生物の行動や反応にはどのような種類がある?
動物はあらゆる刺激に対して様々な反応を見せる。
今回は、動物の面白い習性なども具体例としてピックアップしながら、動物にはどのような行動があるかを学んでいこう。
目次
生得的行動
生得的行動は、その生物に生来備わっている行動の総称で、いわゆる本能である。
食事をとることや生殖することは、生得的行動の典型例である。
また、生得的行動を引き起こす刺激を特に"鍵刺激"と呼ぶ。
走性
特定の刺激を受けると移動が起こる行動で、刺激に対して一定の方向に移動する。
刺激源に近づく正の走性と、刺激源から遠ざかろうとする負の走性がある。
走性には光・水分・温度・磁場・重力など、刺激源によってさまざまな種類がある。
走性を持つ生物は様々で、単細胞生物だとか多細胞生物だとかに関係なく持っている。
昆虫もいれば、ゾウリムシやアメーバといった原生生物もいるのだ。
体内にいる白血球だって刺激に反応して移動する走性を持っている。
走性は、生物が身を守ったり、より多くの餌や繁殖相手を探すのに大いに役立っている。
走光性(光走性)
刺激源が「光」である走性を走光性という。
走光性を持つ生物で典型的なのは、蛾(が)やハエなどの一部の昆虫類だ。
みなさんも、夜の街灯や部屋などの明かりに虫が集まってくるのを見たことがあるだろう。
あれは、その虫たちが走光性という生得的な習性を持つからである。
蛾やハエといった虫は、光という刺激源に集まってくる(近づいてくる)から、正の走光性を持っているとも言えるんだね!
ところで、虫が光によってくる正の走光性は見たことがある人が多いと思うが、では光から遠ざかろうとする負の走光性を持つ生物には何がいるだろうか。
最も身近な例がミミズだ。
ミミズは負の光走性を持っていて、太陽の光などから逃げようとする。
この習性は、自分が暮らすのに不適な地表を避けるためだと考えられている。
走地性(重力走性)
刺激源が「重力」である走性を走地性という。
カタツムリ、ミミズ、ゾウリムシなどがこの走性を持つ。
確かミミズって、負の光走性も持っていたよね!
生物が持つ走性は、必ずしも1つとは限らない。
一種の生物がいくつかの走性を組み合わせて持ち、それらを発揮することで生存競争を有利に進めるのである。
走流性(流れ走性)
刺激源が「水流」である走性を走流性という。
メダカやサケが有名で、特にメダカが流れに逆らって泳ぐことを知っている人は多いのではないだろうか。
メダカは狭い範囲を住処としており、流れに逆らう負の走流性を持つことで、その場所から遠くへ流されてしまうことを防げるのだ。
また、サケはちょっと面白い習性を持っている。
川で生まれて海へ下り、また元の川へと戻ってくるサケは、海に下る幼小のときには負の走流性を発揮し、成魚になると正の走流性を発揮する。
このおかげでサケは川を逆流して上っていくことができるのだ。
走化性(化学走性)
刺激源が「化学物質」である走性を走化性という。
例えばゾウリムシは希塩酸(薄い塩酸)に対しては正の走化性を発揮するが、通常の塩酸に対しては負の走化性は発揮して遠ざかろうとする。
また、アリはフェロモンという化学物質を出して餌の場所を仲間に知らせ、仲間はそれを手がかりに餌を見つけ出すことができる。
反射
刺激に対して無意識に起こる反応を反射という。
反射は大脳を経由せず、脊髄が中枢を担うため、反応速度が非常に早いという特徴がある。
- 熱いものにうっかり手を触れて思わず手をひっこめる
- 膝の下を叩くと無意識に足が跳ね上がる(膝蓋腱反射という)
- 目の前に物が突然飛んできたとき、瞬間的に目を瞑る
などが例である。
反射は、体に重大な影響を及ぼす刺激に対して即座に反応して身を守るために役立っている。
本能行動
本能行動は、特定の生物種が独自に持っている生まれつきの習性で、反射が複雑に組み合わさって起こる。
生物種ごとに持っているもので、個体差があまりなく、大脳の支配も受けない。
例としては、
- アリが巣を作る
- 鳥が卵を生み、ヒナを育てる
- 鳥が特定の季節に渡りをおこなう
- ミツバチがおこなう8の字ダンス
- イトヨがおこなうジグザグダンス
などがある。
習得的行動
生物が、学習をすることによって後天的に身につけた行動を習得的行動という。
ここでいう学習とは、机に向かって勉強するということではなく、生まれたあとの経験によって行動が変化することを意味する。
条件反射
反射を起こす刺激と、反射を起こさない無関係な刺激(条件刺激)を繰り返し与え続けると、やがて無関係な刺激を与えられただけでその反射が起こるようになる。
これを条件反射という。
条件反射は大脳が大きく関連して引き起こされる。
条件反射で非常に有名なのがパブロフの犬という実験で、犬にベルの音を聞かせてから餌を与え続けると、やがて犬は餌とは本来全く関係ないはずのベルの音を聞いただけで唾液を出すようになるというものだ。
これは、犬の大脳の中の聴覚の情報を処理する部分と味覚の情報を処理する部分との間に新たな連絡経路が形成されたために起こった反応である。
学習行動
ある経験を繰り返すことによって、より適切な行動がとれるようになることを学習行動という。
有名なのが刷り込みと呼ばれる現象で、アヒルのヒナは孵化直後に見た動くものを親と認識し、後をついていく。
他にも、ネズミに何度も同じ迷路に挑戦させると、最初は時間がかかるが、繰り返すうちに素早く出口にたどり着けるようになるなどがある。
知能行動
未経験のことに対して状況を判断・推理し、結果を予測して適切な行動をとることを知能行動という。
チンパンジーなどの一部の知能が高い動物に見られる行動である。
まとめ
- 生得的行動は、その生物に生来備わっている行動の総称で、いわゆる本能である
- 特定の刺激を受けると移動が起こる行動で、刺激に対して一定の方向に移動する習性を走性という
- 刺激に対して無意識に起こる反応を反射という
- 本能行動は、特定の生物種が独自に持っている生まれつきの習性で、反射が複雑に組み合わさって起こる
- 反射を起こす刺激と、条件刺激を繰り返し与え続けることで、条件反射だけでその反射が起こるようになることを条件反射という
- 生物が、学習をすることによって後天的に身につけた行動を習得的行動という
- ある経験を繰り返すことによって、より適切な行動がとれるようになることを学習行動という
- 未経験のことに対して状況を判断・推理し、結果を予測して適切な行動をとることを知能行動という