卵には種類がある? 卵割とは?
受精によってできた受精卵には、どうやら生物よっていくつかの種類に分類されているらしい。
また、受精卵(本記事では卵と記載していく)にはちゃんと上下の方向性があったり、分裂の仕方も生物によって異なるらしい。
今回は、精子と卵が受精を終えてできた受精卵について見ていこう。
目次
卵には上下がある?
減数分裂でメスの卵が作られるプロセスを思い出してみると、1つの一時卵母細胞から、最終的に1つの卵と、3つの極体ができた。
減数分裂を終えたばかりの頃のメスの卵は、極体とくっつくような形で存在しているが、卵にはちゃんと上下の方向性がある。
それは単純に、極体がある方向を上側、ないほうを下側とし、それぞれ動物極、植物極と呼ぶ。
下図は、受精を終えた受精卵である。
極体がある上側、つまり動物極は将来生まれてくる子の頭部になり、植物極は足になる。
この上下の方向性が決まった卵から生物の体が作られていくのだ。
↓卵や精子が減数分裂で作られるプロセスは以下の記事で解説していますので、ご参考ください。
卵割と卵黄
受精によって受精卵が作られると、次に始まるのは受精卵自身の体細胞分裂だ。
受精卵は細胞であり、分裂を繰り返して殖えていく。
この、受精卵が行う体細胞分裂を専門用語で卵割と呼び、他の細胞が行う体細胞分裂とは少し異なっている。
卵割は、生命が一番最初に行う体細胞分裂でもあるんだね!
先ほどの図をもう一度見てみよう。
卵の中に何やらツブツブしたものがあるが、これを卵黄という。
卵黄は、卵が発生を進めるために必要な栄養が入ったカプセルのようなものである。
この卵黄はどの種類の生物の卵であるかによって、存在量と卵内での分布が異なっているという特徴がある。
↓体細胞分裂について知りたいという方は、こちらの記事で簡単に解説しています。
卵の種類
卵は、卵黄の存在量と卵内での分布の違いによって、いくつかの種類に分類されている。
つまり、生物によって卵は似ているものもあれば全然異なるものもあるし、その後の発生のプロセスも変わってくる。
以下は、卵を分類してまとめたものである。
面白いのが、ヒト(哺乳類)とウニ(棘皮動物)の卵が同類されていることである。
別の記事でも述べたが、ウニが発生のモデルや実験で使われる理由には、ヒトとウニの初期の卵がこのように似ているからという理由があるのだ。
卵割の違い
さて、ここまで卵黄によって卵がいくつかの種類に分類されることを述べたが、卵の種類が異なるということは、その後の卵割のしかたも異なってくる。
卵割のしかたを決めるのも卵黄で、実は卵黄には細胞分裂(卵割)に対して阻害的にはたらくという性質がある。
えっ!?どういうこと?卵黄って発生のための栄養じゃなかったの?
先のほうで、卵黄とは発生のための栄養を蓄えたカプセルのようなものだと説明した。
しかし、その一方で卵黄は細胞分裂に対しては阻害的に働くことが分かっている。
つまり、卵黄が多く分布している場所では卵割が起こらないのである。
生物種によって卵割が異なるのは、卵黄が卵割を阻害するからであり、しかもその卵黄は生物種によって分布が異なるからである。
では、生物種ごとに卵と卵割を見ていこう。
哺乳類、棘皮動物
私たちヒトを含む哺乳類と、ウニやヒトデなどの棘皮動物というグループに分類される動物たちは、等黄卵というタイプの卵だった。
これは、少量の卵黄が全体的に分布しているタイプの卵である。
綺麗に二つに卵割しているね
このような卵割が起こるのは、卵割に対して阻害的にはたらく卵黄の量が少量であることに加え、分布も偏りなく全体的になっているからである。
このような卵割のしかたを等割という。
両生類
次に、両生類を見てみよう。
両生類の卵は、端黄卵といって、植物極側に少量の卵が偏って分布しているタイプの卵であった。
卵黄がすくない部分は綺麗に卵割がされるが、卵黄が集中している下部では卵割が阻害されてしまう。
すると卵割の結果、大きさが不揃いな細胞ができてしまうという特徴がある。
このような卵割のしかたを不等割という。
鳥類、爬虫類、魚類
哺乳類と両生類の卵割は少し似ていたが、鳥類などになってくると大きく違ってくる。
これらの生物は卵黄の量がかなり多く、卵黄がないのは上側のちょっとの部分くらいである。
こちらもそういう意味で端黄卵と呼ばれている。
ここまで卵黄が多いと、卵割が起こるのは部分的になってしまう。
このような卵割のしかたを盤割という
ニワトリの卵を想像してみても、卵黄大きいもんね!
甲殻類、昆虫
最後に、甲殻類や昆虫類について見ていこう。
彼らの卵は、中心部に卵黄が集中している、心黄卵というタイプの卵であった。
このタイプの卵では中心部分に卵黄があるので、卵割は卵の表面で起こる。
このように、表面で卵割が進んでいく卵割のしかたを表割という。
卵割のまとめ
では、これまで出てきた卵割を全てまとめてみよう。
ここで新たに、全割と部分割というワードが出てきているが、これは前者2つは一応卵全体が分割されるのに対し(両生類は不等割であるが)、後者2つは卵黄の量が多いために卵割が部分的にしか起こらないので、こういった分類がされているということだ。
同調分裂
冒頭のほうで、卵割は受精卵が行う体細胞分裂であり、けれども普通の体細胞分裂とは少々異なる分裂だと述べたことを覚えているだろうか。
実は、卵割は、通常の体細胞分裂よりも分裂速度が速いという特徴があるのだ。
なぜ早いのかというと、通常の体細胞分裂ではあるはずのG1期とG2期がないからである。
通常の細胞であれば、分裂期とそうでない時期を繰り返し、分裂期で実際に分裂をし、分裂をしていない時期で細胞を成長させている。
体細胞分裂は、1つの細胞が2つに分裂するから、分裂したての2つの細胞は大きさが小さいんだよ!
しかし卵割では、その細胞を成長させる時期に相当するG1期やG2期が見られないために、全ての細胞がほぼ一斉に分裂を行うという現象が起こっている。
このような分裂を同調分裂という。
例えば、ヒトの体にある細胞は部位によって分裂速度に違いがあったよね!がん細胞は凄まじく早かったり、肝細胞は1年に1回くらいだし・・・
細胞を成長させるためにかかる時間は様々であり、これによって場所場所の細胞の分裂の速度に差が生じる。
G1期やG2期がないということは、その時間がないということであり、細胞ごとの分裂速度の差がない理由となっている。
もう1つ、卵割では細胞の大きさを成長させる時期がないので、卵割をするたびに細胞はどんどん小さくなっていくという特徴もある。
卵割って不思議だなあ
↓細胞分裂については以下の記事でもまとめています。
まとめ
- 受精卵には方向性があり、極体がある方向を上側、ないほうを下側とし、それぞれ動物極、植物極と呼ぶ
- 卵黄は、卵が発生を進めるために必要な栄養が入ったカプセルのようなものである
- 卵割は、受精卵が行う体細胞分裂である
- 卵黄の存在量と分布によって卵割が決まり、それは生物種によって異なる
- ヒトとウニは同じく卵が等黄卵であり、発生の初期が似ている
- 卵割は通常の体細胞分裂よりも分裂速度が速く、G1・G2期もなく、同調分裂をすることが特徴である