血糖値とは? 糖尿病って?
今回は、私たちの健康状態の指標の1つとなる血糖値のお話。
血糖値とは何か、どういう仕組みで血糖値が一定に保たれているのか、血糖値に異常があったらどうなるのか 、血糖値について色々学んでいこう。
※今回の記事は以下の記事もあわせて参考にしていただくと理解が深まると思います。時間がある方はぜひ見ていってください。
目次
血糖値とは?
血糖値とは、簡単に言えば血液中に含まれるグルコース(糖)の量である。
正常な人であれば血液100mlあたり100mgくらい。
この値は様々な要因で多少変動し、その大きな要因の一つが食事である。
血糖値は食前であればやや低くなったり、逆に食後であればやや高くなるのだ。
食べ物を通して糖を摂取するから、当然食後は血糖値が上がるよ!
血糖値とホルモン
血糖値は様々な要因で変動するが、高すぎても低すぎても体が不調になってしまう。
そのため、血糖値はなるべく一定に保たれる必要がある。
では具体的に血糖値を一定に保つためにどこが何をしているのかというと、まず血液中の糖の量の変化を間脳の視床下部が認識する。
それから間脳は体の各部にはたらきかけ、ホルモンを分泌させることで血糖値をコントロールしている。
血糖値を上昇させる仕組み
体の血糖値が大きく下がってしまったとき、体は何とかして血糖値を上げようとする。
そうした事態で活躍するのが、アドレナリン、グルカゴン、成長ホルモン、チロキシン、糖質コルチコイドの5種類のホルモンだ。
アドレナリンとグルカゴン
アドレナリンとグルカゴンは共に神経を介して指令が伝わり、作られるホルモンである。
血糖値の低下を感知した間脳の視床下部は、交感神経を使って副腎、膵臓にホルモンを作るよう指令を出す。
交感神経を通して指令が伝わると、副腎の副腎髄質という場所ではアドレナリンが分泌される。
一方、膵臓では、A細胞という細胞からグルカゴンが分泌される。
アドレナリンとグルカゴンは分泌されると血流に乗って肝臓へ行く。
これらのホルモンにより、肝臓で蓄えられているグリコーゲンをグルコースに変える化学反応が促進され、血糖値が上昇する。
副腎は腎臓の上にちょこんと乗ったような形であるよ!
成長ホルモンとチロキシン
成長ホルモンはペプチドホルモンの一種であり、チロキシンはアミノ酸ホルモンの一種である。
間脳は神経を介して指令を出すだけではなく、下垂体に対して成長ホルモン放出ホルモンを分泌し、このホルモンによって刺激を受けた下垂体により、成長ホルモンが分泌される。
※下垂体は前葉と後葉という領域からなっていて、前葉からホルモンが出ます。
さらに間脳は、同時に甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンも分泌し、刺激を受けた下垂体は甲状腺刺激ホルモンも分泌する。
甲状腺刺激ホルモンはその名の通り甲状腺を刺激し、結果甲状腺からはチロキシンが分泌される。
※甲状腺は喉を通る気管に覆いかぶさるようにしてくっついています。
なんだか○○ホルモン刺激ホルモンとかややこしいね・・・
糖質コルチコイド
糖質コルチコイドはステロイドホルモンの一種で、副腎皮質にて作られる。
間脳は副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンを分泌し、これを下垂体が受け取る。
下垂体はさらに副腎皮質刺激ホルモンを出し、このホルモンにより刺激を受けた副腎皮質が糖質コルチコイドを作る。
糖質コルチコイドは血糖値が低下してしまった際のホルモンの最終手段とも呼ばれる。
それは、糖質コルチコイドはタンパク質を分解して糖に変える反応を促進するホルモンだからだ。
タンパク質は筋肉のもとであり、この反応が続くと筋肉がだんだん減ってしまうのだ。
血糖値を低下させる仕組み
血糖値を上げる場合とは逆に、血糖値を下げなければならないときはインスリンというホルモンが大活躍する。
インスリンは血糖値を下げることのできる唯一のホルモンである。
膵臓のB細胞という細胞である。
同じ膵臓でもグルカゴンが作られるのはA細胞にてだったね!
