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さつまいもとじゃがいもの違いとは? 似て非なるイモの雑学

じゃがいもは英語でpotato、さつまいもは英語でsweet potatoと言う。

しかし両者は同じイモであり、ポテトでありながら実は遠い種だ。

今回は、そんなイモの雑学を提供しよう。

 

目次

 

 

同じ"ポテト"でも全く異なる植物

両者は家庭菜園レベルでも比較的簡単に育てることができる。

また、栄養も豊富であり、お菓子や煮物など様々な料理にも使える必須のイモ類だ。

だが、両者にはいくつかの決定的な違いがある。

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分類上では結構遠い種同士

さつまいもとじゃがいもは、まず分類からして異なっている

それに従えば、彼らは兄弟というよりも遠めの親戚だそうだ。

 

さつまいもはアサガオなどの仲間

さつまいもは  ナス目  ヒルガオ科  サツマイモ属  に属する植物である。

アサガオヒルガオと同じグループに属する。

 

じゃがいもはナスの仲間

一方のじゃがいもは  ナス目 ナス科 ナス属 に属する植物だ。

だから、さつまいもとじゃがいもは似てそうで実は少し遠い種なのだ。

 

 

さつまいもとじゃがいもは分かったけれど・・・じゃがいもってナスなの?

 

 じゃがいもとナスは兄弟的な関係

じゃがいもの分類を見ると、やたらナスナス付いているのが分かる。

ちなみにナスも ナス目 ナス科 ナス属 に属する植物だ。

つまり、じゃがいもとナスは兄弟のような関係であり、じゃがいもはさつまいもよりもナスに近いのである。

 

でも、じゃがいもとナスって全然似てないような・・・。

 

写真で見比べてみよう

じゃがいもとナスはスーパーに並んでいる限りは当然ながら全く似ているようには見えない。

では、ここでじゃがいもとナスの花を見てみよう

 

まずはじゃがいも

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ナス

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 じゃがいもとナスの花が結構似ていると思わないかい?

 

では、さつまいもの花も見てみよう。 

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え・・・アサガオの改良種か何かですか?

 

花の形を見てみると、さつまいもがヒルガオ科に属していること、一方でじゃがいもはナス科に属していて、ナスと似ていることがよく分かったと思う。

 

生物学的分類のカラク

なぜ、さつまいもとじゃがいも、そしてナスはこのような分類になっているのだろうか。

理由は、植物の分類では花の構造が重視されるからである。

 

つまり、じゃがいもとナスは可食部である野菜としての姿が全く似ていなくても、花の形や構造が似ているから同じ科や属に分類されているのだ。

 

食用としている部分も違う

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 さつまいもはの一部が太ったものであり、一方でじゃがいもはの一部が太ったものである。

つまり

 

さつまいも・・・を食用としている。

じゃがいも・・・を食用としている。

 

のである。 

 

共通点はデンプン!

さつまいもとじゃがいもは確かに遠い種ではあるが、同じイモ類であることに変わりはない。

また、両者はデンプンを多く含んでいることが共通している。

 

デンプンを多く含んでいると、加熱調理などをした際、デンプンがビタミンCを保護し、重要栄養素であるビタミンCが損なわれにくいという多大なメリットがある。

 

特にジャガイモはイモ類の中でも多くのビタミンCを含むため、このメリットはとても大きいのである。

 

焼いたりしても栄養素が変質しにくいところが、野菜としての両者の強みである。

 

サツマイモはたとえ石焼き芋にしたとしても、ビタミンCがあまり損なわれないよ!

 

 ※じゃがいものビタミンCはじゃがいもを放置しておくと約2か月で半分程度に減少してしまう。

しかし、じゃがいもをスライスして放置しておくとなぜかビタミンCが増え、2日でピークに達し、その後減少するという面白い特性がある。

 

おまけ:じゃがいもの紆余曲折

じゃがいもはかなり長い栽培歴を持ち、それは9000年以上にものぼる。

原産は南アメリカであるが、世界中に広まる第一歩は、南アメリカからスペイン人によって持ち帰られたことだ。

 

しかし、持ち帰られたじゃがいもは、当初研究者たちによって「トリュフの一種」と見なされ、植物ではなくキノコの仲間という扱いだったそうだ。

 

植物であることは後に気付かれたものの、有毒だとか、男性の○玉だとか、媚薬だとか、悪魔の食べ物だとか散々な評判であったらしい。

 

その後は相次ぐ飢饉に対する食糧や家畜の飼料としての地位をだんだんと確立し、一般家庭の食卓になければならないようになったというわけだ。

 

今自分たちが当たり前に食べている野菜にも、さまざまな紆余曲折があったんだね。

 

最後に

 さつまいもとじゃがいも、記事を書く私も知ることが多くて、楽しみながら書けたと思う。

本やインターネットからさまざまな情報を集めて吟味して、まとめるという作業は大変ながらも楽しい。

 

もうしばらくは、野菜系の雑学が続きます。

今回もご覧くださり、ありがとうございました!

 

参考文献、サイト

森昭彦/著 『身近な野菜の奇妙な話』 SB Creative

 

新じゃがは栄養豊富でビタミンC含有量はレモン1個分│NEWSポストセブン

 

参考論文

大羽和子「貯蔵、切断および加熱調理に伴うジャガイモのビタミンC含量の変化」(『日本家政学会誌』Vol.39 No.10 pp.1051~1057、1988年)