生きるものに魅せられて

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窒素も生態系を循環している?

以前に、有機物(炭素)が生態系内を循環していること説明した。

しかし、生態系を循環するものは炭素だけではない。

例えば窒素なんかも循環をしている。

今回はそんな窒素の循環の話。

 

 ※こちらの記事も参考にどうぞ。

inarikue.hatenablog.com

 

目次

 

 

重要な元素

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窒素は生物の体にとって非常に重要な元素である。

生物の体内では核酸(DNAやRNA)やタンパク質を生成するために必須の元素である。

 

また、植物が成長に必要とする3元素窒素リン、カリウムであり、窒素はあらゆる生物の成長に欠かせない元素である。

 

生物の体の外では、主に窒素は大気の成分の80%を占める気体として存在する。

しかし、ほとんどの生物が窒素をそのまま利用できない

 

生きるのに必要な元素がこれだけ周りにあるのにも関わらず、ほとんどの生物は自力で利用できないのである。

 

細菌類の活躍

大多数の生物は外にある窒素をそのまま利用できない。

そのため、生物たちにとって窒素を利用可能な形に変換する必要がある

この変換作業を窒素固定という。

 

窒素固定をやってくれているのが、アゾトバクタークロストリジウム根粒菌などの細菌や、ネンジュモというアノバクテリアの一種である。

 

彼らは主に土壌中にいるよ!

 

土壌に窒素固定された窒素は、その後、亜硝酸硝酸菌といった別の細菌たちによって、窒素は硝酸イオンとなる

 

土壌から生産者へ

生産者(植物)は窒素が硝酸イオンになって初めて根から吸収する。

生産者たちは自身の酵素を使って硝酸イオンをまた変化させていく

すると、最終的に硝酸イオンは有機窒素化合物(タンパク質)になる。

 

こうしてできた有機窒素化合物は食物連鎖を通して、消費者や分解者に移動していく。

 

戻るには?

ここまでは、大気中の窒素が土壌に蓄積され、生物の体に取り込まれるまでの話。

窒素は循環しているので、ここから戻る必要がある。

 

ではどのように戻るのかというと、戻るのは生産者や消費者、分解者が死んだ時などである。

 

生物が死ぬとアンモニウム塩などの窒素化合物ができる。

この窒素化合物から窒素を取り出し、大気中に戻しているのが脱窒素細菌と呼ばれる細菌である。

 

さっきから細菌が大活躍だね!

 

コラム~根粒菌マメ科の植物

窒素固定をできる細菌の例として、根粒菌を挙げた。

実はこの根粒菌は、ちょっと面白い特性を持っている。

 

根粒菌とは?

クローバーの根粒

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身近な理科室 根粒ってなに?より引用 http://www2.tokai.or.jp/seed/seed/mijika10.htm

 

根粒菌とは、その名の通り根粒を作る細菌であり、根粒は根粒菌の集合体である。

マメ科の植物などを根から掘り起こした経験がある人は、根に何かゴツゴツしたコブのようなものが沢山ついているのを見たことがないだろうか。

あれが根粒である。

 

根粒菌主にマメ科の植物の根に寄生し、窒素固定を行う

 

そして窒素固定により窒素を植物が利用可能な形になったものを直接宿主に与え、逆に自身は当該植物が光合成で得た有機物をもらうという相利共生関係を築いている。

※相利共生・・・お互いが得をする共生関係。 

 

ところが根粒菌マメ科以外の植物にも寄生する。

するとその場合は窒素固定をせずに、宿主の植物から有機物をただ奪うだけの寄生生物と化す

 

マメ科の植物と共生したときにしか窒素固定しないんだね。