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葉緑体を持たない生物の光合成とは?

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光合成といえば植物、葉緑体といえば植物・・・と、光合成は植物の専売特許と思われがちだ。

しかし、植物以外にも光合成をする生物がいて、しかも彼らは葉緑体を持っていない。

さらに驚くべきことに、中には光すら使わずに有機物を作れる生物までいる。

今回は、様々な生き物の有機物合成について見ていこう。

 

 ↓光合成については以下の記事をご参考あれ。

inarikue.hatenablog.com

 

目次

 

 

光合成と細菌

光合成とは光を利用して生きるために必要なエネルギーを作り出すことだ。

光合成をする生物の最も身近な例は植物であるが、光合成は植物以外にも葉緑体を持たない一部の細菌類がおこなうことが知られている

光合成をすることができる生物が必ずしも葉緑体を持っているとは限らないのである。

 

植物以外で光合成ができる生物とは、光合成細菌シアノバクテリアという2種類の細菌だ。

両者はどちらも光合成ができ、両者の違いはそれぞれが持つ光合成色素の違いによって区分されている。

※両者は総称です。

 

光合成細菌

バクテリオクロロフィル光合成色素として持ち、光合成をおこなう細菌類。

緑色硫黄細菌紅色硫黄細菌などがいる。

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https://ja.wikipedia.org/より。写真は緑色硫黄細菌

 

光合成細菌は、水がある場所であればどこにでも存在する可能性があるよ!

 

光合成細菌は光を吸収し、硫化水素二酸化炭素を材料に光合成をおこなう。

その結果、硫黄有機ができる。

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シアノバクテリア

クロロフィルa光合成色素として持つ細菌類。ユレモネンジュモがいる。

 

シアノバクテリアはかなり古い時代から存在していて、現在でも当時の姿をストロマトライトという形で観測することができるよ!

 

シアノバクテリアは光を吸収し、二酸化炭素を材料に光合成をし、酸素有機を生成する。

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ここで、シアノバクテリアによる光合成で注目すべき点は、材料として水を使っていることだ。

なぜ注目すべきなのかというと、水を使うことで最終的に有機物と一緒に酸素が合成されるからである。

 

上の光合成細菌と比べてみると、光合成細菌は水じゃなくて硫化水素を使っていたから、最終的に酸素ではなく硫黄が一緒に合成されているね!

 

実は、シアノバクテリアはまだ地球上に酸素が十分に存在しない大昔の海で誕生し、上記の光合成をおこなって海に豊富な酸素をもたらした

そして酸素が豊富になったことで、様々な生命が誕生するきっかけにもなった。

 

あと、シアノバクテリア植物の葉緑体のもとになった生物と言われていて、共生説っていう説が唱えられているよ!

 

光を利用しない有機物合成

自力で栄養(有機物)を作ることができる生物独立栄養生物という。

植物も独立栄養生物の一種であり、光合成をすることによって栄養を得ている。

しかし、生物の中には光すら必要とせずに、有機物を合成できる独立栄養生物がいる。

 

それらは化学合成細菌と呼ばれる生物たちである。

彼らがおこなう代謝は光を使わない。

そのため光合成とは呼ばず、化学合成と呼ばれる。

 

化学合成細菌

化学合成細菌は、化学エネルギーを利用して無機物から有機物を合成する生物たちだ。

彼らは化学物質を体内に取り込み、酸素と反応させ、その際に生じるエネルギーを利用している。

 

例えば硫黄細菌

硫化水素からエネルギーを得ている。

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他には、亜硝酸硝酸菌も化学合成細菌の一種だ。

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化学合成細菌たちは化学合成によって化学エネルギーを作った後、カルビン・ベンソン回路という、有機物合成のための回路に送り、有機物を作っている。

 

コラム:化学合成細菌の誕生

化学合成細菌は大昔の海で誕生した原始的な生物でもある。

彼らは光がなくとも有機物を作れるので、光がまだ地球に届かなかった頃の海や、そもそも光が届かない海底などで生きていくことができた

現在、光が届かないような海底でも生態系が存在するのは彼らのおかげでもあるのだ。

 

ところで、海の底には熱水噴出孔という、地下を流れるマグマによって熱せられた水が吹き出している場所がある。

熱水は何百度もある高温で、しかも周りは光が届かない海底という極限の環境である。

 

しかし、この熱水噴出孔付近にも生物が存在し、例えばハオリムシは、巨大なミミズのような、ややグロテスクな姿をした生き物だ。

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(Photo: Charles Fisher) - Microfauna–Macrofauna Interaction in the Seafloor: Lessons from the Tubeworm. Boetius A PLoS Biology Vol. 3/3/2005, e102 

http://doi:10.1371/journal.pbio.0030102

 

別名チューブワームとも呼ばれるこの生き物は、硫黄細菌と共生していることが知られている。

彼らは細菌から有機物をもらい代わりに熱水噴出孔から出た熱水から取り込んだ硫化水素を細菌に与え、極限環境の中を生きている。

 

彼らは光を利用しなくてもエネルギーを作れるからこそ、こうした極限環境を生き抜くことができるんだね!

 

まとめ

 

  • 特にシアノバクテリア光合成にて酸素を使うことで、地球の生命史に大きな影響を与えた

 

  • 自力で栄養を作ることができる生物を独立栄養生物と呼ぶ

 

  • 光を使わずに、化学エネルギーを利用して有機物を生成することを化学合成という

 

  • 化学合成は硫黄細菌亜硝酸などの化学合成細菌がおこなっている

 

  • 化学合成細菌は生きるために光を必要としないなどの性質から、海底のような極限環境でも生きることができる