心臓と血管の関わりは? 生物によって心臓の構造や血管系は違う?
血液は酸素や養分などを全身の細胞など各所に運び、再び心臓に戻ることで循環している。
その血液を全身に送るのが心臓というポンプの役割をした臓器である。
今回は血液の体内循環と、その要となっている心臓について雑学を交えながら学んでいこう。
血管系とその種類
血管系は開放血管系と閉鎖血管系の大きく2つに分けられる。
我々人間の血管系は閉鎖血管系で、開放血管系を持つのは昆虫類やエビなどの甲殻類など。
ちなみにミミズなんかも閉鎖血管系を持つよ! 外見は全く別の生き物だけどね。
開放血管系
主にエビや昆虫などの無脊椎動物が持つ血管系。
毛細血管を持たず、そのため動脈と静脈が繋がっていない。
血液は動脈から出てから拡散して全身の組織の間に染み出し、その染み出した一部が静脈に入って心臓に戻るという循環が起こる。
「開放」という名がつくのもこのためである。
閉鎖血管系の生物では、血液は基本的に血管の中を通り、細胞や組織液の間は組織液という体液で満たされている。
一方で血液が染み出す開放血管系を持つ生物では、血液と組織液の区別がつかないし、動脈血と静脈血も混ざっていたりする。
血液がリンパ液や組織液の役割を兼ねていたりするよ!
※血液や組織液、リンパ液については以下の記事で簡単に解説してます。
閉鎖血管系
動脈と静脈が毛細血管で繋がり(上図ではこれらを区別して描いてません)、血液は血管の中に基本的に閉じ込められた状態で体内を循環する。
人間を含む脊椎動物やミミズ、タコなどの頭足類がこのような血管系を持つ。
血液が血管の中にあるため、血液・組織液・リンパ液は区別しやすい。
血液の循環
我々人間の血液循環(閉鎖血管系によるもの)を見てみよう。
心臓→肺→心臓の血液の循環を肺循環といい、心臓→全身→心臓の血液の循環を体循環という。
肺循環
まず肺循環では肺動脈と肺静脈により心臓と肺が繋がっている。
その詳しいルートは心臓→肺動脈→肺→肺静脈→心臓
※分かりやすいようにかなり簡略化して描いています。
ここでちょっとややこしい話があって、肺動脈の中を流れる血液は静脈血、肺静脈の中を流れるのは動脈血となっている。
肺循環では、血管名とその中を流れる血液の名前が一致しないのだ。
どういうことかというと、動脈とは血液を送り出す血管であり、静脈とは血液が戻ってくる血管である。
そして動脈血とは酸素に富んだ血液であり、静脈血は酸素が乏しい血液である。
肺動脈は心臓から肺へ血液を送り出す血管なので動脈である。
しかし、肺動脈を流れる血液は肺でガス交換が行われる前の酸素が乏しい血液なので静脈血なのだ。
そんな訳で、肺循環では血管名とその中を流れる血液名にズレがある。
体循環
では次に体循環を見てみよう。
体循環では、血液を送り出す大動脈と戻ってくる大静脈を無数の毛細血管が繋いでいる。
ルートは心臓→大動脈→動脈→各内臓などに分布する毛細血管→静脈→大静脈→心臓
体循環では大動脈の中を動脈血が流れ、大静脈を静脈血が流れる。
酸素を豊富に含んだ動脈血は細胞や内臓など、全身の様々な場所に送り届けられ、その各所で酸素→二酸化炭素のガス交換が行われる。
ガス交換が行われると血液は酸素が乏しくなった静脈血となり、心臓に戻っていく。
ちなみに肺循環と違って血管名と血液名は一致しているので心配ご無用。
あと、肺循環だろうが体循環だろうが、心臓に繋がっている動脈と静脈は血管が筋肉でおおわれている。
特に動脈は血液が勢いよく送り出される心臓から直接のびている血管であるため、血管を補強するかのように厚い筋肉が覆っている。
一方で毛細血管には小さな穴が空いており、この穴から血液の中の血しょう成分が染み出し、組織液やリンパ液になる。
心臓
心臓は血液を全身に送り出すためのポンプの役割をしている。
以下の絵はヒトの心臓を超簡単に書いたもので、番号と矢印は血液が流れる順序を示している。
心臓は4つの部屋に分かれており、上側を心房、下側を心室という。
左心室からは大動脈が伸びており、全身に血液を送るために勢いが必要なのでこの部分は特に心臓の筋肉が分厚くなっている。
このような心臓の構造を2心房2心室と呼び、哺乳類や鳥類がこのような心臓の構造をしている。
心臓に各部屋があることで、酸素が多く含まれる動脈血と酸素が少ない静脈血が混ざらないようになっているのだ。
鳥類や哺乳類は外気温に左右されず体温を常に一定に保つことができる恒温動物であり、しかも呼吸手段は肺のみである。
体温維持には結構なエネルギーが必要で、酸素を得るための呼吸手段も1つしかないことから、代謝にあまり余裕がない。
そのため効率的に酸素を送り出すことができるよう、心臓はしっかりと部屋分けされているのである。
ちなみに、右心房や左心房などの"右"や"左"は、心臓を持つ本体から見た視点でつけられているので間違ってはいない。
あくまで心臓をもつ本体側から見ると右心房はちゃんと右になってるし、左心房は左になってるよ!
