翻訳とは何か? コドンって?
生物がタンパク質を作る際に、DNAの転写が行われたあとには翻訳という作業が行われる。
この翻訳はただ適当にされているわけではなく、どうやらルールがあって、それにはコドンというものが深く関わっているらしい・・・。
今回は、翻訳について少し詳しく見ていこう。
↓タンパク質合成のプロセスに関しては、過去に簡単に解説しています。今回はその中の翻訳について詳しく見ていきます。
目次
リボソーム
タンパク質の合成の第一ステップは、まず細胞の核内でDNAの情報がコピーされ、mRNAが作られる。
作られたmRNAはその後、核に空いた小さな隙間(核膜孔という)から核外に出て、リボソームへと向かう。
翻訳はこのリボソームで行われる。
リボソームとは、細胞質中を浮遊していたり、小胞体の壁面に付着している物質で、核酸とタンパク質が結合したシンプルな複合体である。
リボソームを構成する核酸を特にrRNA(リボソームRNA)と呼び、特別なRNAが入っている。
↓翻訳の前段階である転写については以下の記事で解説しています。
翻訳のルール
翻訳はmRNAが持つDNAのコピー情報から実際にタンパク質を作っていくプロセスである。
mRNAはリボソームと結合して翻訳を行うが、その際には以下のルールがある。
①翻訳の開始地点と終了地点は決まっている
②翻訳には方向性があり、決まった方向に向かって翻訳がされていく
①について、mRNAと結合したリボソームは、まるで商品のバーコードをスキャンするかのようにmRNAの塩基配列を読み取っていく。
塩基配列はA・U・G・Cの4種ががバラバラに並んでいるが、読み取っていったときに、もしAUGという順の並びがあったらそこから翻訳を開始する。
この、AUGという配列を、翻訳を開始するという意味で開始コドンと呼ぶ。
開始コドンがなければたとえ他の塩基配列があっても翻訳は始まらないということになる。
ところで、決まっているのは開始場所だけではない。
翻訳が終了する場所も実は決まっており、UAA・UGA・UAGのいずれかの配列が出てきたら翻訳は終了することとなっている。
このように、翻訳の終了を示す塩基配列を終止コドンと呼ぶ。
無限に翻訳されるわけじゃないんだね
②に関しては、翻訳はmRNAの5'側から3'側に向かって行われていく。
DNAには方向性があり、それをコピーして作られたmRNAにも方向性がある。
どこからでも適当に翻訳できるわけではないのだ。
tRNA
翻訳が始まり、塩基配列が読み取られると、その配列に応じたアミノ酸が運ばれてくる。
具体的には、塩基AGU、AAAのように塩基3つごとに1つのアミノ酸が運ばれてくる。
つまり塩基配列は、アミノ酸を指定する暗号のようなものなのだ。
しかし、塩基配列を読み取ったからといっても、アミノ酸が勝手にやってくるわけではなく、別の核酸がアミノ酸を運んでくる。
このアミノ酸を運んでくる核酸をtRNA(トランスファーRNA)という。
アミノ酸を持ってきたtRNAはmRNAと結合し、アミノ酸を整列させるのである。
ちなみに、さっきの開始コドンのAUGが読まれると、メチオニンというアミノ酸を運ばれてくるよ!
※tRNAの「t」は英語の"transfer"の略で、"輸送する"という意味の単語です。
コドンとアンチコドン
いきなり開始"コドン"とか終止"コドン"って出てきたけど、コドンって一体なんなの?
アミノ酸は塩基が3つ並ぶごとに1つ運ばれてくる。
例えばAUG、AAAのように、塩基が3つ並んだ配列をトリプレッドと言い、mRNA上のトリプレッドをコドンと呼ぶのだ。
つまり、mRNA上の3つの塩基配列=1コドンである。
例えば、下図のmRNAの塩基配列には4つのコドンが存在している。
そして、先ほど説明したtRNAはアンチコドンと呼ばれるという配列を持っている。
アンチコドンとは、特定のコドンに対する相補的な配列で、"アンチ"は"反対"を意味する。
例えば、GACというコドンがmRNA上にあれば、そこにアミノ酸を持ってきて結合するtRNAはCUGというコドンを持っている。
DNAと同じように、RNAでは、AはU、GはCとそれぞれ結合するっていう性質があったよね!そしてそれを難しく表現すると、「相補的」って言うんだったよね!
このようにして、運ばれてきたアミノ酸は次々と隣のアミノ酸と結合していき、途中折れ曲がって立体構造を作ったりして、さらにそれがいくつも集まってタンパク質を作っていく。
まとめ
- 翻訳とはDNAの遺伝情報をコピーしたmRNAから実際にタンパク質を作っていく過程である
- 翻訳は核外のリボソームという小器官で行われる
- リボソームはタンパク質とrRNAのみで構成されたシンプルな複合体である
- 翻訳は、開始コドンと呼ばれる塩基配列からスタートし、5'から3'方向にかけて進む
- mRNA上の3つの塩基配列をコドンと呼ぶ
- tRNAは、コドンに応じたアミノ酸を運んでくる役割を持つ
- tRNAはコドンに対するアンチコドンを持っており、それをもってmRNAと結合する