単細胞生物と多細胞生物の違いは? どんな生物がいるの?
全ての生物は必ず細胞を持っている。
ちなみに、最近の研究によると人間は37兆個の細胞からできているという。
だが、"細胞を持っている"とは言っても、人間のように多数の細胞から複雑な体を構成している生物もいれば、細菌類のように、たった1つの細胞に生きるために必要なものを全て備えているものもいる。
今日は単細胞生物と多細胞生物を比べてみよう。
目次
単細胞生物
1つの細胞で1つの体を構成している生物を、単細胞生物という。
単細胞生物は1つの細胞で全てをやっている。
つまり単細胞生物は1つの細胞に、生きるために必要な器官などを全て備えている。
単細胞生物の例は細菌類やゾウリムシなど。
では、身近でイメージしやすいゾウリムシの体を見ながら単細胞生物を見ていこう。
※ゾウリムシはその辺の池や水辺にいます。
ゾウリムシで見る単細胞生物
Wikipediaから引用させていただいた、ゾウリムシの絵である。
by Ciarachristina https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=32860645より引用。
各部位の名称は
- 食胞
- 小核
- 細胞口
- 細胞咽頭
- 細胞肛門
- 収縮胞
- 大核
- 繊毛(せんもう)
で、このうち4番と5番以外について順に見ていこう。
①食胞
食べたものを消化するところ。人間でいう胃などの消化器官に該当する。
②小核
核。ここにDNAが入っているのだが、普段は使わない。普通核を持っている生物の細胞には1つの細胞につき核が1個あるのだが、ゾウリムシには小さな核(小核)と大きな核(大核)が2つある。詳細は後述。
③細胞口
いわゆる口。ここから餌を体内取り込む。ゾウリムシの実際の写真を見るとここだけくぼんで見えるので、すぐ細胞口だと分かる。
⑥収縮胞
体内の水や老廃物を排出する、いわゆる浸透圧というものの調整をおこなう場所。ゾウリムシは淡水に生息しており、周囲の水よりも体内の液体ほうが濃度が濃い。そのため常に水が体内に入り続けて最終的に水で膨らみすぎて破裂してしまう危険がある。それを防ぐために、この収縮胞から体内の水を排出して、バランスを保っている。
⑦大核
大きいほうの核。こちらにも小核同様DNAが入っており、普段使う核はこの大核である。
コラム:ゾウリムシの小核と大核
全ての生物は細胞を持っているが、細胞には種類があり、細胞の中に核を持つものと持たないものがいる。
そして、細胞に核を持つタイプの生物の場合、基本的に1つの細胞には1つの核しかない。
しかしゾウリムシは小核と大核の2つの核を持ち、小核は普段は使わない。
小核を使うのは生殖のときである。
ゾウリムシは通常は分裂してクローンを生み出す無性生殖をおこなうことで増えていく。
しかしこのときも小核は使われない。
小核が使われるのは有性生殖のときのみで、特定の条件下でゾウリムシがペアになり、互いの小核を交換することで有性生殖をおこなう。
ゾウリムシは無性生殖と有性生殖の両方を使い分けているのである。
無性生殖だと遺伝子が全く同じクローンしか増えないから、有性生殖によって自分と相手の遺伝子を交換して、遺伝子の多様性を確保するんだね。
※YouTubeに今回の記事とリンクするゾウリムシの良い動画があったので、時間がある方は是非どうぞ↓
多細胞生物
多数の細胞で1つの体を構成している生物を多細胞生物という。
例は我々人間や犬、魚など。
ちなみにクラゲも多細胞生物だよ
多細胞生物は1つ1つの細胞が役割分担をし、1つの体を構成している。
単細胞生物と多細胞生物の違い
先ほどのゾウリムシの例でも見たように、単細胞生物は生きるために必要な器官が1つの細胞に全て備わっていた。
それに対し、多細胞生物の細胞は1つ1つの細胞が特定の役割に特化し、役割分担をしている。
ある細胞は目の細胞になり、ある細胞は肝臓の細胞になり、ある細胞は手の細胞になり・・・という感じで、1つ1つの細胞が体のパーツである。
しかも目の細胞は目しかできないし、肝臓の細胞は肝臓の役割しかできない。
単細胞生物では、細胞は体の一部というよりも本体だったね!
単細胞生物から体細胞生物へ
最後に、ちょっとだけ細胞の歴史を見てみよう。
地球に最初の生物が誕生したのが38億年前
↓
多細胞生物が出現したのは10億年前
地球に最初に誕生した生物はもちろん単細胞生物だったが、それから多細胞生物が出現するまでに28億年かかっている。
では、10億年前に多細胞生物がある日突然出現したのか?
実は、単細胞生物と多細胞生物の中間的な生物が発見されている。
細胞群体
単細胞生物が多数集まり、1つの個体になったものを細胞群体という。
あまり聞いたことはあまりないかもしれないが、ボルボックスやユードリナという生物が例だ。
細胞群体は単細胞生物が多細胞生物に進化する過程にある、中間的な生物と言われている。
細胞群体は多数の細胞が集まっている点で多細胞生物に非常に似ているように思われがちだが、両者には決定的な違いがある。
それは、細胞群体はあくまで単細胞生物の集合体に過ぎないということだ。
先に述べたように、多細胞生物は1つ1つに役割があるのだから、細胞がバラバラになったら生きていくことができない、あるいは生命活動に大きな支障が出る。
例えば手足がなくなったり、肝臓がなくなったり、何かが欠けるとかなりのハンデを負うよね。
しかし、細胞群体は単細胞生物の集まりなので、一部がバラけたり、集団から1つの細胞になってしまったとしても生きていくことができる。
最後に:単細胞生物=単純か?
ここまで、単細胞生物と多細胞生物の違いについて見てきたが、単細胞生物=単純な生物だろうか。
ちょっと以下の写真を見てほしい。
これは海ぶどうという海藻の一種である。
飼育している方、食用で食べたことのある方様々だと思うが、実はこの海ぶどう、単細胞生物である。
たった1つの細胞しか持たない生物がこんな複雑で巨大な体を作ってるなんて、面白すぎる・・・!
よく1つのことしかできない人を"単細胞"と揶揄することがあるが、実際の単細胞生物は1つの細胞で色々やらなければならないのでかなり忙しそうだ。
また、多細胞生物の細胞1つ1つが何かの役割に特化した"スペシャリスト"とするならば、単細胞生物は1つの細胞で色々なことをやっている"ジェネラリスト"である。
海ぶどうを例に挙げたように、単細胞生物にも不思議で興味深い体の作りをした生物はいるし、多細胞生物にだって面白い背負い生物がたくさんいる。
当記事を読んでくれた方に、ぜひ生物について色々調べたり、興味を持っていただけたら本当に嬉しい限りである。
まとめ
- 1つの細胞で1つの体を構成し、そこに生きるために必要な器官などを全て備えている生物を単細胞生物という
- 多数の細胞で1つの体を構成している生物を多細胞生物という
- 多細胞生物は1つ1つの細胞が特定の役割に特化し、その役割しかできないので、細胞が欠けたりすると体に大きな支障が出る
- 単細胞生物が集合して1つの個体になったものを細胞群体という
- 細胞群体は多細胞生物と違い、単細胞生物の集合体に過ぎないので、欠けたり最悪バラバラになっても生きていくことができる