる海水魚の入門魚
マリンアクアリウム=サンゴやクマノミのような熱帯の海水魚のイメージを持つ人は多いと思うが、アゴハゼはそれらとは全く異なる環境に棲んでいる。
アゴハゼは潮が満ち引きして環境が大きく変わりやすい潮だまりに生息する生き物だ。
そのため、温度変化にも強く、簡単に死ぬような魚ではない。
また、陸地を作る必要もない。
人工海水を作る必要はあるものの、フィルターと45センチ以上の水槽に少し隠れ家を作ってやればもう飼育が可能だ。
プロテインスキマーとか、オーバーフローとか、殺菌灯だとかも必要なし。
あったらダメっていうわけではないが、よほどこだわりをもってアゴハゼを飼育するのでなければ、簡単な設備で飼えてしまう。
魚飼育の原点に回帰したような設備で十分であり、まさに入門魚だ。
ハゼの中では大人しく、混泳向きの魚
アゴハゼはかなり大人しいハゼだ。
ハゼの仲間は縄張り意識が強く、気性が荒いものが多いのだが、アゴハゼはその中でもかなり穏和である。
確かに、小競り合いの範疇で水槽内で他のアゴハゼを追いかけることは幾度か見た。
しかし、それによって怪我や病気、拒食になったものはいない。
石の上で一緒に並んでいるのもよく見かける。
そして、同種以外の他の魚やヤドカリには無関心。
むしろ上記の写真のように、ヤドカリの上にアゴを乗せてくつろいでいる始末である。
お気に入りの個体を厳選して採取できる
アゴハゼは日本全国の潮だまりにならどこにでもいるくらい生息範囲の広い魚だ。
だから、アゴハゼは自然の個体を採取してそのまま持ち帰って飼育するのがオススメだ。
潮だまりでたくさん採れるので、自分のお気に入りの元気な個体を厳選して持ち帰って飼育ができるのだ。
また、磯にはさまざまな生き物がおり、飼育だけではなく、自然採集という楽しみも経験できて、勉強にもなると思う。
同居のイトマキヒトデは乗り物。
やはりヒトデに乗る。個体によって模様もちょっと違う!?
飼育法は? 注意すべきことも!
あくまで一例だが、こちらは私の磯水槽である。
アゴハゼの飼育法と、飼育する上で注意すべき点を少々書こうと思う。
水槽のススメ
アゴハゼは大きくなると8センチ、つまり10センチ近くになるわけだから、最低でも45センチ以上の水槽で飼育してほしい。
そして私個人がオススメするのは60センチ水槽か90センチ水槽。
理由は、いくつかある。
まず、水槽は大きければ大きいほど中の水の水質や水温の変化が緩やかになるので、できるだけサイズの大きな水槽をオススメしたいからだ。
次に、磯にはたくさんの生き物がおり、そこで気に入った生き物がいれば、持ち帰ってアゴハゼとそのまま一緒にお迎えすることが可能だからだ。
アゴハゼは本種のみの単独飼育も良いが、混泳向きの魚なので、混泳させるのも一つの楽しみ方だと思う。
海水のススメ
海水魚は海水が必要なので、金魚などの淡水魚よりもひと手間はかかる。
近場の海から汲んでくるor市販の人工海水の素を使って海水を作るの二択になるが、これは飼育者の居住環境によりけりだね。
ただ個人的には人工海水を作ることをオススメする。
理由は、汲んできた海の水は必ずしも安全じゃないからだ。
意図しない生物の混入などもあるし、確実性をとるならば人工海水がオススメだ。
ろ過のススメ
ろ過装置には色々あって、底面ろ過、上部ろ過、外部ろ過、オーバーフローがある。
その中でも私がオススメするのは上部ろ過だ。
上部ろ過はろ過力の高さはもちろんのこと、酸素も一緒に供給できるのでエアレーションが不要であり、さらにろ過装置自体のメンテナンスが非常にしやすいという、初心者にとってはメリットがたくさんある。
価格も外部フィルターと比べてかなり安い。
ちなみに我が家では下記のグランデカスタムでろ過している。
ただ注意してほしいこともある。
