何もないところからどうやって草原や森林ができていくの?
どの地域にどのような植物が生育するかは、気温と降水量で大きく決まる。
気温は高いけれども雨が降らない地域や、雨は降るけれど寒冷な地域など、地球上には様々な気候の土地がある。
そうした中で森林はどのようにしてできていくのだろうか?
目次
森林ができるまで
一般的に、陸上であれば何もない土地から森林形成までの流れは
裸地→コケ植物や地衣類→草原→低木→陽樹の高木林→陽樹と陰樹の混合林→陰樹の高木林
という流れで森林が出来上がる。
最初は不毛な更地だったとしても、条件が整えばそこにコケが生えたり、それが長い年月をかけて草原や森林になったりする。
このように、最初に何もなかったところから植物が芽生え、コケ→草原→森林などに変化していくことを専門用語で遷移という。
何もない土地から植物が遷移をすることによって森林ができていく。
※状況よっては、コケなど飛ばして何もない土地にいきなり草が生えたりもする。
また、降水量と温度によっては木がうまく育たず、草原で遷移が終わってしまう場所もある。
遷移
http://terakoya-seibutsu.hatenablog.com/より引用。
遷移は大きく分けて2種類あり、陸上における遷移(乾性遷移)と水中における遷移(湿性遷移)がある。
- 陸上における遷移では、裸地(全く何もない土地)から出発し、草原などを経て最終的に森林になる。
- 水中における遷移では、何もない湖沼から出発し、最終的に湿原や森林になる。
そして、上記のように何もない裸地や湖沼から始まる遷移を特に一次遷移と呼ぶ。
陸上における遷移(乾性遷移)
陸上において、何もなかった土地から森林ができるまでの流れを見ていこう。
まず、"全く何もない"土地を裸地と呼び、ここから一次遷移が始まる。
"全く何もない"と強調したのには理由があって、一次遷移が始まる裸地というのは本当に何もないのである。
どういうことかというと、植物が根を張るだけの土壌すらない状態である。
一次遷移における"何もない"裸地とは、単なるその辺の空き地ではなく、火山の噴火によって火山灰や溶岩が降り注ぎ、土壌自体が破壊されつくしてしまった土地を指す。
一次遷移は特に溶岩の塊がゴロゴロしているような裸地から始まるんだね。
最初はコケから
土壌すら破壊され、まともに根が張れない土地から植物など育つのかと思う方もいるだろう。
でも大丈夫で、こうした土地ではまず根を張らなくても生育できるコケ植物や地衣類が生えてくる。
彼らは時間をかけて成長するとともに、岩石を砕いたり、枯死したものが積もり、土(土壌)を作っていく。
※地衣類
カビとシアノバクテリア(光合成ができる細菌)が共生し、塊状になったもの。
カビが水分を集め、シアノバクテリアがそれを使って光合成をし、エネルギーを与えることで共生関係が成り立っている。
草原の形成
先駆者であるコケ植物や地衣類たちによって土壌ができてくると、いよいよ根を張ることができる植物たちが(ススキなど)進出してくる。
草原の形成である。
根を張る植物たちは、その根でさらに岩石を砕き、また、積極的に光合成をおこなう。
さらに彼らの死骸もまた堆積し、土壌の養分となる。
こうして土壌がどんどん厚く、肥沃になっていくと、木が生育できるようになり低木が生えてくる。
そして森林へ
低木が増えていき、中には枯死して倒れ、これがまた土になる。
このようなことを繰り返すうちに、だんだんと高木が生育できるようになってくる。
ここからの森林形成の流れは、陽樹林→混交林→陰樹林という流れである。
陽樹と陰樹
木には陽樹と陰樹がある。
陽樹は強い光のもとではぐんぐんと効率的に光合成ができ、成長スピードも速い。
対して陰樹は、陰になって光が当たりにくくなっても少しずつ成長できるが、陽樹よりも成長スピードは遅い。
アクアリウムで水草を育てたことがある人は陽性水草と陰性水草でイメージできるね。
遷移において陽樹と陰樹が同時に進出した際、当然陽樹のほうが成長スピードが速いので、まずは陽樹が高木になる。
