鳥類の基礎知識を学ぼう! 最大、最小の鳥は? 鳥が持つ声とは?
大空を優雅に飛び回る鳥。
今回は、一般的な鳥類の知識について簡単に解説するが、中でも色・飛翔・声・渡りについてスポットライトを当てていきたいと思う。
では、鳥類についての基礎知識を、日本の鳥たちを例にとりながら学んでいこう。
目次
多様で歴史ある動物群
鳥類は、脊椎動物に属する動物群の一つである。
世界には約8,800種が生息しているとされ、熱帯から北極に至るまで非常に広範囲に分布している。
鳥類は非常に多様な動物群であり、哺乳類の倍の種類数が確認されている。
※分類法によっては9,000種、10,000種としているデータや書籍もあります。
ちなみに、鳥類の中でも特に種類が多いのはスズメ目に属するものたちで、現存する鳥の半分以上を占めている。
また、鳥類は種類が多様なだけではなく、その歴史も長い。
祖先は恐竜の1グループに属していたというのは今日の常識で、現在見られる鳥類は恐竜が絶滅した後に誕生した種である。
中でも特に古い歴史を持つのはダチョウ目などの走鳥類やカモ目・キジ目の鳥たちである。
恐竜は生物の大絶滅っていう生物史の大きなイベントで絶滅しちゃったけれど、鳥類はその中を生き残ってきたんだよ!
巨大な鳥と小さな鳥
多様な鳥類は、大小様々なものがいる。
例えば、飛翔する鳥の最大種はワタリアホウドリという鳥で、翼を広げた大きさは最大3.7メートルという記録がある。
一方で、飛翔しない鳥の最大種はダチョウである。
お馴染みの鳥であるが、高さは2~3m、体重は135キロにもなるので近くで見たりすると迫力がある。
では、世界最小の鳥はどんな鳥だろうか。
それはアマツバメ目 ハチドリ科のマメハチドリという鳥で、重さはなんと1.6グラム!
残念ながら日本には生息していないが、1.6グラムは1円玉約1.5枚という軽さである。
↓ダチョウの群れ。ダチョウは時速50キロ~70キロで走ることが可能で、歩幅は2mもある。また脚を使った攻撃も得意で、蹴りは鉄棒を曲げてしまうほどの超威力である。
cocoparisienneによるPixabayからの画像
鳥類の特徴
今度は、鳥類の体の特徴について見ていこう。
鳥の体には様々な特徴があるが、本記事では飛翔・色彩・声・繁殖について解説する。
飛翔
鳥といえば空を優雅に飛ぶ姿を想像できる。
では、その仕組みはどのようになっているのだろうか。
まず、鳥の翼は脊椎動物の前足が変化してできたものだ。
そして翼にはいくつかの種類の羽がついており、その中でも風切羽は揚力の中心を担う。
Author: zh:User:Snowyowls,(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Bird_ja.png)より引用。
風切羽は初列風切、次列風切、三列風切に分かれ、揚力を最も大きく生むのが初列風切である。
それから鳥は肩甲骨まわりの筋肉と強い胸筋によって羽ばたきをする。
そのため胸板は厚くなっている。
鮮やかな色
鳥類は、基本的にオスが少々派手な見た目をしており、囀り(さえずり)も美しい傾向にある。
これは求愛において、メスがオスを選ぶことを基礎としている種類が多いからである。
そのため、メスは地味な色をしていることが多いが、地味な色は子育て中や抱卵中に外敵の注意を引きにくくするメリットがある。
色は人間の皮膚などと同じ仕組みで決定し、黒や茶を作るメラニン、赤やオレンジ色を作り出すカロテンという色素を持っている種類が多い。
そのため、よく見る鳥のほとんどがメラニンとカロテンの組み合わせで発色している。
ちなみに、羽毛だけではなく皮膚やクチバシにも色素がちゃんとある。
コラム:幸せの青い鳥はいるの?
