キンブナの飼育法~キンブナを飼ってみよう!
今回はキンブナの飼育について語る。
私は8年以上キンブナの飼育を続けており、そこから得た経験や、加えて書籍を数冊読んで得た知識も加えて本記事を執筆した。
キンブナ飼育を考えている方の1つの参考例になれば幸いである。
目次
基本データ
【種名】
キンブナ
【学名】
Carassius buergeri subsp. 2
【英名】
不明
【分類】
コイ目 コイ科 フナ属
※亜種や亜科は省略しています
【大きさ】
最大でも15cm程度
【生息地】
日本固有種(東北地方、関東地方)
- 流れが遅い池や沼などに生息
- 水面付近よりも底付近にいる
【寿命】
10年
飼育に必要な設備
今回解説していく飼育法は、フナを屋内の水槽の中で飼育することを前提としている。
その前提の中での最低限必要な設備は以下の3つ。
①水槽とその蓋
②ろ過装置
③エアレーション
↓日淡魚を飼育する上で共通して必要になる設備や、考えるべき事項は下記の記事にまとめております。
フタつきの大きめの水槽を用意する
キンブナを終生飼育するのであれば、幅60センチ以上の水槽で飼育しよう。
キンブナはフナの中では小型種なので、大きくなってもせいぜい15センチほどにしかならない。
しかし、だからといって45センチ以下の小型の水槽で飼育するのは推奨しない。
また、フナは結構跳ねる魚であるため、水槽には必ずフタをすることを忘れてはならない。
水槽を買うとき、フタがセットになっている場合となっていない場合があるので、セットになっていなければフタは別途購入して必ず設置してほしい。
※フタは自作しても大丈夫ですが、大きくなったフナは力があるので重さや強度には注意して設計してください。
ちなみに私の場合は60×45×45のワイド水槽で飼育している。
フィルターは水槽に合ったものを
キンブナはやや大きくなる魚なので、フィルターは水槽の大きさに合ったものを使ってしっかりとろ過をおこなってほしい。
ろ過装置の種類は、基本的に上部フィルターか外部フィルターを設置するだけで大丈夫。
ろ過が心配!1台じゃ不安!過密気味!という人は、それぞれの事情に応じてろ過器を2台設置したり、サブフィルターを導入すれば良い。
なお、私はいつもフナの飼育には上部フィルターと水作エイトM(投げ込みフィルター)を導入してろ過をしている。
ろ過は生体を長期飼育する上で超重要だから、手を抜かないようにね!
↓ろ過装置の種類や長所短所などは以下の記事のろ過装置の項で解説しています。
エアレーション(ブクブク)の目的と方法
魚は大きければ大きいほど、そして水槽内が過密であるほど、水の中の酸素の消費量が大きくなる。
特に水温が上がる夏場は魚が酸欠になりやすくなるので注意だ。
※水温が上がると水中に溶けこむ酸素の量が少なくなるためです。
また、キンブナは水面よりも底面を遊泳するため、水槽の底にもしっかりと酸素を届けたいのでエアレーションはぜひ行ってほしい。
そこで、エアレーションをする方法はいくつかあって、以下の3つが代表的である。
それぞれの事情に応じて選択してほしい。
①エアストーンを使う
②投げ込みフィルターを使う
③上部フィルターを使う
エアストーンはただエアレーションのみを行うためのもので、一方で上部フィルターや投げ込みフィルターはエアレーションだけではなく、ろ過が期待できるスグレモノだ。
私は上部フィルター+投げ込みフィルターでろ過とエアレーションを同時に行っている。
なお、エアレーションをする目的は、酸素を水中に溶けこみやすくするだけではない。
水を攪乱して水槽内に完全な止水域ができてしまうことを避けたり、また故障などでろ過装置が突然止まってしまった場合も、水を攪乱し続けてくれる。
例えばエアレーションを、水作エイトなどの投げ込みフィルターでやっておけばろ過補助やいざというときの保険にもなるのでオススメだ。
その他
今や水槽用品は沢山あるので、あれもこれも挙げていけばキリがない。
そこで、いくつかピックアップして簡単に解説しておこうと思う
- ヒーター
結論から言うと、私が長年フナを飼育してきてヒーターを使用したのは1度だけで、通常通りの飼育であれば不要であると思われる。
キンブナは日本に生息する魚なので、温度変化や低温には強い魚であるからだ。
ただし、魚が病気になってその治療のために水温を管理しなければならないときや、冬でも最低限の温度を保ちたいときはヒーターがあって良いと思う。
- 病気治療薬
キンブナは丈夫な魚だが、病気になることもあるし、意外にケガをすることが多い。
特に性格が非常に臆病なので、驚いて跳ねたり、水槽の壁や石、流木に激突したり体をこすってしまうことが本当によくある。
※長年飼育していても、ぶつかったりして鱗が剥がれちゃうことが今でもたまにあるくらいです;
経験上、フナはケガで体が傷付くと、そこから悪化して病気になってしまうことが何度かあった。
というわけで、魚の病気治療薬は何種類か常備しておいて損はない。
病気にもよるが、メチレンブルー、グリーンFゴールドの2種類があれば足りると思う。
キンブナは薬浴しても大丈夫な魚なので、病気を見つけたり、ひどいケガをしてしまった場合はちゃんと薬浴させてあげよう。
水質と底床の話
キンブナのような日淡魚は、水質は中性~弱アルカリ性で飼育することが好まれる。