すると、初めは陽樹を中心とした高木林(陽樹林)が形成される。
一方で、陰樹はゆっくりながらも確実に成長していき、最終的に陰樹の高さに追いつく。
かなり時間をかけて陰樹が陽樹に追いつくと、陽樹と陰樹が混ざった高木林(混交林)が形成される。
だが、こうしてだんだんと木々が生い茂ってくると、木が木に重なって陰になってしまったりすることが起こる。
すると、陰ができてしまったほうが陽樹だった場合、陽樹は光合成ができなくなり、最終的には枯死してしまう。
陽樹は光が当たっているときこそ効率よく成長できるが、一度光が当たらなくなれば枯れてしまうのだ。
このようにして、木々が生い茂るほどに陽樹は成長しにくくなり、陽樹と陰樹が混ざり合っていた混交林は最終的に陰樹のみが生き残り、陰樹林になる。
陰樹林になると、これ以上の遷移は起こらず、言い換えると陰樹林が遷移の最終形である。
こうして、陽樹林→混交林→陰樹林という流れで森林が完成する。
森林の安定と破壊
遷移は最終的に陰樹林で終わると述べた。
つまり、森林は陰樹林になるとこれ以上遷移が起こらない安定期に入ると言える。
しかし、いくら遷移が起こらないといっても絶対に安定というわけではない。
山火事や台風、冬季の雪崩など、災害に見舞われたり、アクシデントが起こったりするのだ。
森の中の空間
山火事で木が焼けたり、台風で木が倒されたりすると、広大な陰樹林の中にポツンと、そこだけ穴が空いたような木のない空間ができる。
すると、この木のない空間からまた新しく遷移が始まる。
これを二次遷移という。
木のない空間がもし小さければ、周囲の木によってすでに空間が陰になってしまっていたりするのでまた陰樹が生えてくる。
一方で、木のない空間が巨大であれば、十分に光が当たる空間ができるので、そこには陽樹が生えてくる。
このように森林は時々起こる災害などに見舞われながら、陰樹が生えたり、陽樹が生えたり、あるいは倒れたり、死んだりを繰り返していくのである。
最終的には陰樹林になるって話だったけれど、陰樹がずっと一人勝ちというわけではないんだね!
生えている木が違えば、そこに集まる動物たちも異なる。
陰樹のみで形成された森林には、そこに相性の良い動物しか集まらない。
山火事や台風は森林の一部を破壊することで、むしろ森林を多様なものにしていく。
※一次遷移と二次遷移の違い
一次遷移と二次遷移の違いは、遷移開始地点での土壌の違いである。
二次遷移は山火事や台風による倒木、伐採などのあとに起こる遷移だが、一次遷移と違ってある程度土壌が出来上がった状態からスタートする。
一次遷移の場合、溶岩などのものすごい高温で土壌が全て破壊しつくされた土地からスタートした。
しかし、台風や伐採では木が倒れたりするだけだし、山火事は高温ではあるが溶岩ほどの灼熱ではない。
したがって二次遷移ではある程度土壌ができていたり、土の中に植物の根や種子が残っている状態から始まるのである。
そのため二次遷移は遷移のスピードも早い。
水中における遷移(湿性遷移)
遷移は水中でも起こる。
その流れは
ため池や湖沼→湿原→草原→低木→陽樹の高木林→陽樹と陰樹の混合林→陰樹の高木林
という流れである。
スタートが違うだけ
陸上における遷移は、地面が岩場や土から始まるものだった。
遷移の舞台が水中であろうと陸上であろうと、何もないところから遷移が始まればそれは一次遷移であり、スタートが異なるだけで最終的に森林ができるのは同じである。
まず、何らかの要因である場所に水が溜まり、ため池や湖沼ができたりすると、そこには水草や浮き草が進出してくる。
そして彼らの生育と枯死を繰り返すうちに、死骸などが底に堆積していく。
かなり長い時間をかけて堆積が多くなっていくと、それに伴って水深は浅くなっていく。
すると湿原が形成され、その後も水はどんどんはけていく。
こうして、水が完全になくなってしまえば、あとは普通の陸上である。
上記で述べてきた陸上の遷移が始まり、陸上で生育できる草などが生えてくるのだ。