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目の働きとは? どのような構造をしている?

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多くの生物は目を持ち、それによって外の世界を捉える。

その形や色、見える世界も様々で、目は生物を特徴づける一つのアイデンティティーでもある。

今回は目の機能や構造、仕組みについて解説していこう。

 

目次

 

目の役割と構造

目は視覚を司る感覚器官の一つで、光を取り込み、視神経を通して脳に見たものの情報を伝えている。

 

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目 - Wikipedia

Author:by Rhcastilhos (translated by Hatsukari715). And Jmarchn -Schematic_diagram_of_the_human_eye_en.svg

 

角膜:目の最前部にある透明な膜で、眼球を保護している。

瞳孔網膜に当たる光の量を調節する。

水晶体:形が両凸レンズの形をしている。網膜に映る像のピントを合わせる

虹彩眼球に入ってくる光の量を調節する。カメラでいうと"絞り"の役割をする。

毛様体筋肉(毛様体筋)によって水晶体の厚さを調節する。

硝子体:内側から網膜を支え、眼球の形状維持や、光を網膜にまで届ける

網膜物体の像が結ばれる場所で、光やその色、形を感じ取る。

視神経:網膜に集められた光を、外界から得た情報として信号に変換して脳に伝える

 

ものが見える流れは、まず光は一番最初に角膜を通過する。

次に、虹彩が入ってくる光の量を調整し、毛様体などによって水晶体の厚さを変えてピントを合わせる

その後、光は硝子体を通過し、網膜に当たって映像となり、視神経を通ってに伝えられる

 

2種類の視細胞

私たちがものを見ることができるのは、眼球の奥の網膜という部分にある視細胞が光をとらえ、それを信号として脳に送るからである。

この視細胞には大きく分けて錐体細胞桿体細胞があり、これら2つの細胞なしでは目を語ることはできない。

両者は含有成分が異なっており、そのために役割も大きく異なる。

 

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錐体細胞

錐体細胞は含有成分としてフォトプシンというタンパク質を含み、円錐みたいな形をしているためこう呼ばれる。

 

まず、錐体細胞色を識別することができる細胞である。

錐体細胞十分な光のある環境下で働き、細胞ごとに特定の色に反応する。

 

含有成分であるフォトプシンには種類があり、このフォトプシンの違いによって感じとることができる光の色が異なる

例えばヒトは、赤(560nm)青(420nm)緑(530nm)の光に反応する3種類錐体細胞を持っている。

※生物によっては赤と青の錐体細胞しか持っていなかったり、鳥類や爬虫類は4色に対応したものを持っていたり、紫外線を見ることができる生物もいます。

 

では橙色や黄色や水色といった色はどうやって見えているのかというと、赤・青・緑の3色の組み合わせによって見えている。

 

桿体細胞

桿体細胞は含有成分としてロドプシンというタンパク質を含み、のような形をしているためこう呼ばれる。

 

桿体細胞は錐体細胞に比べ、光の明暗をよく感じとることができる。

実は、錐体細胞は明るい場所でないとうまく働かず、そのため私たちは暗い部屋では物体の色を見分けることができない。

 

その点、桿体細胞は色は見分けることができないものの、弱い光の環境下でも働く高感度の視細胞である。

つまり、暗い場所でも徐々に目が慣れ、色は分からずとも、ものがどこにあるかくらいは把握できるようになるのは、錐体細胞のおかげである。

 

このように、明るい場所では錐体細胞が積極的に働いて色を識別し、暗い場所では桿体細胞がわずかな光をも感じ取って視野を確保する。

両者がうまく相互に働くことによって私たちは外の世界を認識できるのである。

 

コラム:ヒトにはなぜ紫外線が見えないのか?

ヒトに限らずだが、一般的に多くの哺乳類は紫外線を見ることができない

ヒトが目で見ることができる光を可視光線と呼ぶが、紫外線はその範囲外にあるのだ。

その一方で、鳥類や爬虫類、昆虫といった生物たちは多くが紫外線を見ることができる

 

なぜなのかな?紫外線って浴びすぎると有害だし、見えたほうが良いんじゃないかな?

 

実は、多くの哺乳類は、紫外線を視認する能力や、一部の錐体細胞を進化の過程で失ったと考えられている

 

哺乳類は爬虫類の一部のグループが進化したものであり、現存の爬虫類や鳥類の多くが紫外線を視認できる能力を持つ一方で、哺乳類の多くはそのような能力を持たない。

そう考えると、進化の過程で性質を失ったと推定するのが妥当なのであろう。

 

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恐竜がまだ地上を闊歩していた時代では、 哺乳類の先祖たちは昼に活動する恐竜を避けるために、夜間に活動していた。

そのため、紫外線を見る機会が少なくなり、それを受容する錐体細胞などの一部の視細胞が退化してしまったと考えられている。

例えば、メガネザルなどの原始的な猿類を原猿類と呼ぶが、このグループの猿は赤と青を受容できる錐体細胞しか持たず、赤と緑の識別ができないとされている。

多くの哺乳類はこのタイプで、身近な動物であるウマやウシ、ネコなども色の識別能力が弱いことが知られている。

 

先に、ヒトは赤・青・緑の3色を受容できる錐体細胞を持つと説明した。

猿の祖先は、上記のような理由で赤と青の錐体細胞しか持たなかったが、一部が突然変異によって緑を認識できる錐体細胞を獲得した。

それが人類の祖先であり、結果、現在のヒトは3色の錐体細胞を持つに至ったのだと推定されるのだ。

 

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まとめ

  • 目は視覚を司る感覚器官の一つで、光を取り込み、視神経を通して脳に見たものの情報を伝えている

 

  • 私たちの目にものが見える流れは、角膜虹彩水晶体硝子体網膜視神経である

 

  • 特に網膜にある視細胞が光をとらえ、それを信号として神経を介して脳に送っている

 

  • 視細胞には錐体細胞桿体細胞2種類がある

 

  • 錐体細胞明るい場所でしか働かないが、色を識別できる能力がある

 

  • ヒトは赤・青・緑の3色を識別できる錐体細胞を持っており、それ以外の色はこれら3色を組み合わせて視認している

 

  • 桿体細胞は、色は識別できないが、暗い場所やわずかな光でも働く

 

  • 哺乳類は紫外線が見えず、緑色を識別できない動物が多いが、これは進化の過程でこれらの能力を失ったためと推定されている