メーテルリンクの童話劇である『青い鳥』では、幸せの青い鳥を求めてチルチルとミチルが冒険をする。
では、自然界に綺麗な青い鳥はいるのだろうか。
実は、青や緑の色素を持っている鳥は基本的にいない。
しかし、カワセミやクジャク、オオルリは綺麗な青色をしていて非常に色彩豊かである。
色素を持たない彼らが青く見えるのにはトリックがあって、羽毛の表面にある構造が
光を回折させて作り出している。
このように色素ではなく、体の構造を使って上手く光を反射させて作り出す色を構造色という。
↓クジャク。メスは地味だがオスはこんなに派手になる。こんなにも青と緑の美しい鳥が、色素を使わずにその鮮やかさを出しているとは、生物は本当に面白い。
鳴き声と囀り
鳥が出す声は2種類ある。
1つは地声と呼ばれ、生まれながらにしてその種が出せる声で、音節も短い傾向にある。
もう1つは囀り(さえずり)である。
囀りは、生まれたときには持っていない声で、習得には学習と練習を必要とする。
ではどこで囀りを学ぶのかというと、同種の鳥を手本に真似をして身につける。
囀りをマスターした個体は、そこに様々なアレンジを加えて音を出したり、長時間鳴けるようにもなる。
また、囀りの仕組みは人間が声を出すのとは少々異なる。
人間は喉の奥にある声帯で声を作るが、鳥は両肺から伸びる気管がつながる気管支の手
前にある鳴管で音を出す。
鳴管は2つあるため、1羽だけで和音を作ることができ、複雑な囀りができるのだ。
ちなみに囀りを使う目的は、主として繁殖のためで、使い手もオスであることが多い。
繁殖と子育て
鳥はオスがメスを求愛し、つがい(ペア)を作るのが基本だ。
メス側にオスを選ぶ選択権を持つ種が多いのである。
そのため、ありとあらゆる手段を使ってオスはメスにアピールをする。
美しく囀りをするものもあれば、メスの元に訪問したり、自らが持つ綺麗な色彩をアピールする。
中には餌をメスにプレゼントするという求愛給餌をおこなう鳥もいる。
繁殖期である夏には、多くの鳥が色鮮やかになり、一方で冬は地味になる。
これは羽毛の生え変わりによって変化しているが、クチバシの色まで変わる種類もいる。
ちなみにカモ類は例外的で、短期間の繁殖期シーズンには地味な色になる。
子育てはオスとメスが共同でするタイプとしないタイプがいる。
そして、子育てをする鳥たちは様々な方法で雛を守り、育てる。
例えば、子育て中に巣の近くに天敵が現れた時、雛を守るために親が怪我を装って敵を引きつける擬傷行動をおこなう鳥たちがいる。
他にも、鳥の中にはつがい以外の仲間が育雛を手伝うケースもあり、そうした鳥はヘルパーと呼ばれる。
ヘルパーは、まだ繁殖に適さない若鳥だったり、繁殖に失敗したつがいが担当する。
↓ハト。自然界よりも街中で当たり前に目にするようになった鳥。鳩類は珍しく、食道の途中にある「そのう」という器官で作られるピジョンミルクで雛を育てる。ミルクはオスとメス両方が作れる。
留鳥と渡り鳥
日本には約600種の鳥が生息している。
この600種には、年間を通して日本に定住している留鳥と、特定の季節に一時的に見られる渡り鳥の両方が含まれている。
鳥は常時その地域に生息している留鳥と、季節によって国・地域をまたいで移動する渡り鳥の2種類に大きく分けられる。
さらに日本において渡り鳥は、「夏鳥」、「冬鳥」、「旅鳥」の3種に分けられる。
※もっと厳密に言うと、実はこの3種の他に、国内にて渡りを行う漂鳥と日本に偶然迷い込んできた迷鳥というのもいます。
つまり、日本における鳥の生息種類数は、常時一定というわけではなく、季節や時期によって変動している。
ただし、留鳥と渡り鳥の区別は厳密ではない。
例えば、北海道のスズメは年間を通じて同じ場所に留まるタイプと、冬に寒さが厳しくなると本州に渡って越冬するタイプがいる。
留鳥は、常に同じ場所にいるものから、季節によって小規模な移動するものがいるのだ。
1つの国や地域の中で見れば、渡りをする鳥もいるってことだね!
夏鳥
夏鳥は渡り鳥の一種で、日本においては4月~10月の暖かい時期に現れる鳥を指す。
主にやって来るのは4~10月であり、「夏にだけ現れる鳥」という意味ではないので注意が必要だ。
夏鳥が日本にやって来る目的は、繁殖のためだ。
彼らは普段は南のほうにいて、それらの地方が寒くなってくる頃(南半球が冬の時、日本を含む北半球は夏)に日本に飛来し、寒さをやり過ごしながら繁殖をする。
そして、日本が冬に突入する前にまた南へと帰っていく。
↓ツバメ。日本の夏鳥の代表種であり、桜が咲くちょっと前くらいに東南アジアから日本にやってきて、子育ても日本でおこない、秋にまた帰っていく。
Andrea LinjaによるPixabayからの画像
冬鳥
冬鳥は冬にシベリアなどからやってくる鳥たちだ。
春には北の地方へ帰り、繁殖も北のシベリアなどでおこなう。
ハクチョウやカモ、ガンの仲間が日本ではお馴染みである。
冬鳥はハクチョウに代表されるように、中型~大型の鳥のイメージがあると思うが、ツグミなどの小鳥もいる。
冬鳥たちは北国育ちであるものの、シベリアなどの地域の冬はあまりにも寒いため、その寒さを避けるために日本にやって来る。
日本も冬は十分寒いが、シベリアなどよりはましというわけだ。
旅鳥
渡り鳥の中で、特定の地域を中継地点としている鳥たちを旅鳥という。
北で繁殖をし、南で越冬する種類の鳥に見られ、中間地点の日本に一定期間滞在し、採餌や羽休めをする。
シギやチドリが好例で、春や秋の水田や湖沼などの湿地帯に来て餌を探している姿がよく見られる。
季節によって様々な姿を見せる鳥たち。
みなさんも、今度鳥を見つけたら、それがどのような種類で、なぜそこにいるのか、考えを巡らせたり調べてみてはいかがだろうか。