しかし、キンブナに関しては水質の適応範囲が広いので、普通に飼育するのであればそこまでシビアになることはない。
ところで、水槽の下には何を敷けばいいのか迷うことも多いが、キンブナの飼育では
- そもそも何も敷かない(ボトムタンク)
- 砂利(大磯砂のミディアムサイズ)
- 砂(田砂や津軽プレミアム)
のどれかを選択することになるだろう。
個人的に管理が楽なのはボトムタンクや砂利(大磯砂)だと思う。
レイアウトや見た目を意識するならば田砂などの砂が良いのだが、掃除にちょっとコツがいるし、普通に掃除をしていると徐々に掃除ホースに吸い込まれていくので減ってくる。
長期管理をするなら大磯砂を敷いておくのが安定というのが個人的な意見だ。
底に砂利や砂を敷くと、そこは水槽の汚れを分解してくれるバクテリアの良い棲み処となる。
特に大磯砂は管理が楽な上に、使い込んだ大磯砂は宝と言われるほど。
さらに、大磯砂は水の硬度を少し高める効果があり、中性~弱アルカリ性で飼育されることが好まれる日淡魚には相性がバツグンである。
ちなみに、ソイルは推奨しない。
ソイルは水質を酸性に傾けるし、キンブナは餌を砂などと一緒に口に入れて余計なものだけ吐き出すといった摂食スタイルのため、ソイル自体がすぐダメになるからだ。
餌の話
餌は、市販で売られている川魚の餌で大丈夫。
金魚の餌でも何でも食べてくれる。
フナは基本的に沈下性の餌を与えると食べてくれやすいが、飼育に慣れると浮遊性の餌も水面に来て食べるようになる。
ただ、何でも食べるとは言ってもバランス良く給餌してあげよう。
餌には植物性のものと動物性のものがあるが、私は7:3くらいで植物性の餌をあげている。
ちなみに書籍によると、自然界では肉食寄りの雑食・・・であるらしい。
植物性の餌を多めに与えているが、それが原因で問題になったことはない。
↓餌の話は以下の記事でまとめています。
混泳やキンブナの性格あれこれ
少し前にもちらっと述べたが、キンブナはかなり臆病な魚。
自然界でも単独行動ではなく他の魚に混じったりして群れている姿がよく見られる。
そのためかフナは混泳してもあまり問題を起こさない魚で、金魚(和金系)、タナゴ類、ドジョウ、モロコ、モツゴ、その他日淡類など、フナを捕食したりしない魚であれば大丈夫。
つまり、魚同士の混泳は問題は少ない。
ただ問題があるとすれば、大食漢のため、底にまかれた餌を根こそぎ食べてしまうことだ。
同居魚にドジョウやツチフキといった底物がいればそれらに餌が回らなくなる可能性がある。
給餌の時はちゃんと全ての魚に餌が回っていることを確認し、場合によっては別水槽で飼育することになるかもしれない。
他の生体では、エビ類は危ないかもしれない。
コケ取り生体として有名であるヤマトヌマエビやミナミヌマエビは、フナが小さいうちは大丈夫かもしれないが、大きくなると捕食される。
ちなみに私の水槽ではヤマトもミナミも1ヶ月ももたない。
貝類に関しては、ひっくり返ったりしない限りは大丈夫。
ヒメタニシや石巻貝を入れていたが、問題は特になかった。
あと、フナは単体で問題を起こすことが多い。
非常に臆病という性格のため、水槽から飛び出したり、壁に激突したり、流木などに体をこすって怪我をして病気になったり、そういったトラブルのほうが多い。
特に導入して水槽に慣れるまではひどいので、そういうときは土管などで隠れ家を用意して対策する必要がある。
↓マドジョウ
↓タナゴ類。上がキタノアカヒレタビラ、下はタイリクバラタナゴ。
水草レイアウトはできる?
キンブナがいる水槽で水草を育て、レイアウトしたいならば、アヌビアス系をオススメする。
というか、それ以外はかなり難しいと思う。
近年のアクアリウムの傾向では、どうやら自然を意識した水草レイアウトが好まれるようだ。
しかし、キンブナを飼育するのであればそのようなレイアウトを実現させるのはかなり難しい。
まず、フナは水草が好きでめちゃくちゃ食べる。
ネットではその丈夫さから"神"などと呼ばれているマツモやアナカリスも1週間もすれば丸裸にされる。
浮き草も好きらしく、アマゾンフロッグピットも我が家ではすぐにやられた。
水草を食べた次の日はすごい綺麗な緑色の糞をしてくれるので見物かもしれないが笑
あと、前にもちらっと述べたが、フナは底の砂や砂利を口に入れて餌だけを食べるというスタイルであり、常に底を掘り返している。
そのため、地に根を張るタイプの水草はたとえ周りを石で囲ったりしてもまず抜かれる。
植えるタイプの草はダメ、柔らかい水草もダメとなると、キンブナの水槽に入れられる水草は相当限られ、条件を満たすのはアヌビアス系くらいしかない。
ただ、それも時間の問題で、だんだんコケて汚くなってくる。
経験上、枯れはしないが茶色い草は見ていてあまり気持ち良いものではない。
前の項で述べたように混泳の問題でコケ取り生体も制限されている状況である。
どうしても水草を入れるのであれば、水草の種類はアヌビアス系にして、コケ取り生体を貝中心にするという方法が良いだろう。
ムギツクに似ている熱帯魚であるサイアミーズ・フライングフォックスをヒーターとともに導入する手もなくはない。
では、楽しいキンブナライフを!
長生きするから大事に育ててね。
参考文献
中坊徹次/編・監修 『日本魚類館』 小学館
斉藤憲治/文 内山りゅう/写真 『くらべてわかる淡水魚』 山と渓谷社
松沢陽士/著 『川魚の飼育と採集を楽しむための本』 学研教育出版