生きるものに魅せられて

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感覚はどのようにして伝わる? 適刺激とは?

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生物は、環境の変化を感じ取るための器官を持っている。

その形や性能は種によって差があるのだが、今回は多くの生物が共通して持つ感覚器官について、ヒトを例にしながら見ていこう。

 

目次

 

五感と感覚器官(受容器)

外界の変化を感じ取るために生物が持つ主要な5つの感覚五感という。

具体的には、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の5つの感覚であり、これらの感覚を感じるために、目・耳・鼻・舌・皮膚という感覚器官(受容器)が存在する。

 

しかし、全ての生物の五感が全て優れているわけではなく、例えば嗅覚が非常に優れたオオカミや、聴覚が発達しているイルカなど、いくつかの感覚に特化した生物も多い。

 

また、感覚器官も全ての生物が満遍なく備えているわけではなく、目が退化している種類が多い洞穴生物など、一部の感覚器官を欠いている生物もいる。

 

感覚の伝わり方

ヒトを例に、感覚の伝わり方を見てみよう。

これは義務教育下の理科の授業でも習ったと思うが、今一度復習してみよう。

 

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何かを見たとき、食べたとき、あるいは触ったとき、その情報は刺激として感覚器官から感覚神経を通して脊髄に伝わる。

脊髄は神経が集中しているので中枢(ちゅうすう)とも呼ばれ、背骨の中にある。

 

脊髄に伝わった刺激は、次にへ伝わる。

脳は受け取った刺激を素早く分析・判断して、命令という形で刺激への対処法を伝える。

そして脳からの命令は脊髄へと伝わり、脊髄から運動神経を介して筋肉などに伝わる。

 

この感覚などが伝わるスピードは非常に早いが、残念ながら訓練をしても早くすることはできないらしい。

 

↓今回は神経について説明していませんので、神経についての概要は以下の記事をどうぞ

inarikue.hatenablog.com

 

反射

熱いものに手を触れてしまったときや、目の前で突然手を叩かれたりしたときなど、自分の意識とは無関係に反応が起こってしまうことがある。

 

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これを反射といい、刺激を受け取った脊髄が命令を出していきなり運動神経を介して筋肉などに伝わる

反射では脳を経由しないので連絡経路が短くなっており、通常の刺激を受けたときよりも命令が早く伝わるようになっている

もし脳を経由して情報処理をすると、時間がかかり反応が遅れてしまうからだ。

 

感覚器官と適刺激

感覚器官にはその感覚器官に適した刺激の種類や範囲があり、これを適刺激という。

例えば、耳たぶに光を当てても意味がないし、まさか目で音を聞く人なんていないだろう。

 

:適刺激は音(空気の振動)や体の傾き。具体的には、耳の中にあるうずまき管で音波を、前庭で体の傾きを、半器官という場所で体の回転を感じ取る。目隠しをされても体の傾きを感じることができるのは、耳がこれらを適刺激としているからで、逆に耳が聞こえないと平衡感覚が低下する。

 

:奥にある網膜が適刺激であるを感じ取っている。勘違いしがちだが、水晶体(レンズ)と呼ばれる部分は光を感じるのではなく、光を集める役割をしている。

 

:適刺激は空気中の化学物質。鼻穴の奥の天井部分にある嗅上皮(きゅうじょうひ)という部分で空気中の化学物質を感じ取っており、これが嗅覚の正体である。嗅上皮には匂いを感じるための嗅細胞がある。ちなみに、水中の生物は水中の化学物質を感じ取っている。

 

:適刺激は液体の化学物質。舌にある味蕾(味覚芽ともいう)が化学物質を感じることによって生ずる。少し前までは、甘味は舌の先端、苦味は舌の奥・・・など、舌の領域ごとに感じとる味が違うという「味覚地図」の存在が囁かれてきたが、根拠のない誤りである。

 

皮膚触点・痛点・温点にて、それぞれ圧力・痛み・温度を適刺激として感じ取っている。痛点は皮膚に対する過度な圧力や温度痛覚として感じ取っている。

 

刺激の範囲

たとえ適刺激であっても、感じることができない場合がある。

なぜなら、受容できる刺激には限度があり、強すぎたり弱すぎる刺激は感じることができないからだ。

そして受容できる刺激の範囲は動物によって異なっている

 

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例えば、ヒトイルカ聴覚の範囲を比較すると上図のようになっている。

ヒトの可聴域は20~20,000Hz、イルカの可聴域は150~150,000Hzと言われている。

人の可聴域の上限である20,000Hzを超える音を超音波というが、イルカはこれを聴くことができる。

 

「聴こえない」って言っても、感じ取れていないだけで、音自体はちゃんと耳に入ってきてるよ!

 

 

次に、視覚について見てみよう。

 

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ヒトミツバチの視覚を比べてみると、ミツバチにはヒトが見えていない紫外線が見えていることが分かる。

ヒトの可視範囲は400~760nm、ミツバチは300~650mmである。

これにより、ヒトとミツバチでは、同じ花を見ても見え方が違うのだ。

 

※Hz(ヘルツ)とは?

Hzは、空気が一定時間において振動する回数を表す単位で、音の高さを示している。これが高くなればなるほど単位時間あたりの空気の振動数が多くなり、音は高音になる。

つまり、超音波は簡単に言ってしまえば「めちゃくちゃ高い音」なのである。

 

※nm(ナノメートル)とは?

光の波長を表す単位。実は光は電磁波の一種であり、波長はこの波の長さを表している。このうち、人間が目で認識できる400~720nmくらいの範囲の光を可視光線といい、それより短いものを紫外線、長いものを赤外線と呼んでいる。

 

まとめ

  • 外界の変化を感じ取るために生物が持つ主要な5つの感覚五感という

 

  • 通常の刺激は、感覚器官→感覚神経→脊髄→脳→脊髄→運動神経→筋肉など という順に伝わる

 

  • 反射は、脳を介せず、脊髄が命令を下していきなり運動神経に伝わる反応で、速度が速い

 

  • 感覚器官にはその感覚器官に適した刺激の種類や範囲があり、これを適刺激という

 

  • 受容できる刺激の範囲は動物によって異なっている