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細胞分裂とは何か? 人間の体はどれくらいで入れ替わる?

細胞は分裂をして増えていく。

人間の体に60兆個あるといわれる細胞は、一部を除いて日々分裂したり、死んだりして入れ替わりが起こっている。

今回は、細胞分裂について人間を例に見ていこう。

 

目次

 

 

細胞分裂とは何か

文字通り、1つの細胞が分裂して2つの細胞になることを細胞分裂という。

病気やケガをするとその部分の細胞は失われたり、死んでしまう。

だが、時間が経つと病気は治ったり、ケガをした部分は新しい皮膚ができたりして再生していく。

 

では細胞分裂はどこで行われるのだろうか。

実は、細胞分裂は病気をしたりケガをした部分で起こるのではない

細胞分裂は、分裂組織という場所で起こるのだ。

 

分裂組織とは、脳(海馬)を含めた全身に分布する細胞分裂の場である。

分裂組織で細胞分裂が起こって新しい細胞が作られ、それが必要な場所(病気やケガによって必要な細胞が失われた場所など)に移動するのである。

 

細胞周期

1つの細胞が分裂して2つになる(数が2倍になる)までには時間がかかり、この時間を細胞周期という。

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細胞周期は、実際に分裂が起こっている分裂期と、分裂が起こっていない休みの時期である間期の繰り返しである。

 

ただ、休みとは言っても、本当に何もせず休んでいるわけではなく、分裂期に向けた準備が着々とおこなわれている。

間期とは準備期間でもあるのだ。

 

分裂期以外のS期、G1期、G2期は全て間期である。

S期ではDNAの複製が行われている。

G1期はS期(DNAの複製)の準備期間、G2は実際の細胞分裂に向けての準備期間である。

 

細胞周期=細胞が分裂している時間ではなく、休みの時間も含むんだね

 

DNAの複製

DNAの複製とは、1つのDNAから全く同じDNAをコピーして作り、DNAの数を2倍にすることである。

DNAの複製は、細胞分裂の前に行われる。

 

複製のプロセス

DNAの複製は、まずDNAの二本鎖がほどけることから始まる。

ここで、分かりやすいようにほどけたDNAをそれぞれα、βとしよう。

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次にほどけて一本鎖になったDNAに、DNAポリメラーゼという物質が結合する。

DNAポリメラーゼは、まるでDNAをスキャンするようにDNA上を移動し、塩基配列を読み取っていく。

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そして読み取った塩基配列に対して相補的なヌクレオチドを結合させていく

例えば、DNAポリメラーゼはβのほうの塩基配列を「GCATA・・・」と読み取った。

 

よってポリメラーゼはこの塩基配列に対応するヌクレオチドを持ってくることになる。

αのほうも同様である。

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こうして、α、βに対応するヌクレオチドを持ってきて、再度結合させていく。

この作業を終わると、元のDNAの一本鎖と、DNAポリメラーゼによって作られた一本鎖を1組とするDNAが2つできることになる。

このように、DNAの複製は元のDNAが半分残りつつ行われていき、専門用語で半保存的複製という。

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なぜ複製をしなければならないのか

もしこの複製が行われないまま細胞分裂がされた場合、1つの細胞が2つになったのに、含まれるDNAが半分になってしまうということになる。

 

DNAは遺伝子を持っているので、細胞分裂をすればするほど細胞に含まれる遺伝子が2分の1、4分の1・・・と少なくってしまい、最終的に必要な遺伝子が細胞の中に入っていないというおそれがある

 

そのため、分裂前にあらかじめDNAの数を2倍にしてから分裂をすることで、これを防いでいるのである。

 

コラム:人間の体は日々入れ替わる!?

細胞分裂は体の至るところにある分裂組織で起こり、常に細胞が死んだり失われたりしては、新しいものに置き換わっている(新陳代謝)。

では具体的にどれくらいの期間で細胞は全て新しいものに置き換わるのだろうか。

 

そこでまず確認しておきたいのが、体にある全ての細胞が同時進行で分裂をしているわけではないことと、体の部位によって細胞分裂のペースは異なるということだ。

 

人間の体には60兆個の細胞があるが、ある細胞は分裂真っ最中である一方で、別の細胞は間期だったり、1つ1つの細胞を見るとその様子はバラバラである。

 全体として見ると常に体のどこかしらで細胞分裂が起こっているように見えるのだ。

 

そのため、ある日パッと細胞が一瞬にして全て入れ替わるのではなく、徐々に入れ替わって新しいものが増えていく。

 

さらに、体の部位によって細胞分裂のペースも変わってくる

例えば皮膚など、外部に露出して直接傷がつきやすい場所などでは、細胞分裂が盛んに行われる。

 

そういった場所では、全ての細胞が新しい細胞に入れ替わってしまうまでの周期も当然短くなる

 

以下に、人間の体の部位による細胞の入れ替わりのペースを表にしてみた。

基準となる年齢は成人くらいである。

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図はあくまで目安であり、新陳代謝のペースは個人差や、特に年齢が大きく出る

老化によって新陳代謝が悪くなるのは仕方ないことではあるが、毎日の生活習慣などによっても新陳代謝を活発にすることが可能なので、日ごろの生活には注意したい。

 

まとめ

  • 1つの細胞が分裂して2つの細胞になる(2倍になる)ことを細胞分裂という

 

  • 細胞分裂は、体中に分布している分裂組織という場所で起こる

 

  • 1つの細胞が分裂して2倍になる時間を細胞周期という

 

  • 細胞周期は分裂期とそうでない間期の繰り返しであり、特に間期ではDNAの複製が行われる

 

  • DNAの複製によってDNAの数を2倍にしてから細胞分裂が行われる

 

  • 古くなったりした細胞が新しい細胞に置き換わることを新陳代謝と呼び、体の部位によって細胞の入れ替わりのスピードは異なる