性別はどのように決まる? 性染色体って?
生まれてくる子供がオスになるか、あるいはメスになるかはどのようにして決まっているのだろうか。
どうやら、染色体の受け継ぎ方のパターンにその秘密があるらしい。
今回は生物の性決定についてお話しよう。
目次
ヒトの染色体
染色体は大きく分けて2種類あり、それが常染色体と性染色体である。
常染色体は相同染色体(互いに同形同大の染色体同士)がペアになっているものをいう。
この染色体は全部で22組あり、ヒトの染色体46本のうち44本が常染色体である。
また、1~22の番号がついている。
そして残り1組2本の染色体は性染色体と呼ばれ、この染色体によって性別が決定する。
性染色体には番号ではなく、XまたはYというアルファベットがついている。
こうして、44本の常染色体と2本の性染色体で、合わせて46本の染色体をヒトは持っている。
性の決定の仕組み
ヒトを含め、生物は両親からどのような性染色体を受け継いだかによって性別が決まる。
両親から1本ずつ、計2本の染色体を受け継ぎ、それらがペアになるのだ。
例えば、ヒトの場合、両親からX染色体を受け継いだとき、子は女子になる。
あるいは、母親からX染色体を、父親からはY染色体を受け継いだときには子は男子になる。
つまり、ヒトの女性はX染色体を2本持っており、男性は性染色体をXとYを1本ずつ持っている。
ヒトの性決定と遺伝子
ヒトを含めた哺乳類の場合、Y染色体の上に睾丸決定遺伝子という遺伝子が乗っている。
睾丸決定遺伝子は男性ホルモンの分泌を促す遺伝子で、この遺伝子が働くとオスになり、働かなければメスになる。
だから、仮にY染色体に乗っているこの遺伝子を破壊して機能させないようにすれば、全てメスになるというわけだ。
後述するが、鳥類はW染色体の中に個体をメスにする遺伝子があると考えられている。
鳥類の場合、それが破壊されると全てがオスになるというわけだ。
つまり、ヒトを含む哺乳類はメスが基本形で、大して鳥類はオスが基本形である。
ヒトにとってのオス、鳥類にとってのメスは実はバリエーションの1つなのだ。
↓染色体やら遺伝子やらがちょっと分からない方はこちらの記事も参考にどうぞ
特異な性決定
ヒトなど、有性生殖を行う生物の減数分裂では相同染色体の組み換えという現象が起こり、相同染色体同士がくっついて一部の遺伝子を交換したりする。
この組み換えが起こるのは性染色体も例外ではない。
しかし、性染色体での組み換えが起こるとき、Y染色体上にある睾丸決定遺伝子を相手のX染色体に渡してしまうことがある。
すると、子に受け継がれた染色体がXXだった場合でも、通常は女になるはずが、男になってしまう。
XXのうち片方にY染色体上にあるはずの睾丸決定遺伝子が乗ってしまっているからだ。
では、こんなことになってしまったら胎児は死んでしまうのかというと、そうでもない。
むしろ、こうなる人は600人に1人くらいの確率でいるとされ、外見も完全に男になって育つ。
また、精液を作ったり射精をすることも可能である。
ただ、あくまで精液を作ったり射精ができるだけで、精子を作る能力はないとのことで、無精子症になってしまう。
つまり、子供を作ることができなくなるため、"XXを持ちながら男性"という特異さは一代限りで終わってしまう。
このような現象はマウスなどには見られない。
また、時として性染色体の組合せそのものに異常が起こる場合もある。
例えば、何らかの原因で性染色体がXXXやXXY、Yのみになる人がいる。
XXXは超女性、XXYは間性、Yしかない人は超男性と呼ばれ、特に超男性の場合は気性が荒くなることが多いという。
他にも、XYにも関わらず女性になってしまうパターンもある。
これは、睾丸遺伝子がって男性ホルモンが分泌されているにもかかわらず、それを受容する部分が異常をきたしており、結果、ホルモンを受容できずに体が完全に女性になる。
体つきや性器も普通の女性と同じものに育つが、子宮は作られないため、生理が起こらない。
両性具有にも見えるが、ヒトの性決定は全体で決まるものなので、基本的に体の半分が男性でもう半分は女性だとか、性器だけが異性のものになるといった両性具有は存在しない。
様々な性決定
生物によってその性別が決まる仕組みは微妙に異なる。
ここでは、いくつかの性決定の様式をご紹介しよう。
雄ヘテロ型
両親から異なる性染色体を受け継ぐとオスになるパターン。
このとき、性染色体はXとYの2種類のアルファベットを使って表す。
この雄ヘテロ型には、XYでオスになるパターンと、性染色体をX1本のみ受け継いでオスになるパターンの2種類がある。
XY型・・・XYでオスになる。ヒトやショウジョウバエが例である。
XO型・・・両親のどちらか一方からX染色体のみを受け継ぐとオスになるパターンで、トンボやバッタがこのタイプである。XOの"O"は"オー"と読むが、片方がゼロという意味である。
雌ヘテロ型
両親から異なる性染色体を受け継ぐとメスになるパターン。
このとき、性染色体はWとZの2種類のアルファベットを使って表す。
この雌ヘテロ型には、ZWでメスになるパターンと、性染色体をZ1本のみ受け継いでメスになるパターンの2種類がある。
ZW型・・・ZWでメスになる。ニワトリ(鳥類)やカイコウガが例である。
ZO型・・・両親のどちらか一方からZ染色体のみを受け継ぐとメスになるパターンで、ミノガなどがこのタイプである。ZOの"O"は"オー"と読むが、片方がゼロという意味である。
このように、有性生殖を行う生物は、染色体によって性が決まることものがいる。
しかし、染色体ではなく、別のものに影響を受けて性が決定する生物たちもいる。
それがワニなどの爬虫類だ。
例えば、アカウミガメは発生環境の違いで性が決定する。
具体的には、発生時の温度によって決まる。
どういうことかというと、卵を28℃以下で温めると全て孵化するのはオスになり、28~30℃の条件ではオスとメスの両方が生まれ、30℃以上の高温で温めると全てメスになる。
つまり、オスになるかメスになるかは遺伝的に決まっているわけではないのだ。
実はこのような生物は沢山いる。
例えば魚類では、オスとメスが厳密に決まっていないことが多く、生後性転換を行ったりして柔軟に性を変える。
カクレクマノミは群れで一番大きな個体がメスに性転換するし、ソードテイルというメダカの一種はメスからオスへ性転換することが知られている。
まとめ
- 染色体には常染色体と性染色体の2種類がある
- ヒトは常染色体を1対のペアで22本持ち、性染色体を2本持っており、合計46本である
- 性染色体は番号ではなくXとYというアルファベットで表す
- 男性はX染色体とY染色体を1本ずつ、女性はX染色体を2本持っている
- 例外的に、XXでも男性になったり、XYでも女性になったりすることがあり得る
- 爬虫類や魚類など、染色体に関係なく性別が決定したり、性転換をおこなう生物もいる