エイブリーの実験、ハーシーとチェイスの実験とは?
遺伝子の本体は何かということを巡り、様々な研究や実験がなされてきた。
その中でもイギリスの遺伝学者グリフィスは、遺伝子の本体を「熱に強い物質」ではないかと発表し、一石を投じた。
今回はグリフィスに続き、エイブリー(アベリー)の実験と、ハーシーとチェイスの実験を見ていこう。
↓一応この記事の続きとなっております。
目次
エイブリー(アベリー)の実験
エイブリー(アベリー)はカナダ生まれのアメリカ人研究者である。
エイブリーも、グリフィスと同様に肺炎双球菌を使って以下の実験を行った。
病原性を持つS型の肺炎双球菌を大量に培養して、容器に入れ、すり潰したのである。
グリフィスとは違って、熱は加えてないよ!
この地点で細菌は死んでいるものの、熱を加えていないのでタンパク質は変質せずに残っている。
そして、S型菌をすり潰して出てきたDNAとタンパク質が入った容器を以下のように分け、生きたR型を入れて培養したのである。
結果
すると、結果は①のタンパク質を分解してDNAのみを残した容器から、生きたS型の細菌が検出されたのである。
DNAを残したほうの容器からは、R型に混ざって一部にS型が出現した。
このことから、DNAが形質転換に作用することが示されたのである。
※形質転換=遺伝子の性質を変えること。
ハーシーとチェイスの実験
ハーシーとチェイスは共にアメリカの研究者で、共同で実験を行った。
彼らはT2ファージというウイルスを使った実験を行った。
今度はウイルスという別のものを使って、別のアプローチを仕掛けたんだね!
※実はエイブリーの実験では、S型肺炎双球菌をすり潰した溶液の中に、タンパク質とDNA以外のものが混ざっており、実験の結果、本当にDNAが作用したのかどうかの批判や突っ込みが懸念された。
そこでハーシーとチェイスはそれらに応えるためにも、実験を行ったのである。
ウイルスを使った実験
ファージはタンパク質とDNAのみからできているという非常にシンプルな体の構造をしたウイルスで、感染対象は大腸菌である。
ファージは人間ではなく細菌に感染するウイルスなんだね。
ファージは大腸菌に感染すると、その体内で増殖し、最終的に大腸菌の体を破って増殖したファージたちが出てくる。
つまり、この感染の際ファージから「何か」が大腸菌に注入され、最終的にファージが増殖するのである。
ハーシーとチェイスは、この「何か」こそが遺伝子の正体であると考えたのである。
しかも、ファージはDNAとタンパク質からのみできているので、答えは二択である。
過程と結果
まず彼らはDNAを標識(マーキング)したファージと、タンパク質を標識したファージを用意し、大腸菌に感染させた。
これらを標識したのは後に分かりやすくするためである。
そして、ファージが付着(感染)した大腸菌を、それぞれファージごと遠心分離した。
遠心分離をすると、軽いものは漂い、重くて大きいものから容器の底に沈殿する。
ちなみに大腸菌はファージより大きいので、大腸菌が一番底に沈殿する。
だから大腸菌に注入された「何か」も、大腸菌と一緒に沈殿するはずである。
その結果、大腸菌とともに沈殿したのは標識したファージのDNAだった。
一方で、タンパク質を標識したほうは、沈殿物からは標識したものが見つからなかった。
よって、注入された「何か」はDNAであることが判明した。
そして、このハーシーとチェイスの実験と、これまでのグリフィス、エイブリーの実験を通し、それらの結果をもって、遺伝子の正体がDNAであることが完全に証明されたのである。
まとめ
- エイブリーはグリフィス同様に肺炎双球菌を使って実験を行い、遺伝子に変化をもたらすものはDNAであることを突き止めた
- ハーシーとチェイスはT2ファージというウイルスを使うという違ったアプローチで実験を行った
- ハーシーとチェイスの実験と、これまでのグリフィス、エイブリーらの実験結果をもって、遺伝子の本体がDNAであることが完全に証明された