上部ろ過は流水音が他のろ過装置と比べて大きいので、そこを嫌う人は外部フィルターなどを使うと良いだろう。
また、ろ過装置のフタなどに海水中の塩が結晶化して付着する塩だれという現象も起こるので、定期的に拭いて落としてあげよう。
底砂のススメ
ショップなどでサンゴ砂を購入するのが安定。
底砂は砂利に近い細目のサンゴ砂を我が家では使用している。
底砂のサンゴ砂の粒の大きさは、あまり大きいと底にゴミがたまり、底生魚であるアゴハゼにとってよくない環境になる可能性があるのであまりオススメしない。
ヒーターとエアレーション
アゴハゼは日本の潮だまりに生息している生き物だから、ヒーターは必須ではない。
ただ、冬場の水槽内の温度が15度を下回る場合や、寒暖差がある部屋に水槽を置くのであれば、あったほうが良い。
エアレーションは上部フィルターを使用していなければつけたほうが良い。
海の魚は酸欠に弱いのが多いからね。
混泳のあれこれ
アゴハゼは基本的に自分の口に入るような小さなエビ類や、体格の大きいフィッシュイーター以外となら混泳が可能だ。
アゴハゼ同士の混泳、ホンヤドカリ、ヒトデ、イソガニ、貝類など。
アゴハゼ同士の場合、多少の小競り合いはあるが、それによる事故などはなかった。
他種ハゼとの混泳はアゴハゼが大丈夫でも相手ハゼの性格次第だね。
生活圏がかぶってもイソギンポやナベカあたりは混泳できると思う。
一つ注意しておきたいのは、アゴハゼは非常に貪欲で餌を食べるスピードも速いので、水槽のタンクメイトにしっかりと餌が行き渡っているか確認しながら餌をやろう。
餌のあれこれ
餌は基本的に好き嫌いせずに何でも食べる。
人口餌、アサリ、エビ、イカなど。
経験上、生き餌を与えるときは小さく切ってあげたほうが食べやすいと思う。
ちなみにワカメなどの海藻類は食べているところを見たことがない。
レイアウトのあれこれ
アゴハゼは潮だまりにいる関係で、浅瀬にいることも多い魚だ。
けれども、陸地を作る必要はない。
自然界では石の下や隙間に隠れているので、石を組んで隠れ家を作ってあげると、小競り合い防止にもなる。
メンテナンスのあれこれ
メンテナンスは立ち上げて間もなければ3~5日に1度、1か月以上経って生体が馴染んできたのであれば1週間~10日に1度くらい、水換えをしてあげよう。
日にちは目安なので、あくまで、導入したての時期は気持ち多めってところかな。
あとアゴハゼは底層の生き物なので、定期的に砂を掃除してあげることも大切だ。
その際はプロホースなどで、全部一気にやるのではなく、今回は4分の1とか割合を決めて少しずつ砂掃除をするといいよ。
おまけ~ 良く似た魚に注意
上記の基本データを見ると、アゴハゼはアゴハゼ属というものに属している。
このアゴハゼ属にはアゴハゼともう1匹、ドロメという魚の2種類しか属していないのだ。
そしてこのドロメは、アゴハゼと外見が良く似ているものの、大きくなると10センチ以上となり、気性も結構荒い。
その判別方法は胸ビレを見ることで、アゴハゼは胸ビレに斑点があり、ドロメにはない。
磯に行った際は観察も含めてよく目を凝らしてみよう!
最後に
私はアゴハゼ飼育者としてはまだ駆け出しだが、アゴハゼの魅力にはすでにかなり魅せられてきた。
アゴハゼは何でも食べるし、人の顔を覚えるのか寄ってくるので、餌をやる瞬間が一番楽しい魚だ。
アゴハゼは短命な魚らしいが、その寿命を全うするまで、責任をもって飼育したい。
そして、さらなる彼らの魅力に気づけることを切に願っている。
この記事を通し、一人でも多くの人にアゴハゼという魚を知ってもらい、暖かくなったらぜひ道具をもって磯に行って色々な生き物と触れ合ってほしい。
そしてわよくばアクアリストの仲間に・・・笑
今日は長文になりました。
ここまで読んでくれてありがとう。