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ウニの発生はどのように進むのか?

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今回はウニをモデルに動物の発生について考えていこう。

ウニは一見とても生物らしからぬ見た目をしているが、発生の立派なモデルになっている。

少々難しい用語も出てくるが、分かりやすく解説したつもりなので発生の不思議と面白さを感じていただけたら嬉しい

 

目次

 

発生のモデル

ウニの卵は「等黄卵」と言い、発生を進めるための栄養が入った卵黄が、初期の卵では全体に散在しているというタイプの卵である。

実はヒトの卵も等黄卵であり、発生初期のプロセスがウニと同じなのである。

そういうわけで、ウニはヒトの発生を研究・観察するためのモデルとなっている。

 

ウニが発生の研究のモデルになっている理由はそれだけではない。

ウニの胚は透明な色をしており、非常に中身を観察しやすいのだ。

 

ただし、ウニは無脊椎動物で、対してヒトは脊椎動物であることを忘れてはならない。

ウニがモデルになるのはあくまで"発生の初期"だけなのだ。

 

↓卵の種類や卵割については、以下の記事を読んでおくと理解が深まると思います。

inarikue.hatenablog.com

 

受精~16細胞期

受精卵が初めての卵割(受精卵がおこなう体細胞分裂)をすると、真ん中で割れて同じ大きさの2つの細胞になる。

ここで、卵割によって増えた細胞を割球と呼ぶ。

※ここからは受精卵や胚の断面を見ていきます。

 

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2細胞期での割球の数は2つで、4細胞期に向かってそこからさらに2分される。

この卵割も等割なので、分裂後の割球の大きさは全て等しい

 

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4細胞期~8細胞期においても等割で卵割が起こるのだが、今までの分裂とは方向が異なり、横方向に卵割が起こる

 

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この地点で割球は8個で、次に16個になるための卵割をするのだが、このとき初めて等割ではなく不等割の卵割が起こる。

 

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つまり、分裂後の割球の大きさはバラバラで、最終的に大・中・小の3種類の割球が数個ずつできる

具体的には、大割球が4つ、中割球が8つ、小割球が4つできる。

中でも重要なのが4つの小割球で、将来肛門になる。

 

肛門の場所がここで決まるから、体の方向もおおよそここで決まるんだよ!

 

桑実胚~孵化

16細胞期以降も卵割は進み、割球は16個→32個→64個・・・と倍ずつ増えていく。

すると、ある程度まで増えた割球は受精卵の外側に移動し、内側に空洞ができる

この状態の胚を桑実胚(そうじつはい)、中の空洞を卵割腔(らんかつこう)と呼び、桑実胚の時期を桑実胚期という。

※形が桑の実に似ていることからこう呼ばれます。

 

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桑実胚期からさらに分裂が進むと、もう最初の2細胞期や4細胞期の頃と比べて1個あたりの割球の大きさはかなり小さくなり、胞胚期(ほうはいき)という時期に入る。

すると、周囲に毛のようなものが生えてきて、これを繊毛(せんもう)という。

 

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毛が生えたから何なのかというと、繊毛があることで、胞胚は動く(泳ぐ)ことができるようになるのだ

つまり、ここで初めて運動性を獲得し、運動をすることによって、胚を包んでいた受精膜を破って外に出ることができるようになる(孵化)。

 

そして、 この孵化をする胞胚期をもって卵割は終了し、以後の細胞分裂は卵割ではなく通常の体細胞分裂となる。

 

ウニは胞胚期で孵化するってことだね!

 

孵化~原腸胚

胞胚期で孵化するウニは、自力で動くことはできても、口がないためまだ餌を食べることができない

そこで、次に訪れるのは口ができるプロセスである。

 

まず孵化したウニの胚には、次に陥入という現象が起こる。

陥入とは、胚の下側(植物極側)の細胞が遊離し、その外側の細胞を内側に引っ張る現象で、この遊離した細胞を一次間充織という。

これによって原口という将来の肛門ができ、陥入の始まりから終わりまでの胚を原腸胚という。

 

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原口ができると、腸の原型である原腸も現れる。

さらに、原腸の先端からはまた細胞が遊離し(この細胞は二次間充織という)、陥入を進めていく。

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こうして原腸は、陥入によってどんどん伸びていき、やがて貫通する。

貫通して初めて口ができ、口と肛門が腸でつながるのである。

 

一番最初にできるのは口や腸じゃなくて肛門なんだね!

 

胚葉

陥入が終わると、胚の中の細胞は位置している場所によって3つのグループに分けられる

これを胚葉と呼ぶ。

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  • 外胚葉・・・胚の外側に位置する細胞のまとまり
  • 中胚葉・・・腔内に遊離した細胞で、一次間充織や二次間充織がこれに当たる
  • 内胚葉・・・原腸を作っている細胞たち

 

内胚葉は元は胚の外側にあった細胞層だったが、陥入によって原腸の側壁になった細胞たちである。

一方で外胚葉は将来表皮や神経になる。

また、中胚葉に分類されている一次間充織は、後に骨片となり、ウニのトゲになる

 

幼生から成体まで

口ができ、餌を食べられるようになると、胚は幼生と呼ばれるようになる。

このときの幼生は、正四面体のような形をしていることから、特にプリズム幼生と呼ぶ。

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プリズム幼生はさらに成長すると、骨片が発達して、トゲが目立つようになってくる。

この時期をプルテウス幼生と呼び、プルテウス幼生は変態をすることで私たちがよく知る成体のウニになる。

 

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プリズム幼生→プルテウス幼生→成体っていう流れだね!

 

まとめ

  • ウニは発生の初期がヒトと似ているため、ヒトの発生を研究・観察するためのモデルとなっている

 

  • 卵割によって増えた細胞を割球と呼ぶ

 

  • ウニの胚は16細胞期不等分裂をし、ここで将来肛門になる場所が決定する

 

  • ある程度まで増えた割球は受精卵の外側に移動し、内側に空洞ができる桑実胚期に移行する

 

  • 桑実胚期の次の胞胚期においてウニは運動性を獲得し、孵化する

 

  • 孵化後の胚は陥入が起こり、原腸胚となって原口原腸ができる

 

  • 陥入が進んで肛門と口が繋がると、自力で餌をとれるようになるため、幼生と呼ばれるようになる

 

  • 陥入が終わると、胚の中の細胞は位置している場所によって外胚葉、中胚葉、内胚葉に分けられる