『生命科学の冒険―生殖・クローン・遺伝子・脳』を読んで
今回の一冊は『生命科学の冒険―生殖・クローン・遺伝子・脳』という本だ。
この本は地元の図書館で借りたんだけれど、なかなか面白かった。
そこで、今日は「生命科学とは何か」ということも混ぜながら、本の感想を述べていこうと思う。
生命科学の冒険―生殖・クローン・遺伝子・脳 (ちくまプリマー新書)
- 作者: 青野由利
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/12
- メディア: 新書
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生命科学とは?
生命科学って、実ははっきりとした定義があるわけじゃない。
そんな生命科学を簡潔に言うと、生命現象を研究する学問だ。
文部科学省のライフサイエンスの広場というところには以下のような記述がある。
ライフサイエンスは生物が営む生命現象の複雑かつ精緻なメカニズムを解明することで、 その成果を医療・創薬の飛躍的な発展や、食料・環境問題の解決など、 国民生活の向上及び国民経済の発展に大きく寄与するものとして注目を浴びている分野です。
要は生命の仕組みなどを研究し、それを人類のさらなる発展に役立てるということだ。
生命科学は生命を研究する学問であるから、医学や薬学、生物や農学など、様々な学問領域にまたがっていることになる。
具体例としては遺伝子操作やクローン技術が有名だね。
生命科学の全く知識がない人への優しい入門書
本書は、生命科学って何ぞや?っていう人や、文系の人、高校で生物を学習しなかった人でも気軽に読める一冊だと思う。
自分も文系で高校で全く生物をやっておらず、予備知識なしでスラスラ読めた。
難しい言葉はかなり噛み砕いて分かりやすく説明されているし、途中変な数式が出てくることもない。
ES細胞とか、クローン技術とかDNAとか遺伝子よく分からんから簡単に本読んでかじっておきたいっていう人にはオススメかな。
※本書は2007年出版なので古い情報もあるから、グーグル先生を併用しながら読み進めるべし。
生殖技術は誰のため?
世の中には子供が欲しいのに、様々な理由で「自然妊娠」で自分たちの子供を授かることができない人たちがいる。
だが、ひと昔前まではどうしようもなかったことが、生殖技術の発達により、選択肢は増えた。
体外受精や人工授精、代理母出産なんていう言葉はよく耳にするようになった。
しかしそういった目覚ましい進歩が問題を引き起こす。
それは大事に育てることは当たり前として、生まれてきた子供をどう扱うかという問題である。
第三者の精子などの提供を受けてできた子供に後にどう説明するか、また生まれてきた子供の法的地位などの法整備が不十分なところがあるのだ。
子供は第三者や代理母の存在を知ってどう思うのか、これは親が子供の立場になって勝手に推測することしかできない。
生殖医療の現場ではたとえ生まれてくる前であれ子供も立派な当事者だということを忘れてはならない。
クローン技術でも真の意味での"クローン"は作れない
「クローン技術」って聞くと、何だか怖いイメージがあるよね。
実際、初めてクローン技術を用いて生み出された羊が公表されたとき、
ヒトラーのクローンが誕生するのではないか?
フセイン大統領が自分のクローンを作るように科学者に命じた。
などというウワサやジョークが流れたらしい。
クローン技術は自分のコピーを作るものだが、それはあくまで遺伝子上での話であって、人格をもコピーするものではない。
つまり、見た目は全く同じであるが、性格など細かい点でやはり差異が生じ、100%同じものにはならないのだ。
一卵性双生児として生まれた子たちは事実上のクローンかもしれないが、二人を同一人物として扱う人はいないのと同じだ。
終わりに~ 生命を操作するということ
生命科学は日進月歩であり、これからも人類に革新をもたらしたり、多大な貢献をするのだろう。
しかし、例えばクローン技術は安全面だったり、倫理面での衝突があるなど、問題は山積しているように思われる。
将来誰もが望むように子供を産むことができるようになるかもしれない。
しかもその子供は遺伝子的に優秀で、スポーツ万能だったり、音楽や美術などの芸術分野で類稀な才能を持っている子供だ。
誰もが、いつでも、そして遺伝子面で選択的に子供や自分のコピーを作ることができるとしたら・・・。
一人の人間のステータスとして、経済力や職業の他に、「遺伝子」なんていう項目が追加されるかもしれない。
周りが優秀や天才ばっかりになったら、どうなるのだろうか。
それとも、みんなが優れた能力を手にしたら、天才という概念がそもそもなくなるかもね。
クローン技術という言葉にちょっと怖いイメージがあるように、我々はやはり生命を操作することに何か恐怖があるのではないか。
こうした「恐怖」という感覚は大切にすべきものだし、「ヒトの受精卵は〇〇という条件や分野でしか使わない」など徹底的なルール作りをしていかなければならない。