生物の"群れ"とは何か? なぜ群れるのか?
水族館などでイワシやアジが群れを作って塊のようになっているのを見たことがある人は多いだろう。
生物の中には大きなものから小さなものまで、群れを作るものがいる。
他方で、群れを作らず単独行動をする生物もいる。
今回は、生物の群れについて語る。
目次
群れとは?
カモメの群れ
群れとは、統一された行動をとる生物集団である。
みなさんは、何か生物の群れを見たことがあるだろうか。
ある場所に生物の集団が見られた場合、それを群れと呼ぶには、その集団が「統一された行動をしている」かどうかで判断する。
集団で大空を鳥が飛んでいたらそれは群れだと言えるよね。「飛ぶ」という統一された行動を集団でやっているのだから。
ところで、ミジンコの群れを見たことがある人はいるだろうか。
川や池など、水の中を覗き込んだときに見える無数の透明な生物がミジンコである。
では、↓のような細菌(写真は黄色ブドウ球菌という病原菌)はどうだろう。
これは群れていると言えるか。
答えはもちろんNOである。
ミジンコであれ細菌であれ、その場でただ大量発生しているだけ、あるいはくっついているだけでは群れとは言わない。
感覚的にも群れ・・・って感じはしないよね笑
群れのメリット・デメリット
では、生物はなぜ群れるのか?
答えは簡単で、群れるメリットが大きいからである。
しかし全ての生物が群れるわけではない。
群れを作ることには当然メリットとデメリットがあり、生物が群れるかどうかはその生物のライフスタイルやそのときの状況に左右される。
メリット
群れのメリットは以下のようなものがある
- 狩りなどの食糧の確保が効率的になる
- 繁殖が効率的になる
- 外敵からの防衛に役立つ
1から順に考えていこう。
食糧の確保
これは群れで狩りをするライオンをイメージしてくれればすぐ分かると思うのだが、各自が連携をとって、1対1では敵わないより大きな獲物を狩れれば魅力的である。
逆に、周囲の草木などにとけこんで隠れ、獲物を待ち伏せするようなライフスタイルの生物は群れずに単独行動をすることが多い。
トラやヒラメなんかがそうだね。
繁殖が効率的
どこにいるか分からない異性をわざわざ探しに行かなくても、群れの中から適当な異性を探せば良い。
ふらふら動きまわるのは外敵と遭遇する危険もある。
ゾウアザラシのように強いオスが群れの中でハーレムを作り、群れに入っていても交尾にあぶれる生き物もいるが・・・。
外敵からの防衛
群れるということは単純に外部への監視の目が増えることである。
また、群れることによって特定の個体が標的になりにくくなり、捕食者の目を攪乱するという利点もある。
同じ見た目のものがうじゃうじゃいると、どれを狙ったらいいか分からなくなるね。
例えばタカがハトを狙う場合、ハトが単独でいるときは狩りの成功率が8割だったのに対し、大きな群れを作っていたときの成功率は2割ほどだったという研究結果もある。
さらに、他よりも目立つ模様などをした個体(突然変異などで生まれる)はタカに捕まりやすいとのこと。
公園でハトに餌やりをしているとき、一匹が飛び立つと他のハトも一斉にバーっと飛び立つ光景を見たことがあるだろう。
たとえ自分が別のことに夢中で直接目視していなくとも、誰かが飛び立ったり逃げたりして、自分もそれと全く同じ行動をとるだけでよいのだ。
その他のメリット
寒い地域で動物たちが高密度に寄り添っている光景が良く見られる。
例えば極寒の地に棲むコウテイペンギンは密度の高い群れを作り、集団で寄り添うことで温度を確保し、ヒナを育てる。
他にも、サルには群れの他の個体から生きていくうえで役に立つことを学習するものもる。
デメリット
群れは良いことだけではない。
- 群れの中で食糧や異性を巡って争いが起こる
- 伝染性の病気が伝染しやすくなる可能性がある
というデメリットも存在する。
集団生活はやっぱりストレスが溜まることも多いよね・・・。
群れには適切な"大きさ"がある?
江の島水族館にて撮影
群れは大きくなればなるほど、外への監視の目が増える。
すると一匹あたりが外の監視に費やす時間も短くなり、その分餌を食べたりする時間にまわせる。
しかしその反面、群れの中で喧嘩などが起きやすくなる。
これらを加味すると、中程度の大きさの群れが適切な大きさということになるが、やはり状況よって群れの大きさは常に変化する。
例えば周りに外敵が多い状況では群れを大きくするだろう。
反対に、餌が少なかったり、繁殖期で攻撃的になる個体が増えたりすると、群れは小さくなるかもしれない。
大きな群れは他種に対してより高い競争力を持つことができるが、その反面、内部(同種内)での争いが激化する。
群れを作る生物たちは、内外の状況を考慮しながら工夫し、群れの大きさを調整しているのである。
参考文献
伊勢武史/著 『学んでみると生態学はおもしろい』 ベレ出版
D・サダヴァ他/著 『大学生物学の教科書』第5巻 講談社