インスリンが分泌されると、全身の細胞がグルコースを細胞内へ取り込もうとし、さらに肝臓ではグリコーゲンの合成が促進される。
血糖値に異常があると?
血糖値は高すぎても低すぎてもだめである。
今回は一度は聞いたことがあるor経験したことがある有名な病気や症状について書いていく。
低血糖
私自身も低血糖になって苦しんだことが何度かあるが、血液中の血糖値が低すぎる状態になると、自律神経に異常が出るため、手足の震えや動悸、発汗、非常に強い空腹感などの症状が出る。
空腹が長時間続いたときや、激しい運動を長時間行ってその後に何も摂取しなかった場合などに起こる。
普段は昼食を食べてるのに突然抜いたりするとなったりするね。不規則な食事には注意しよう。
糖尿病
血糖値が高いまま戻らなくなり、腎臓で再吸収されずに尿として排出されてしまう。
これを糖尿病といい、I型とII型がある。
腎臓は、体にとって不要なものは尿として体外に排出させ、一方で体に必要な物質は体内に戻している(再吸収)。
糖は体のエネルギーになる物質なので、体から尿として排出してはいけないものである。
しかし腎臓の再吸収にも限界があり、血液中の糖の濃度が高すぎると、必要な物質であっても尿として排出してしまう。
糖尿病を発症すると、やたら疲労感を感じるようになり、喉が非常にかわきやすくなる。
エネルギーとなる糖を排出してしまっているから疲れを感じるし、高い濃度の糖を尿で排出しようとして水分を欲し、喉がかわくのである。
I型糖尿病
I型の糖尿病は、インスリンが一切分泌されなくなってしまうことで起こる。
患者は若年層に多く、その原因はウイルス感染である。
インスリンを体内で作れなくなってしまうので、インスリン注射などが欠かせなくなってしまう。
インスリンを分泌する膵臓のランゲルハンス島B細胞がウイルスに感染すると、免疫機能によって細胞がウイルスと一緒に排除されてしまう。
つまり、I型糖尿病は自己免疫病の一種でもあるのだ。
※自己免疫病については以下で簡単に解説しています。
II型糖尿病
II型では、インスリン自体は作られるものの、そのインスリンが上手く機能していないタイプの糖尿病である。
例えば壊れたインスリンを作っていたり、正常なインスリンを作っていても、それを受容する細胞の受容体の形がおかしいため、作用しない場合などがある。
糖尿病患者の9割以上がこのII型糖尿病で、生活習慣が原因だったり、遺伝的要因で発症する。
コラム:なぜ血糖値を下げるホルモンはたった1つ?
どうして血糖値を上げるホルモンは5つもあるのに、下げるホルモンはインスリンしかないの?
血糖値に対するセーフティーネットは、下げることよりも上げることに偏っている。
それは生物にとって、血糖値が過多である状態よりも不足している状態のほうが重大な問題であるからだ。
血糖値の不足している状態とは、言い換えれば飢餓状態でもある。
人類がまだ野生で生活していたころは食べ物は必ずしも豊富ではなかったし、飢餓への対策が体に備わっていなければならなかった。
しかし、現代では飢餓の問題は以前よりも少なくなり、飲食で容易にしかも沢山の糖分を摂取できるようになって、終いには摂取しすぎる者まで出てきた。
すると、今度は手薄であった血糖値を下げるための体の機能が問題になってくる。
食生活の変化によって、本来は血糖値を上げるために厳重な対策をしていた体であったが、血糖値を下げることに対して手薄であることが逆に問題になってしまったのである。
まとめ
- 血糖値とは、簡単に言えば血液中に含まれるグルコース(糖)の量である
- 血糖値は様々な要因で変動するが、私たちの体はホルモンを分泌することによって一定に保っている
- 血糖値を上昇させるホルモンはアドレナリンやグルカゴンなど5種類あるが、低下させるホルモンは1種類のみである
- 中でもインスリンは血糖値を低下させる唯一のホルモンである
- 血糖値は高すぎても低すぎても体に不調が起こり、低血糖や糖尿病などがある