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ホルモンとは一体何か? どのような種類があるか?

私たちの体では、血圧や血糖値などの体内環境の変化を間脳が認識している。

そして変化を認識した間脳は、自律神経にはたらきかけたり、ホルモンを使って体内環境を一定に保とうとする。

今回は生きていくために欠かせない物質であるホルモンについて学んでいこう。

 

間脳については自律神経ともに簡単に書いています。

よかったら以下も参考にどうぞ!

inarikue.hatenablog.com

 

 

目次

 

ホルモンとは

体内の環境を一定に保つ中枢を担う間脳は、体内環境の変化を認識すると、自律神経に指令を出すだけではなく、それ以外の手段としてホルモンという物質を用いる。

 

ホルモンは体内環境の調整をしたり、体の成熟に寄与している重要な物質である。

あるときは血糖値を下げたり(インスリン)、またあるときは性機能を発達させたり(テストステロンやエストロゲン)、生きるために欠かせないものとなっている。

 

また、ホルモンはホルモン産生細胞という特別な細胞で作られ血液中に分泌されて全身に運ばれる

 

このように、物質が血液中など体内で分泌されることを内分泌といい、これに対し体外に分泌されることを外分泌という。

ホルモンは内分泌性の物質であり、体の外に分泌されたりはしない

 

例えばなんかは体の外に分泌されるから、外分泌性の物質だよ!

 

ホルモンの性質

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ホルモンは全身に運ばれるが、そのホルモンを認識できる受容体という部位をもつ細胞にしか作用しない

つまり、ホルモンは特定(目的)の細胞のみにしか効果がない

※目的の細胞を標的細胞といったり、標的器官と呼んだりします。

 

だからホルモンは血液に乗って全身に運ばれる際に、誤った場所に行って誤作動させるようなことは基本的にない。

 

ただ、ホルモンは標的となる細胞や器官に対してはごく微量でも作用する。

ホルモン溶液一滴を25mプールくらいの量の液体で薄めても作用するというのだから驚きだ。

 

ホルモンと内分泌腺

先にホルモンはホルモン産生細胞で作られると述べたが、ではホルモン産生細胞はどこにあるのだろうか。

 

実はホルモン産生細胞は体の中のいくつかの器官に存在する。

例えば脳の下垂体甲状腺膵臓副腎卵巣(精巣)などに存在しており、意外と多くの器官にある。

 

これらのように、ホルモン産生細胞を持ち、ホルモンを作ることができる器官を内分泌器または内分泌腺ともいう。

※ホルモンを分泌する器官でも内分泌腺に含まれない器官もあります。

 

ホルモンは内分泌腺で作られるってよく聞くけど、具体的には甲状腺だとか膵臓とかなんだね!

 

ホルモンの種類

ホルモンはそれ自体が何でてきているかによって大きく3種類に区別できる。

その3つとは、タンパク質でできたペプチドホルモンアミノ酸でできたアミノ酸ホルモン脂質でできたステロイドホルモンである。

 

ペプチドホルモン

ペプチド系のホルモンはタンパク質でできているため、大きさがデカいという特徴がある。

そのため細胞を覆っている細胞膜を通過できず細胞外に受容体を持つ細胞に対して結合して作用する。

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細胞は受容体にてホルモンとの結合を感じとると、内部で学反応を起こし、細胞内のタンパク質のはたらきが活発化するなどの作用が起こる

 

ホルモン自体が直接細胞に何かしているというよりは、ホルモンを感じとった細胞が活発化しているイメージである。

 

この作用は受容体とホルモンが結合した瞬時に起こるため作用の効果が出るスピードが非常に早いというのも一つの特徴である。

 

インスリングルカゴンもペプチドホルモンに分類されてるよ!

 

アミノ酸ホルモン(アミン)

後に述べるステロイドホルモンもそうなのだが、アミノ酸はタンパク質よりも小さいため、アミノ酸ホルモンは細胞膜を通過することができる

細胞膜を通過し、細胞内にある受容体と結合する。

 

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ホルモンと受容体は結合すると複合体となり、細胞の核の中に入り、DNAの転写などを促す

すると、新たなタンパク質合成が促進される。

 

ペプチドホルモンの作用は、すでに細胞内に存在しているタンパク質を活発化させるという作用だったのに対し、こちらは新たなタンパク質を作らせるという作用である。

 

ただし、1から新たなタンパク質を作らなければならないため、作用の効果が出てくるまで少々時間がかかる

 

アミノ酸ホルモンはアミンと呼ぶことも多いです。

 

ステロイドホルモン

ステロイドホルモンは脂質でできたホルモンで、アミノ酸ホルモン同様に細胞膜を通過することができる

 

作用もアミノ酸ホルモンのように、受容体と結合したあとに細胞の核の中に入ってDNAの転写などを促す

 

ステロイドホルモンは一般的に"ステロイド"と呼ばれており、先述のペプチドホルモンなどと比べると名前を聞いたことがある人は多いのではないだろうか。

 

例えばステロイドは用途の一つとして薬剤に調合され、抗炎症薬(炎症を抑える薬)として虫刺され薬やアトピー薬に入っていたりする

 

また、ステロイドの作用を人工的に強化し、それをアスリートが体内に注入してドーピングをするというニュースをよく耳にする。

 

フィードバック

ホルモンは生きていくために欠かせない物質であるが、そんな物質でも出すぎると病気になったり体に異常が生じてしまう。

このような事態を避けるためにも、ホルモンにはフィードバックという機能がある。

 

例えばホルモンの中には、あるホルモンが別のホルモン放出を促し、そのホルモンがまた別のホルモンの放出を促す・・・というものがある。

ここではチロキシンというホルモンを例に説明していこう。

 

まず、チロキシンとは体の血糖値が低下したときに分泌されるホルモンで、血糖値を上昇させるはたらきがある。

※血糖値については後日別記事において解説する予定です。

 

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体の血糖値が低下すると、間脳視床下部がそれを認識し、脳の下垂体の前葉という部分に対し、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンを出す。

前葉はそのホルモンを察知すると、さらに甲状腺刺激ホルモンを放出して甲状腺を刺激する。

そして甲状腺チロキシンというホルモンを放出し、血糖値を上昇させる。

 

しかし面白いことに、このときチロキシンは血糖値を上昇させるだけではなく、間脳視床下部や前葉にも作用して、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンと甲状腺刺激ホルモンの分泌をやめさせるはたらきをするのである。

 

このように、あるホルモンや器官によって最終的に分泌されたホルモンが、元のホルモンや器官に対して抑制的に作用することをフィードバックという。

 

ホルモンにはこうしたフィードバック機能があることで、必要以上に分泌されすぎないようになっているのだ。

※抑制的にはたらくことから、特に負のフィードバックとも呼びます。

 

ホルモンはホルモンでコントロールしているんだね!

 

まとめ

  • ホルモンはホルモン産生細胞という細胞でのみ作られる内分泌性の物質である

 

  • ホルモンは特定の細胞(器官)にしか作用しないが、対象となる細胞に対してはごく微量で作用する

 

  • ホルモンを作ることができる器官を内分泌腺と呼び、内分泌腺はホルモンを作るための特別な細胞(ホルモン産生細胞)を持っている

 

  • ホルモンは化学組成によって3種類に分けられる

 

  • ペプチドホルモンはタンパク質でできており、大きさがデカいため、細胞外で結合する

 

 

  • ホルモンはフィードバックという機能があり、分泌されすぎないようになっている