地球初の生命誕生とシアノバクテリア
地球の誕生から初めての生命が誕生するまで8億年かかっている。
しかし、初の生命が誕生してから生物由来の酸素が誕生するまでも8億年かかっている。
生物が酸素を生み出し、利用できるようになるまで相当苦労したようだが、今回はその過程を簡単に解説していこう。
※前回から一応続いてます。
目次
生命の誕生
地球で最初と言われる生命は、驚くべきことに酸素がない中で出現した。
グリーンランドのイスアという場所で、38億年前の地層が発見されている。
38億年前、地球には海があり、そして海の中には有機物が大量に蓄積していた。
また、生物の細胞の原型となったであろうコアセルベートというものも出現していた。
しかし、当時の地球にはまだ酸素がなく、冷えてきたとはいえ高温だった。
だから海からの水の蒸発量は凄まじく、それによって分厚い雲ができていた。
そのため太陽の光は地表まで届いていなかったと言われている。
酸素も光も利用できなかったんだね。
こうした環境の中で初めて誕生した生物は、酸素や光がなくても生きていくことができる生物だった。
従属栄養生物
地球に初めて出現した生物は嫌気性(酸素がなくても大丈夫)で、光を使わず、従属栄養生物という生物であった。
従属栄養生物とは、簡単に言えば、外部(海中)から有機物を摂取することで生きている生物だ。
しかし、海中にいくら有機物があるといっても限りがあり、どうやって有機物を枯渇させることなく利用して繁栄していくかが課題となる。
独立栄養生物
イエローストーン国立公園の紅色硫黄細菌。
有機物の利用が課題になる中で、「有機物がないなら無機物から作ればええやん!」と考える生物が出現した。
有機物を摂取するのではなく、無機物から有機物を作り出す独立栄養生物という生物が出現したのだ。
それが化学合成細菌と光合成細菌である。
化学合成細菌
硫黄細菌など、化学エネルギーを利用して有機物を作り出す細菌類の総称で、地球史上初の独立栄養生物と言われる。
熱水噴出孔の熱水に含まれる硫化水素などを吸収し、それを体内で化学変化させ、その際に生じる二酸化炭素を有機物に変えてエネルギーとする。
光合成細菌
硫黄細菌から進化したと言われている。
赤や緑の色素を持つ紅色硫黄細菌や緑色硫黄細菌がおり、紅色硫黄細菌はイエローストーン国立公園などで今でも観察できる。
必ずしも光合成をする=植物ではないよ!
地球がさらに冷え、雲がだんだん薄くなってくると地表に光が届くようになる。
当時は酸素はまだない状態だが、地表に届くようになった光をいち早く利用したのが光合成細菌である。
酸素はまだまだ
化学エネルギーや光エネルギーを利用する細菌類が誕生したわけだが、この地点で酸素はまだである。
化学エネルギーを利用する硫黄細菌は、硫化水素を利用するが、最終的にできるのは酸素ではなく硫黄である。
一方で光合成細菌は硫黄細菌から進化したもので、結局酸素ではなく硫黄を生成する。
実は酸素を生み出す生物が出現したのは30億年前。
生命の誕生が38億年前だから、生物が酸素を生み出すのに8億年もかかっている。
シアノバクテリア、出現
生命の誕生から8億年が経過し、シアノバクテリアという生物が誕生した。
化学合成細菌や光合成細菌は硫化水素を利用するから、実は生息地が限られてしまう。
硫化水素って、火山の近くに行かなきゃないよね。
生物としては、なるべく広く繁栄したいと思うのは当然のことだろう。
そう考え、硫化水素より身近なものである水を利用して光合成をするものが現れた。
それがシアノバクテリアである。
シアノバクテリアは硫化水素よりももっと身近で大量にある水を利用した。
その結果、酸素が生成され、生物由来の酸素が初めて作られたのだ。
30億年前の証拠
シアノバクテリアが誕生した瞬間を見た者は誰もいないが、30億年前にシアノバクテリアが誕生したという有力な証拠がある。
30億年前の地層を境に、酸化鉄が層状になった縞状鉄鋼層が世界中で発見されているのだ。
海には鉄分が溶け込んでいる。
海に含まれている鉄分とシアノバクテリアが生成した酸素が次々に化合して酸化鉄になったとされている。
終わりに
シアノバクテリアといえば、アクアリストならば藍藻を想像する方が多いのではないでしょうか。
シアノバクテリアは総称ですが、アクアリストとしては天敵でも、一種の生物として見るととても面白い生物だと思います。
現代では水素で車を動かそうとしたり、自然エネルギーで発電をしようとしたり、身近なものから何かを生み出す試みが積極的にされていますね。
身近にあるものから貴重なものを生み出す、とりわけ無から有を生み出す生物の姿勢からは、人間も何か学べることがあるかもしれません。