さまざまな生物の心臓
例えば魚類はこんな感じの単純な心臓のつくりをしている。
構造は1心房1心室。
魚類は鰓(えら)で血液に酸素を取り込み、全身を回ったあと、静脈血となった血液は心臓に戻りまた出ていく。
人間と違って魚類の心臓は常に静脈血が通るよ!
では今度は両生類と爬虫類の心臓を見てみよう。
両生類と爬虫類の心臓では、2心房1心室の構造になっている。
※図にはありませんが、爬虫類では心室の中央に、仕切りのようなものが出来はじめています。
この構造の心臓は動脈血と静脈血が心室で混ざってしまい、酸素と二酸化炭素の交換効率があまりよろしくない。
ただ、その代わり両生類や爬虫類の多くは肺呼吸の他に皮膚呼吸も併用しており、酸素を取り込む手段を複数持っていたりする。
※爬虫類の場合、全てがこのような心臓をしているわけではなく、例えばワニは完全な2心房2心室の構造をしています。
拍動
心臓がドクンと収縮することを拍動という。
心臓は心房→心室の順で収縮し、拍動する。
拍動は動脈にも伝わるので、動脈も拍動する。
この動脈の拍動を特に脈拍と呼ぶ。
また心臓の右心房には神経が集まって束になった部分があり、この神経から興奮などの刺激が伝わり、拍動を早めたりしている。
ちなみに最も強く拍動する部分は、全身に血液を送り出す大動脈が始まる左心室である。
心臓は私たちの胸の間、つまり中心にあるが、胸に手を当てると何だか心臓は中心よりも左か、ちょっと左下にあるように感じられる。
その理由は、心臓の拍動が最も強い部分が中心部ではなく心臓の左下の左心室であるため、まるで左側に心臓があるかのように感じられるのだ。
心拍数の不思議
一定時間当たりの拍動の回数を心拍数という。
人間の場合、1分間の拍動回数(心拍数)は60回程度で、一生のうちに約20億回拍動する。
実は生物の一生の心拍数には法則がある。
なんと、同じ哺乳類であれば人間だろうとネズミだろうと一生のうちに心臓が拍動する回数は同じなのである。
生物の寿命が短いほど心臓は早く拍動する。
人間よりずっと寿命が短いネズミは、1分あたりの心拍数が600回で、これは人間の約10倍の回数である。
拍動の速度に違いがあっても、一生のうちの拍動の回数は人間もネズミも同じくらいになるよ! 不思議だね。
まとめ
- 血管系には開放血管系と閉鎖血管系があり、人間は閉鎖血管系をもつ
- 開放血管系では血液が途中で血管を通らず全身に拡散し、閉鎖血管系では血液は血管の中を流れ続ける
- 心臓→肺→心臓の血液の循環を肺循環といい、心臓→全身→心臓の血液の循環を体循環という
- 肺循環では血管名とその中を流れる血液名が一致しない
- 心臓の構造は生物によって異なり、哺乳類や鳥類は心臓が4つの部屋に分かれている
- 心臓がドクンと収縮することを拍動といい、拍動は生物の寿命が短くなるほど早くなる傾向にある
- 同じ哺乳類であれば人間だろうとネズミだろうと一生のうちに心臓が拍動する回数はほぼ同じである