生態系とは何か? 食物連鎖とは?キーストーン種とは?
近ごろ、生物多様性や自然保護に関する多くの言葉やニュースが耳に入るようになってきた。
環境問題に対しては一人一人が高い意識を持つ必要がある。
少々聞きなれない用語も出てくるが、今後覚えていても損はないので簡単に説明する。
では、生態系について少し学んでみよう。
目次
生態系とは?
生態系とは、ある地域に生息する全ての生物と、それを取り巻く環境のまとまりである。
生態系は、生物と、生物ではない環境(光や土壌、温度など)で構成されている。
そして生物とその周囲の環境は、お互いがお互いに影響を与え合っている。
例えば草食動物が草を食べ、排泄する場合など様々である。
生物だけが生態系じゃないんだね。
生態系の構成生物
生態系を構成する生物は、有機物を得る方法の違いによって大きく3種類に分けることができる。
①生産者
無機物から有機物を合成することができる生物たち。主に植物。
②消費者
生産者を食べることによって有機物を得る生物たち。
特に消費者の中でも直接生産者(植物)を食べる生物を一次消費者といい、一次消費者を捕食することにより、間接的に生産者を食べる生物を二次消費者という。
一次消費者は草食動物で、二次消費者は肉食動物にあたるね!
③分解者
生産者と消費者の遺骸や排泄物から有機物を得る生物たち。ミミズや菌類などが該当。
生態ピラミッド
これは誰もが見たことのあるであろう生態ピラミッドの簡略版である。
生態系の生物たちの個体数などを生産者から縦に並べると一般的にピラミッド状になる。
理由は、生産者→消費者と段階が上がるにつれて、生物の個体数や、体に含まれる有機物の量が減少するからである。
※生態系のピラミッドは必ずしも普通のピラミッド型になるわけではなく、逆ピラミッド型のような例外も存在する。
食物連鎖と食物綱
食物連鎖は、ある生物の食う・食われるの関係を一本の直線的な繋がりとして考える概念である。
以下は、一例であり、タカが最上位となる。
カエルはクモを食べ、ヘビがカエルを食べ、最終的にタカがヘビを食べる。
しかし、現実には上図のように1種の生物が1種の生物を食べるor食べられることは少なく、複数種の生物を食べたり、食べられることが多い。
例えば上記の食物連鎖ではカエルを食べる生物はヘビとしたが、ネズミや鳥などもカエルを餌として食べることがありえる。
つまり、生物同士の繋がりとは単純な一本線で表されるものではなく、もっと複雑である。
このように、生物同士の食う・食われるの繋がりを網目状に示したものを食物綱という。
食物綱は近年では食物連鎖以上に重要視されている。
キーストーン種
ある地域の生態系の食物連鎖や食物綱において、「この生物がいなくなると生態系の全体のバランスが崩れてしまう」というキーパーソン的な、超重要な種がいる。
これをキーストーン種と呼ぶ。
キーストーン種は食物連鎖や食物綱では上位に位置する生物が該当する。
例えばある海の生態系を考えてみよう。
ジャイアントケルプっていうのはこんなやつ。
ジャイアントケルプは巨大な海藻で、長さは40mを超えるものまであるという。
ジャイアントケルプは海の中に密林を作り、これが小魚などの重要な隠れ家となる。
そのため、ジャイアントケルプ周囲には多様な生物が育まれる。
しかし、これを食べてしまう生物も存在する。
ウニはこの植物の天敵である。
そしてそのウニを好物としているのがラッコである。
ここの生態系におけるキーストーン種は最上位のラッコである。
ラッコは乱獲や海洋汚染などにより絶滅危惧種となっており、もしラッコが絶滅したらどうなるだろうか。
当然天敵がいなくなったウニが増え、ジャイアントケルプを食べ尽くすだろう。
ジャイアントケルプがなくなれば、そこを隠れ家などにしている多数の生物の居場所はなくなってしまう。
※ジャイアントケルプは海底の岩などに根をおろしているが、この根元をウニが噛みちぎることがある。すると、何十メートルもあるジャイアントケルプが当然流される。たとえウニが植物の全てを食べ尽くさなくても、一瞬にして多数の生物たちのすみかが失われるのである。
ただ、ここで一つ勘違いしてほしくないのは、ウニは決して悪者ではなく、ただ生を全うしているだけであるということ。
食物連鎖を乱しているのはわれわれ人間である。
ある地域の生態系を考える際には、その地域のキーストーン種となる生物はどれなのかを明らかにし、保全していくことが非常に重要なのである。
まとめ
・生態系とは「生物+その生物たちを取り巻く環境」である
・生態系を構成する生物は有機物を得る方法の違いにより生産者、消費者、分解者の3種に分けることができる
・ある生物の食べる&食べられる関係を一本の直線的な鎖で表す考え方を食物連鎖という
・それに対し、複数の生物同士が食べる&食べられる関係を網目状に表したものを食物綱(しょくもつこう)と言い、近年では食物連鎖よりも重要視されつつある
・ある地域の生態系において食物連鎖や食物綱の上位に位置し、なくてはならない種をキーストーン種という
・その地域内の生態系のキーストーン種を見定め、保全を考えていくことが重要である