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ゲノムとは何か? 染色体との関わりは?

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最近、海ブドウのゲノムが解析が終了したと報じられ、一部で話題になっている。

同時に、海ブドウが単細胞生物であることに驚いた人も多いようだ。

では、ゲノムとは一体何なのか。

今回はゲノムについて簡単に解説していこう。

 

 

目次

 

 

ゲノムとは何か?

ゲノムとは、その生物が持つ全ての遺伝子のことである。

例えばある生物が全部で3つの遺伝子を持っていたら、その3つの遺伝子をまとめてゲノムと言う。

 

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生物によって遺伝子は異なるので、人間には人間のゲノムがあり、犬には犬のゲノムがある

 

ちなみに人間はゲノムを2セット持っている

母親のゲノムと父親のゲノムを受け継いでいるからだ。

 

ゲノムの解析

ゲノムの解析とは、生物の遺伝子の情報を解析することである。

さらに言えば、生物のDNAの塩基配列を解析することだ。

 

生物の体の部位や臓器を作っているのはタンパク質であり、そのタンパク質を構成しているのはアミノ酸だ。

そしてアミノ酸はDNAの塩基配列によって決まる

 

よって、塩基配列を解析すれば、その生物の体の根本的な仕組みが分かるというわけだ。

 

ゲノムの解析が進めば、例えば今までは原因が不明で治療法もよく分からなかったような病気が解明されたり、医療の分野などに大きく貢献することになるんだよ。

 

 ↓詳しくは以下の記事を参考にしてみてね。

inarikue.hatenablog.com

 

ゲノムと染色体

人間のゲノムは、46本の染色体からなっているとも言える。

ゲノムは全ての遺伝子のセットであり、遺伝子を持つDNAは実際には23個に断片化されているからだ。

そしてこれが23個×2セットある。

・・・と、この説明だけではかなり分かりにくいので、順を追って説明してみよう。

 

遺伝子情報は全てDNAに保存されている。

だが、DNAは細胞の核内にて一続きで存在しているわけではなく、人間であれば23個の断片に断片化されている。

 

ちなみにこの断片は長さは均等ではなく、バラバラである。

 

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23個の断片となったDNAは、それぞれがさらに無数のヒストンと呼ばれるタンパク質(下図では青い球)に絡みついたかたちでまとまっている。

このようにヒストンにDNAが絡まったものをヌクレオソームという。

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ヌクレオソーム細胞分裂の前になるとさらに凝縮し、染色体と呼ばれるものになる。

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23個ある断片1つにつき1本の染色体ができるため、合計23本の染色体ができる。

しかしこれはあくまで1セット分のゲノムの話

 

人間の場合は、先述のとおり父由来と母由来の計2セットのゲノムを持つので、23本×2で合計46本の染色体を持っている

 

↓DNAについては以下の記事も参考にしてください。

inarikue.hatenablog.com

 

遺伝子の数と謎

ゲノムとは、生物が持つ全ての遺伝子のセットであると説明した。

そして遺伝子はDNA上に点在しており、その数は例えば人間では22,000個大腸菌では4,500個である。

 

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では、DNAの中には遺伝子がぎっしり詰まっているのかというと、そうではない。

例えばヒトでは、遺伝子はDNAの10%ほどしか占めておらず、残りの90%の領域は何をやっているのか不明である。

 

ヒトの場合、DNAはスカスカなんだね

 

しかしその一方で、バクテリア(大腸菌などの細菌類)は遺伝子がDNAにぎっしりと詰まっていて、余裕がないようにも見える。

※ヒトとバクテリアではDNAの形が異なっておりヒトは二本鎖のDNAバクテリアは環状のDNAを持っています。

 

ただ、最近の研究では、一見遺伝子が何もないような部分も、実はRNAにまで転写されているところが多くあることが分かっている

翻訳されてタンパク質合成・・・とまではいかないものの、RNAだけで何らかの機能を持つものも見つかっている

 

このようなRNAノンコーディングRNAと呼ばれ、ノンコーディングRNA他のRNAに対してタンパク質への翻訳を阻害するなど、さまざまな機能があると考えられており、重要な研究分野となっている。

 

染色体と遺伝子

全ての遺伝子はDNA上に点在しているが、DNAは先述のように23個(人間の場合)の断片に断片化されている。

そしてその断片化された1つ1つが染色体を形成する。

つまり、遺伝子は23本の染色体に分散している。

 

23個の断片は大きさがバラバラだから、23本の染色体の大きさもそれぞれ違うよ!

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また、染色体には1~22番までの番号が付いている

そして23番目の染色体はちょっと特殊であり、XやYというアルファベットが振られている。

※詳しくは別記事で解説します。 

 

父母の染色体

DNAはバラバラに断片化しているが、父母のDNAはそれぞれが対になるように同じ長さで断片化する。

 

どういうことかというと、父親由来の染色体1番と母親由来の染色体1番は互いに長さが全く同じで、よって含まれている遺伝子も同じである。

父親由来の1番と母親由来の1番でペア(組)になるのだ。

 

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このようにして、相同の染色体が23組存在するのである。

 

2本で1組で、それが23組あるから・・・23×2=46で、ちゃんと46本になるね!

 

まとめ

  • ゲノムとは、ある生物が持つ全ての遺伝子1セットである

 

  • ゲノムの解析を進めることで医療の進歩などに大きく貢献する

 

  • 人間の染色体の数はゲノム1セットあたり23本である

 

  • 父親由来と母親由来のゲノムを持っているため、人間はゲノムを2セット持っており、だから実際には染色体が46本ある

 

  • 人間はDNA上に22,000個の遺伝子を持つが、それはDNA全体の10%ほどにすぎず、残り90%は何をやっているのか不明である

 

  • DNAは23個に断片化されているため、遺伝子は23本の染色体に分散している

 

  • 23本の染色体には1~22番の番号やアルファベットが振られている

 

  • 父親由来、母親由来の染色体の1番同士、2番同士、3番同士・・・は相同(全く同じ)であり、これらが2本ずつのペアが23組存在している