生きるものに魅せられて

自然・生物の知識を分かりやすく発信するブログ

刺胞動物とは何か? クラゲとポリプの違いとは?

f:id:inarikue:20191129212339j:plain

聞きなれない言葉かもしれないが、刺胞動物とは何だろう?

実は刺胞動物はクラゲやイソギンチャクが所属している動物群で、その所属メンバーは奇妙なものから危険なものまで多種多様だ。

今回は刺胞動物について見ていこう。

 

 

目次

 

 

刺胞動物とは

刺胞動物とは、刺胞動物に属する動物の総称で、世界で10,000種以上が確認されている。

体のつくりによって、刺胞動物は大きくヒドロ虫類、鉢虫(はちむし)類、箱虫類、花虫類の4つのグループに分けることができる。

 

f:id:inarikue:20191130143456p:plain

この動物群の代表的種といえばクラゲ・イソギンチャク・サンゴ・ヒドラなどである。

サンゴやイソギンチャクは花虫類に属しているが、クラゲやヒドラは多様で、ヒドロ虫類、鉢虫類、箱虫類に属するものがいる。

特にクラゲに関しては刺胞動物に分類されていない種類もいる

 

また、刺胞動物ほとんどは海産(海に生息)だが、淡水に生息するものもごく一部にいる

 

ヒドロ虫類

ほとんどの種はその生活環(一生)にポリプ期とクラゲ期の両方を持っている
3,200種が確認され、一部汽水種やマミズクラゲのような淡水種もいる。

 

熱帯魚などを飼っていた方で、水槽に突然ヒドラがわいた経験がある方もいるだろう。

あれはヒドロ虫類に属するヒドラであり、しかもヒドラはほとんどが海産なので、淡水性のヒドラは実は珍しい

 

箱虫類

数十種が知られるのみの小さなグループで、生活環にはポリプ期とヒドラ期の両方をもつ。

このグループに属するものたちの特徴の1つとして、ポリプがクラゲになる際、ポリプは変態をして直接クラゲになり、しかもクラゲになったあとのポリプの抜け殻的なものが残らない

 

どういうことかというと、他のグループの刺胞動物たちはポリプからクラゲになる際、いくつかの段階を経て変態をし、クラゲになる。

その際、クラゲになるために必要のないものは分離して別に残るのだが、箱虫類に属しているものたちはそれを残さない

 

昆虫がサナギから変態して成虫になったとき、その抜け殻が残らないのと同じようなものかな?

 

またこのグループに属するクラゲたちは、触手に非常に強い毒を持っているものが多い

アンドンクラゲハブクラゲなどが代表例で、日本近海でも刺される事例があり、かなり危険なクラゲである。

 

鉢虫類

200種ほどが属しているグループで、全て海洋性の生物である。

種数はそこまで多くないが、極地から熱帯、そして表層から深さ3,000mまでの深海にも生息するため、分布は広い

私たちがよく知っているクラゲも多くがこのグループにいる。

 

ミズクラゲアカクラゲ、タコクラゲ、エチゼンクラゲなど、聞いたことがある名前のクラゲが沢山いるグループだよ!

 

花虫類

f:id:inarikue:20191130155222p:plain

イソギンチャクサンゴが属するグループであり、刺胞動物最大のグループでもある。

その種数はなんと6,200種で、全て海産である。

 

このグループは、体のつくりによってさらに細かく分類されており、八放サンゴ類(亜綱)六放サンゴ類(亜綱)の2種類に分けられている

 

ちなみにこのグループにはクラゲ期がない

 

クラゲとポリプの違い

 

クラゲだのポリプだのヒドラだの、ややこしいよ!

 

用語を少し整理してみよう。

まず、刺胞動物が岩や海底で固着生活を営むためになったすがたをポリプという。

だからヒドラやイソギンチャク、サンゴは、単体あるいは無数のポリプの集合体である。

 

一方で、固着生活をやめ、海中を遊泳しやすいすがたになった状態をクラゲという。

クラゲとは生物名でもあり、刺胞動物のある状態を示す名称でもあるのだ。

 

つまり、種類にもよるが刺胞動物にはポリプ状態の時期と、クラゲ状態の時期がある

例えばクラゲは、クラゲ期とポリプ期の両方も持つ典型例である。

彼らは海の中を漂うクラゲ期にオスとメスが有性生殖を行い、ポリプの時期には無性生殖で子孫を残すという、面白い生態をもっている。

 

ポリプ=クラゲの赤ちゃん ではないので注意しよう!

 

ちなみに、たとえクラゲであってもポリプ期がクラゲ期よりもかなり長かったり、クラゲ期が長くてポリプ状態を見つけるのが困難な種類がいるなど、種によって多様な生活を送っている。

 

体の特徴

刺胞動物であるクラゲやイソギンチャクをイメージすると、体が非常に変わった形をしていて、触手まであるし、まるで地球外生命体であるかのように思われがちだ。

しかし彼らは進化の本道に沿っている。

 

外見上、目や鼻といった分かりやすい感覚器官は見当たらないものの、筋肉・神経・消化器を持ち、刺激に対しても反応する

ただし、神経は網のように体全体に点在しているのみで、脳や脊髄のような神経がまとまった中枢がないため、複雑な処理はできないとされる。

 

また消化器である胃はあるものの、胃に繋がる入り口が一つしかなく、よって肛門がない

つまり口が肛門を兼ねており、摂取した食べ物も排泄物も同じ口で出入りする

 

神経にしろ、肛門にしろ、不完全って感じだね。

 

放射相称

まず、彼らは放射相称という体の形をしていることである。

放射相称とは、生物の体の中心軸に対して、総称な面が3つ以上あるものを指す。

 

例えば、棘皮動物ウニヒトデは総称な面が5つあるから、「五放射相称」なんて言ったりもするよ!

 

刺胞

次に共通して見られる特徴は、「刺胞」である。

刺胞は分類名にもついているように、刺胞動物最大の特徴である。

 

f:id:inarikue:20191130144432p:plain

刺胞動物刺細胞という細胞の中に刺糸と呼ばれる有毒の糸のようなものを持っている。

この刺糸は圧力などの特定の刺激を受けると素早く発射し、獲物を捕らえたり、身を守るのに役立っている。

 

クラゲなど、種類によってはこの刺糸の表面に螺旋状の小さな棘がついているものがあり、一度刺すと抜けにくい構造になっている。

 

刺胞動物はかなり危険な生物もいるから、磯に遊びに行ったときや遊泳して遊ぶときは気を付けよう・・・!