生きるものに魅せられて

自然・生物の知識を分かりやすく発信するブログ

日本にはどんな森林が分布している?

日本は気候区分でいうと温帯に属し、国土の67%(約7割)が森林に覆われた森林国である。

その森林は多様で、日本という一つの国に針葉樹林、亜熱帯多雨林など、北から南まで数種の森林帯が分布する。

今回は日本の植物分布と、その考え方について見ていこう。

 

目次

 

 

植物の分布の考え方

 

どの植物がどういった場所に分布しているのかを考えるとき、緯度で見る考え方と、標高で見る考え方がある。

 

例えば熱帯なら〜、温帯なら〜という考え方は緯度に着目した植物の分布(バイオーム)である。

 

では、山がある地域はどうだろうか?

温帯気候の中にあっても、山がある地域では植物が異なる場合がある。

 

なぜならば、植生(バイオーム)を決めるのは気温と降水量だからである。

 

山の麓と山頂ではもちろん山頂のほうが気温が低い。

つまり、山がある地域では平地と高地で生えている植物が変わってくる

 

このように、同じ地域でも土地の高さ(特に山がある場合)によって見られる植物は大きく異なる。

 

本の森林分布

日本は温帯で、しかも十分な降水量があるため、各地で森林が形成される。

 

f:id:inarikue:20190208234806p:plain

http://terakoya-seibutsu.hatenablog.com/より引用。

 

北海道の針葉樹林から沖縄の亜熱帯多雨林など、日本という一つの国に様々なタイプの森林が形成されている。

 

北海道・・・針葉樹林

f:id:inarikue:20190209005057j:plain

クロマツ

 

北海道は年間を通して気温が低めで、木は針葉樹が多い

針葉樹はマツの木などが好例で、読んで字の如く針のような鋭い葉をつける。

 

この葉っぱは針のように細いので雪が積もりにくい

降雪地帯では、冬に広い葉をつけているとその上に雪が積もり、重みで木の枝が折れたりするので危険だからだ。

 

さらに葉は細長いため、たとえ雪の中に埋もれたとしても先端がちょこっとでも出れば光合成ができる

 

冬は悪天が多く、日照時間も短いため、光合成ができる日は限られてくる。

冬場の貴重な光合成をする機会を逃がすまいとする針葉樹の戦略である。

 

東北地方~北海道・・・夏緑樹林

f:id:inarikue:20190209005330j:plain

ミズナラ

 

東北地方は冬は厳しく、しかも夏は天気が良くそこそこ暑くなる気候。

雪が降るなら針葉樹で安定!というわけではなく、夏季はたっぷりと光合成をする機会がある

 

よって夏場は広い葉をつけ、冬になると降雪に備えて葉を落とす落葉広葉樹からなる夏緑樹林帯が形成される。

具体的な木としてはブナミズナラが有名。

 

都心部~関西・・・照葉樹林

これらの地域は冬季はあまり雪が降らず、東北地方などに比べるとやや温暖

そのため、落葉することなく一年中広い葉をつけている常緑広葉樹からなる照葉樹林が形成される。

 

シイの木やクスの木などが例である。

 

沖縄・・・亜熱帯多雨林

沖縄は、南米アマゾンなどの熱帯多雨林ほどではないが、降水量が多く、一年中温暖なトロピカル気候。

ガジュマルなどが有名で、常緑広葉樹の高木などが繁茂する。

 

ちなみに亜熱帯の「亜」は~に次ぐ、下に位置するという意味。

熱帯に次ぐ(近い)気候として、亜熱帯なのだ。

 

標高で見る植物の分布

今度は、標高による植物分布を考えていこう。

植物の分布は気温と降水量で変わるのだから、たとえ同じ地域でも、土地に高低があれば植生が変わってくる。

 

図は、日本の富士山周辺(本州中部)のイメージだ。

f:id:inarikue:20190208233646p:plain

 

まず、標高が100m高くなるにつれ、気温は約0.6℃ずつ下がっていく

ある程度の高さまでいくと、気温が低すぎて森林形成の条件を満たさなくなる

 

標高0~700m

→この地帯を丘陵帯といい、クスノキなどの照葉樹林が形成される。

 

標高700~1700m

→この地帯を山地帯といい、ブナやミズナラなどを中心とする夏緑樹林が形成される。

 

標高1700m~2500m

→この地帯を亜高山帯といい、シラビソなどの針葉樹林が形成される。

 

標高2500m以上

→標高が2500m以上になると高山帯と呼ばれる。

 高山帯になると低気温のため森林形成の条件を満たさなくなる

 この森林の形成を満たさなくなる高さを森林限界という。

 

 そのため、この地帯では高山植物と呼ばれる植物たちの草原や花畑が形成される

 高原植物にはクロユリやコマクサなどがある。

 

※標高2500m以上=森林が形成されないというわけではない。

森林が形成されるかどうかはあくまで気温と降水量の問題で、例えば山の麓がもともと寒冷な地域の場合、標高が少し高くなるだけで森林が形成される条件を満たさなくなる

だから1700mで高山植物地帯になる地域だってあるし、上記の標高における植物の分布はあくまで日本のある地点の山の話である。

ちなみに日本の富士山の森林限界は2700mである。

 

まとめ

  • 植物の分布を考える際は、緯度で考える方法と、標高で考える方法がある

 

  • 日本は十分な降水量があるため、日本という一つの国の中に地域によって多様なバイオームが形成される。

 

  • 標高ごとの植物の分布を考えたとき、森林が形成されなくなる高さを森林限界という

 

  • 森林限界を迎えると、草原や花畑、コケ類が見られるようになり、標高が高い山の山頂付近に木があまりないのはこのためである

 

↓今回の記事の理解を深めたい方は以下の記事もご覧ください

inarikue.hatenablog.com

 

inarikue.hatenablog.com