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神経とは何か? どのような種類がある?

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体中に張り巡らされている神経とは一体どのような役割をしているのだろうか。

また、神経にはどうやら種類が色々あって、生物によって神経の在り方も大きく異なるようだ。

本記事では、神経に関する基礎知識を重要な用語解説を中心にして学んでいく。

 

 

目次

 

神経とは何か

神経とは、神経繊維(後述)が束になった器官で、体中に張り巡らされ、末端と脳・脊髄をつなぐ役割をしている。

モノを触ったとき、眩しい光を見たとき、それら末端で得た情報は神経を通って脳や脊髄に伝達されるのである。

 

また、一口に"神経"といっても種類があり、大きく分けると中枢神経末梢神経がある。

 

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↓自律神経については以下の記事をどうぞ!

inarikue.hatenablog.com

 

神経系と神経組織

神経系とは、受容器から効果器への興奮を伝える神経に中枢神経を加えたまとまりを指す。

 

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脳や脊髄は神経組織である。

神経組織とは、神経細胞が集まったものだ。

脳や脊髄といった中枢神経も神経組織であるし、末梢神経も神経組織である。

 

神経細胞(ニューロン)

神経細胞のことをニューロンとも呼ぶ。

以下は、神経細胞(ニューロン)の基本構造である。

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神経細胞は時にいくつも集まって組織になり、神経組織を作る。

神経繊維も集まって束になり、普段私たちが"神経"と呼んでいる器官になる。

 

細胞には色々な形や特徴があるんだけど、その中でも神経細胞は特に変わっているね!

 

神経細胞の種類

 

神経細胞って、全てが上の図のような形なの?

 

神経細胞は、生物によってはまたちょっと別の形をしているものもあるのだが、基本は上図の形である。

しかし、実は神経細胞自体も大きく分けて2種類あり、場所によって異なる神経細胞が存在している。

それが軸索に髄鞘(ずいしょう)と呼ばれるものを持つ有髄神経と、持たない無髄神経である。

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では、髄鞘とは一体何なのだろうか。

説明が難しいので、上図の髄鞘を拡大して順を追って見ていこう。

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よく見てみると、髄鞘ひと繋ぎになっているのではなく、まるで串に刺さった団子のように不連続で存在している。

このとき、髄鞘間で軸索がむき出しになっている部分をランビエ絞輪という。

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もっと拡大して断面図を見てみると、髄鞘とされる部分にはがあることが分かる。

これはどういうことかと言うと、髄鞘とはある細胞が作る層構造の名称だったのである。

この髄鞘を形成する細胞をシュワン細胞という。

 

シュワン細胞とは、末梢神経にて髄鞘を形成する細胞である。

一方で、中枢神経髄鞘を形成する細胞はグリア細胞と呼ばれる。

髄鞘の有無によって情報が神経を伝わる速度に差が出てきます。詳しくは別記事で解説します。

 

ってことは、有髄神経で軸索に巻き付いていたものの正体は別の細胞で、それが作っていたものが髄鞘だったんだね!

 

神経による生物の分類

神経系は、原生動物や海綿動物では見られず、刺胞動物以上の動物に見られる

中でもヒトを含む脊椎動物では、神経系が特に発達している。

 

神経系の構造により、生物を分類することも可能だ。

神経系の構造を大きく分けると、散在神経系集中神経系に分かれる。

 

散在神経系と集中神経系

 

 まず散在神経系とは、1個1個の神経細胞が体全体に点在する神経系である。

ヒドライソギンチャクなどの刺胞動物などがこのタイプの神経系を持っている。

こうした生物たちは、脳のような神経のまとまりがなく神経細胞が1個ずつ点在しているのみなので、情報の複雑な処理はできない

 

次に集中神経系とは、神経組織が体内に存在する神経系をいう。

ヒトなどの脊椎動物などはこちらの神経系を持っている。

 

例えば、ヒトの最大の神経組織は「」だよね!

 

散在神経系と集中神経系の両者の違いは、神経細胞が単体で存在しているか、あるいは神経細胞がいくつか集まって神経組織という大きなまとまりを形成して存在しているかという違いである。

 

集中神経系の分類

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http://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/textlife/neuron.htmより引用

 

では、さらに細かく分類してみよう。

実は、集中神経系はさらに3つに細かく分類することが可能である。

神経細胞の塊である神経組織が体のどこにどのような状態で存在するのかによって分類されるのだ。

 

管状神経系

脳や脊髄といった神経の束が管状に存在している。

ヒトを含む脊椎動物はこの型が多い。

 

はしご系神経系

体節ごとに神経が対に左右に伸び、まとまった神経節を作っている

つまり、人間のように頭部や脊髄などの1か所に神経が集中しているわけではない。

脳などに神経が集中している場合、そこが損傷すると動けなくなり、致命傷となるが、はしご系神経系を持つ生物は神経のまとまりが体の節ごとに存在しているため、1か所が損傷しても体を動かすことができる

 

昆虫などの無脊椎動物がこのタイプの神経系を持つ。

頭部を切断してもしばらく生きていられる虫(ゴキブリやカマキリなど)がいるのは、こういった神経の仕組みを持つからである。

 

かご形神経系

神経が頭部に集中し、体には繊維状に通っているのみである。

プラナリアなどの扁形動物が例である。

 

まとめ

  •  神経とは、神経繊維が束になった器官で、体中に張り巡らされ、末端と脳・脊髄をつなぐ役割をしている

 

  • 神経には大きく分けて中枢神経末梢神経がある

 

  • 神経系とは、受容器から中枢神経へ刺激を伝える末梢神経と、中枢神経から効果器へ命令を伝える末梢神経に、中枢神経を加えたまとまりをいう

 

  • 神経細胞は多くが集まって組織なり、これを神経組織という

 

  • 脳や脊髄は神経組織の典型例であり、神経の塊である

 

 

  • 髄鞘シュワン細胞グリア細胞が作る膜組織で、有髄神経では層状になって軸索を覆っている

 

  • 体内での神経組織の有無より、生物を「散在神経系を持つ生物」と、「収集神経系を持つ生物」に分けることができる

 

 

  • 脊椎動物や多くの無脊椎動物は集中神経系を持ち脳や脊髄、神経節といった神経が集中した神経組織を持つ

 

  • 集中神経系は、神経組織が体の中のどこにあるかによって管状神経系はしご形神経系かご形神経系にさらに細分することができる