抗体とは何か? 二次応答とは何か?
免疫には段階に応じて種類があり、その中でも体液性免疫がはたらくと抗体が産生されて抗原の排除がおこなわれる。
また体液性免疫の段階からは、免疫が発動すると免疫細胞が抗体の産生情報を記憶するようになる。
今回は抗体について解説し、二次応答にも触れたいと思う。
※免疫についての基礎的な知識は以下の記事で解説しているので参考にどうぞ
目次
抗体とは何か
抗体は、体液性免疫という免疫段階で生み出される物質で、免疫グロブリンというタンパク質でできている。
↓抗体はこんな感じ
抗体を生み出すのは、B細胞という免疫細胞が分化した抗体産生細胞という細胞である。
抗体は特定の抗原に対してのみはたらき、特定の抗原と結合して複合体を作る役割を担う。
この複合体を目印に、他の免疫細胞が抗原をピンポイントで攻撃して排除をおこなう。
1種類の抗体は1種類の抗原にしかはたらかないよ!
抗体の構造
抗体は重いH鎖と軽いL鎖というパーツで構成され、可変部(結合部)とそれ以外の定常部がある。
下図は、赤い丸で囲った部分がH鎖で、青で囲った部分がL鎖である。
H鎖とL鎖が結合したものを1セットとし、さらにそれが2セット結合したものが1つの抗体となっている。
また抗体は可変部という部分で抗原に結合する。
可変部は抗原の情報に基づいて作られるため、抗体によって遺伝子構造が異なるが、定常部は抗原によって形や構造が変わることはない。
抗体と遺伝子
抗体の可変部を詳しく見ると、合計で5つの領域に分かれ、領域ごとに異なる遺伝子が入っている。
可変部の各領域に割り当てられる遺伝子の候補は複数あり、1種類が選ばれる。
例えば、H鎖のV領域(図では赤の部分)には150種類の遺伝子の中から1つが選別させて割り当てられる。
このようにして各領域に1つずつ遺伝子が割り当てられ、その組合わせで抗体が作られる。
これを専門用語で遺伝子再編成といい、おかげで侵入した様々な抗原に合わせて抗体を作ることができるのである。
繰り返すが、B細胞は分化して抗体産生細胞になり、その抗体産生細胞はたった1種類の抗体のみを作る。
B細胞が分化するということは、言い換えれば抗体に割り当てられる遺伝子が決定することを意味するのだ。
免疫記憶と二次応答
二次応答とは、同じ抗原の2度目の侵入に対して起こる免疫反応である。
1回目に抗原が侵入したときよりも、2回目に抗原が侵入したときのほうが、短時間でしかも大量に抗体が生産されているのが分かるだろう。
抗体産生細胞は目的の抗原が体内から排除されて役目を終えると、一部は破壊されずに、免疫記憶細胞という細胞になる。
免疫記憶細胞は、その抗原への抗体産生の記憶を保持したまま長期間保存される。
そのため、免疫記憶細胞が保存されている期間中にまた同じ抗原が体内に侵入すると、即座にその抗原に対する抗体産生能力を持った免疫記憶細胞が対応し、前回侵入されたときよりも強い免疫能力を発揮する。
風邪などを一度引くと、しばらくは引きにくいのはこのためである。
B細胞が分化する時間が省略されるから、短時間で抗体が作られるよ!
まとめ
- 抗体は体液性免疫の発動の際に生み出される物質で、免疫グロブリンというタンパク質でできている
- 抗体を生み出すのは抗体産生細胞という細胞で、この細胞はB細胞が分化したものである
- 1つの抗体産生細胞につき1種類の抗体が生み出され、その抗体は目的の1種類の抗原に対してのみはたらく
- 抗体は可変部で抗原と結合し、可変部は様々な遺伝子の組み合わせで作られるため、様々な抗原に対応することができる
- 同じ抗原の2度目の侵入に対してはたらく免疫を二次応答という
- 二次応答では免疫記憶細胞が即座に対応でき、1度目の抗原の侵入のときよりも強い免疫反応が起こる