外来生物とは? 外来生物法ってどんな法律?
日頃世間を騒がせる外来の生物たち。
えっ?と思うかもしれないが、ワカメが国際自然保護連合(IUCN)が定める「世界の侵略的外来種ワースト100」に掲載されている現実。
今日は外来生物とはそもそも何か、そして外来生物法について簡単に解説する。
目次
そもそも外来生物って?
外来生物とは、人間の活動を原因として、本来の生息地ではない場所から移入された生物のことである。
原因はあくまで「人間の活動によるもの」であるので、例えば渡り鳥や海流にのって漂着してきたものは外来生物ではない。
また外来生物は日本に限った話ではなく、当然日本からアメリカに侵入した種もアメリカから見れば外来種になる。
同種であっても外来生物?
繰り返すが、外来生物とは本来の生息地ではない別の生態系から移入された生物である。
※写真はタイリクバラタナゴという、外来種のタナゴ。
例えば関西地域に生息するタナゴを、関東でそのタナゴと同種のものが生息する地域に移動させた場合も、関東ではそのタナゴはたとえ同種であっても外来生物になる。
外来生物は「種」ではなく、「遺伝子」レベルで区別されるからである。
たとえ全く同じ生物でも、育った場所や環境が違えば遺伝子が若干異なったりするよ!
侵略的外来生物
外来生物の中でも侵入した地域の生態系に大きな影響を与えてしまう外来生物を特に「侵略的外来生物」と呼ぶ。
日本ではよく見られるコイが、アメリカでは侵略的外来種扱いされてるケースもあるよ!
ブラックバスとも呼ばれるオオクチバスは、日本では超メジャー外来生物。
写真にあるように、見た目よりも口がかなり大きく開き、あらゆる魚や昆虫を食い荒らす。
外来生物法
外来生物法は生態系を脅かす外来の生物を規制する国内法である。
正式名称は「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」。
この法律の目的は、生物の多様性の確保などを通じて国民の生活の安定の向上に資すること。
規制となる対象は?
規制となる対象は特定外来生物である。
特定外来生物とは、侵略的外来生物に含まれ、特に外来生物法が特に指定している生物であり、2018年地点で148種ほどいる。
また、規制の対象されるのは特定外来生物そのものだけではなく、その生物の卵や種子、体の器官も全てである。
どのような規制がされるの?
特定外来生物に指定された生物は飼育、栽培、保管、運搬ができなくなる。
何らかの取り扱いをしたらもうアウトなんだね。
知らなかった・知っていたで済む話ではないので、外来生物を扱う際には、その生物がただの外来生物なのか、それとも規制の対象となっている外来生物なのか、しっかりと事前に調べる必要がある。
飼育は絶対に不可能?
特定外来生物の飼育は原則禁止だが、規制の対象となる前から飼育している個体は規制されてから6か月以内に許可(届出)を出すことによって飼育が継続できる。
しかし、許可がおりるのはその個体のみであり、その個体から繁殖させて新しく生まれたものは飼育ができないので注意。
規制後にどうしても飼育したい場合は、学術研究や展示の目的など、限定的な条件でのみでの飼育が可能であり、愛玩(ペット)目的の飼育はできない。
捕獲は可能
釣りやガサガサをしていて、特定外来生物を偶然捕獲してしまうことはあるだろう。
外来生物法では捕獲を規制していないのだが、捕獲してから家に持ち帰って飼育するとアウトなので注意(そもそも捕獲したとしても運搬がNG)。
捕獲は可能だから釣りはOKだよ。でも、釣ったらその場で逃がすかシメないとだめだよ!
※その場でシメて(殺して)から家に持ち帰って食べるのはOK。
詳しくは環境省のQ&A | 日本の外来種対策 | 外来生物法で。
外来生物、侵略的外来生物、特定外来生物の違い
外来生物だの侵略だの特定だのわけが分からなくなってきた・・・
外来生物、侵略的外来生物、特定外来生物など、ちょっと名前がややこしいので解説しようと思う。
分かりやすいように図示してみた。
冒頭で述べた通り、人間によって本来の生息地でない場所から移入させられた生物が外来生物(外来種)である。
その外来生物の中でも、特に移入先の地域の生態系に大きな影響を与える種が侵略的外来生物である。
さらに侵略的外来生物の中でも特に深刻な影響を与える種を、外来生物法で「特定外来生物」として指定し、法的な規制対象としている。
まとめ
- 外来生物とは、人間の活動を原因として、本来の生息地ではない別の生態系から移入された生物である。
- 特定外来生物に指定された生物は、生きたままの取り扱い(飼育、運搬、栽培など)が原則できなくなる。
- 特定外来生物は捕獲や釣りをすることは可能だが、運搬ができないので、その場で殺すか、逃がさなければならない。
最後に
この記事では淡々と外来生物の解説や法律などを書いてきたが、最後に大切なことを確認しておく。
それらは、外来生物と呼ばれる彼らは「ただ生きているだけ」ということである。
外来生物=悪ということは決してない。
これまで述べてきたように、外来生物とは、その移入先の生態系に影響を与え、環境を激変させうる力をもつ生物たちである。
しかし、日本で当たり前に見られるコイがアメリカでは侵略的外来生物として槍玉に挙げられているように、規制される外来生物はその地域の生態系に脅威をもたらすかどうかという基準で決まる。
しかもその外来生物を持ち込んだのは人間である。
私たちは外来生物を憎んだり殺戮することよりも、どう上手く付き合っていくかをひたすらに模索し続けなければならない。
参考文献、サイト