生物は群れをどうやって統率するの? 魚の群れにリーダーはいるの?
生物の中には大なり小なりの群れを作り、敵から身を守ったりするものがいる。
しかし一口に群れといってもその統率形態には微妙な違いがあったりする。
今回は、生物の群れの順位制とリーダー制(独裁制)について学ぼう。
目次
群れにはリーダーがいる?
哺乳類の群れ、鳥類の群れ、魚類の群れなど、様々な動物が群れを作るが、その群れを統率しているのは誰だろうか。
結論からいうと、リーダーは必ずしもいるわけではない。
特にリーダーがいないのではと考えられているのが↓のような群れを作る魚類。
ライオンの群れであればリーダーは一番強いオスのライオンということになるが、群れのリーダーを見分けるのって意外と大変だったりする。
例えばハトやニワトリの群れなんて見てもみんな姿が同じで、誰が誰だか分かったもんじゃない。
おそらく同士では区別がついているのかもしれないけれど、人間の目から見れば全てが同じに見える。
※群れとしては、外から見て全て同じように見えていれば外敵の目を攪乱するという意味では成功である。
群れの統率
生物は群れを作り、そして統率をする。
なぜ統率するのかというと、群れがきちんと統率されれば、群れを大きくしつつ中での争いも少なくすることができるからである。
群れの中で順位や強さが上の個体から順番に食物にありつき、繁殖も順番に行うのだ。
前回の記事の最後に、生物は群れの大きさを工夫して調整すると述べた。
統率は群れを発展させるための工夫なのである。
ところで、群れを統率する方法は生物によって異なる。
魚類のようにリーダーがそもそもいない群れのパターンもあれば、ある一匹が絶対的なリーダーとして君臨する群れもある。
順位制
順位制は、群れの構成員一匹一匹に順位をつける統率方法。
単純に言ってしまえば、30匹いれば1位~30位まで各個体に順位がつく。
順位制は主に鳥類に見られる群れの統率法で、好例がニワトリ。
例えばニワトリにおける順位制では、「他のニワトリに突かれた回数」によって順位が決まる。
上の順位の個体は下の順位の個体を全て突くのだ。
つまり順位が1位の個体は誰にも突かれず、自分以外の個体を全て突き、2位の個体は1位以外全ての個体を突く。
最下位の個体にいたっては全ての個体から突かれる。
いつかニワトリの群れを見る機会があったときは、やたら他の仲間から突かれている個体がいるか、逆に全く突かれてない個体がいるか、観察してみよう。
※順位制では同順位の個体が複数存在することがある。1位が2匹いる場合もいれば、互いを突きあって三角関係を形成する個体もいる。笑
リーダー制
群れの中に絶対的な1位個体が存在することが特徴で、その個体が群れを統率する。
猿や鹿、ライオンなどの哺乳類の群れによく見られるタイプの統率法である。
絶対的な1位だけが決まっており、あとの構成員は順位が関係ない(1位以外はあとは同順位)場合が多い。
両者の違い
ここで、順位制とリーダー制の違いをはっきりさせておこう。
両者の違いは、1位である個体が誰なのかを把握しているかどうかの違いである。
順位制 ・・・一匹一匹全ての個体に優劣となる順位がある。
リーダー制・・・絶対的な1位だけが決まっており、それ以下の個体の順位は同順位。さらに、群れの構成員全てがその1匹を認識している。
実はリーダー制においては1位の個体が誰なのかを群れの全ての仲間が把握しているのに対し、順位制では1位の個体が誰なのかを全員が把握しているわけではないのである。
え?1位が分からないなら餌や交尾のときに喧嘩になるんじゃない?
ここで面白いのが、例えばニワトリは自分が何番目なのか、具体的な自分の順位を把握しているわけではないのだ。
ニワトリは順位が異なる者同士が対面すると、順位が低いものがその場から逃げたり、順位の高いものに餌や道を譲ったりする。
これを繰り返すと、最終的に順位が最も高いものが餌を先に食べたり、道を進むことができるという仕組みだ。
あくまで対面した相手の順位が自分より高いか低いかの判定しかできないってことだね。
まとめ
- 生物は群れを作るものがいるが、魚など、群れにリーダーがいないものもいる
- 群れの統率方法には順位制とリーダー制がある
- 順位制では群れの個体全てに1位から順位がつく
- リーダー制は群れの1匹が絶対的な1位として君臨し、それ以下の個体は同順位である
- 順位制をとるニワトリの群れの順位は、突かれた回数で決まる
参考文献
伊勢武史/著 『学んでみると生態学はおもしろい』 ベレ出版
D・サダヴァ他/著 『大学生物学の教科書』第5巻 講談社