ラムサール条約とは? 日本の登録湿地、いくつ言える?
ラムサール条約に登録されている湿地の数は2018年地点で世界1832ヶ所、日本52ヶ所である。
そのうちみなさんはいくつ言えるだろうか?
今日は生態系保全の知識には欠かせない、ラムサール条約について簡単にまとめてみた。
目次
どんな条約?
超簡単に言ってしまえば世界中の湿地に関する国際条約。
正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。
この条約が採択されたイランのラムサールという都市にちなんで一般的にはラムサール条約と呼ばれている。
日本では2018年10月に葛西海浜公園(東京都江戸川区)と志津川湾(宮城県南三陸町)が新たに登録されている。
日本の登録湿地
ラムサール条約と条約湿地−日本の条約湿地−(https://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/2-3.html)より
※最新2か所は未記載。
なぜ国際条約なのか
ラムサール条約では、水鳥を食物連鎖の頂点とする湿地の保全をうたっている。
しかし、水鳥の仲間は渡り鳥が多く、渡り鳥といえば国境関係なく広い範囲を移動する。
そのため、特定の地域のみで湿地に関するルールを決めたとしても、水鳥がどこかへ飛んで行って地域から出てしまえば適用外になってしまう。
だから、ある国の法律ではなく、ある一国と一国同士の条約でもなく、国際条約という形での世界的な取組みが必要だったのだ。
目的は水鳥、対象は湿地
琵琶湖。日本で有名なラムサール条約の登録湿地の1つ。
ラムサール条約では水鳥(渡り鳥)の保護が目的だが、これは、水鳥そのものを保護して育てたりするという意味ではない。
保全の対象は湿地である。
水鳥そのものを保護したところで、移動先、繁殖先となる湿地の環境が保全されなければ意味がない。
だから、水鳥の重要な生息地である湿地を保全することで、水鳥を守っていこうというものなのだ。
「湿地」を広く解釈
ラムサール条約は水鳥を目的とし、湿地を対象している。
では、ラムサール条約でいう具体的な「湿地」とは何かというと
水田は人間が作ったものだし、サンゴ礁に渡り鳥って行くの?イメージないなあ。
実はラムサール条約では「湿地」を広く解釈している。
また、水鳥を強調しているものの、水鳥が向かう場所だけではなく、水棲生物の生態系がある場所も全てひっくるめて湿地を保全対象としている。
そういう意味でラムサール条約は一歩進んだ条約なんだね!
賢明な利用とは?
釧路湿原(北海道)
ラムサール条約では湿地の賢明な利用を定めている。
この「賢明な利用」とはどういう意味だろうか。
そもそもこの条約では湿地を広く解釈しているうえに、目的である渡り鳥は国境を越えて様々な場所に移動する。
つまり、世界のかなり広い範囲の湿地が保全対象になってくる。
すると、例えばある人々が普段利用している水田が、ある日突然保全対象になってしまい、利用に制限がかかってしまうことが起こり得る。
湿地付近に暮らしている人たちの生活も考えなきゃいけないんだね。
そこでラムサール条約では、ある程度の湿地の利用を可能としている。
生態系を維持しつつも、農業や漁業、観光など、湿地からの恩恵を受けることを認めているのだ。
つまり賢明な利用とは、そこに住む人間の生活を守り、同時に湿地の生態系を維持し、両立をはかって全体を守っていこうという意味なのである。
まとめ
- ラムサール条約は正式名称を「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」という。
- その目的は水鳥の保護であるが、対象は湿地である。
- ラムサール条約では湿地を広く解釈し、さらに水鳥を強調しつつもあらゆる生物が生息する湿地を保全しようとするものであり、その点で前進的である。
- 賢明な利用とは、人間の生活と湿地の生態系の保全の両立をはかりながら全体を守っていこうという意味である。
終わりに
琵琶湖、釧路湿原、阿寒湖・・・日本のラムサール条約の登録湿地、いくつ言えただろうか?
ちなみに私は上記の3つのみ。
湿地を広く解釈し、さらに湿地に生息するあらゆる動植物を守ろうとするラムサール条約。
サンゴ礁や、人間が作った水田までもが対象になっているのは初耳で、記事を書いていて私自身も非常に勉強になっている。
自然保護や環境問題を考える上ではぜひ前提知識として入れておきたいし、これを知らずに環境保護は語れない。
ラムサール条約に登録された日本の湿地巡りなんかもいいかもね。
旅行としても、勉強としても。
参考文献、サイト