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タンパク質とは何か? 体の中でどのような役割をしている?

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タンパク質は、三大栄養素のうちの1つになっているくらい重要な栄養素である。

同時に、私たちの体の様々な部分を作り、体内で非常に多くの役割を担っている。

今回は、タンパク質が体の中でどのような役割を果たしているのか、そしてそもそもタンパク質とは何かということを解説していこう。

 

目次

 

タンパク質とは何か?

タンパク質は、アミノ酸でできた化合物である。

 

タンパク質はセントラルドグマというプロセスによって、細胞内でDNAが持つ遺伝子をもとに作られる。

 

このタンパク質が作られるプロセスは、人間だろうが大腸菌だろうが植物だろうが全ての生物共通である。

 

ヒトにはおよそ25,000種もののタンパク質があると言われているが、実はその多くは機能が分かっていない

 

ヒトのゲノムは2003年に全て解読終了しているので、どこの遺伝子がタンパク質を作るところなのかは研究の経緯から大方の予想はついている状態だという。

 

しかし、非常に多くの機能を持つタンパク質は、その全てが解き明かされたわけではないのだ。

 

↓タンパク質が作られるプロセスについてはこちら

inarikue.hatenablog.com

 

構造

タンパク質は20種類アミノ酸でできている。

 

そしてその基本構造は、いくつものアミノ酸が連結し、それが立体構造をとっている

 

アミノ酸はタンパク質を作るパーツなのだ。

 

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なお、タンパク質は熱に弱い性質を持つ。

 

高温にさらされると、タンパク質の立体構造が変形してしまい、本来の性能を発揮できなくなってしまうのである。

 

タンパク質の役割

タンパク質は体の中でどのような役割をしているのか。

 

答えは「ほぼ何でもやっている」である。

 

実は、タンパク質は非常に多種で多機能であるため、これだ!という役割を説明することは難しい。

 

例えば、私たちの皮膚も、髪の毛も、筋肉もタンパク質でできている。

 

また、酵素やホルモン、私たちの免疫を担う抗体ですらタンパク質でできている。

 

いくつかのタンパク質を紹介してみよう。

 

  • クリスタリン・・・目の水晶体を作る透明なタンパク質。これがダメになると白内障の原因になる。

 

  • コラーゲン ・・・皮膚の弾力性や強度を作るタンパク質。減少するとシワの原因になる。

 

  • リゾチーム ・・・涙に含まれる酵素。細菌の細胞壁を分解してしまう殺菌力を持つ。

 

  • ヘモグロビン・・・赤血球に含まれ、酸素と結合する性質を持つ。

 

  • アクチンン、ミオシン・・・筋肉の収縮運動に関係するタンパク質。

 

このように、タンパク質は私たちを含め、様々な生物の体内のいたるところで働き、様々な機能を発揮しているのである。

 

栄養素としてのタンパク質 

体内でセントラルドグマによって作られるタンパク質も、食べ物から摂取するタンパク質も、物質としては基本的に同じものである。

 

ただし、体外から食べ物として摂取されたタンパク質は一度細かく分解され、自分自身に必要なタンパク質に再構築される

 

摂取したタンパク質がそのまま働くわけじゃないんだね!

 

先に、タンパク質は20種類のアミノ酸からできていると述べた。

 

体外から摂取したタンパク質は、どんなものであれ必ずアミノ酸まで一度分解される。

 

そしてこの分解物であるアミノ酸が、後で生体内で新しく作られるタンパク質の材料となる。 

 

この仕組みを知っていれば、食品選びに関してあなたは少し賢くなるかもしれない。

 

例えば、しばしば健康食品として挙げられ、「コラーゲンたっぷり!」などという宣伝文句でもおなじみのコラーゲンは、食べたとしてもアミノ酸まで分解され、そのまま使われるということはないし、分解されたアミノ酸が必ずしも全て別のコラーゲンになるわけでもない。

 

一応アミノ酸にまでバラバラにされ、体の他のタンパク質のパーツとしては使われるので、コラーゲンを摂取することが無意味であるということでは決してないのでご安心いただきたい

 

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狙ったタンパク質を摂取したとしても、それが狙い通りのタンパク質になってくれるかどうかは分からないんだね

 

コラム:タンパク質とアミノ酸のリサイクル

人間は毎日80グラムのタンパク質を食べる必要がある。

 

体内でタンパク質を作るために、分解物のアミノ酸が必要だからである。

 

タンパク質を摂取する究極的な目的はアミノ酸なのだ。

 

しかし、体内では毎日300グラムのタンパク質が作られていると考えられている。

 

つまり、タンパク質300グラム分のアミノ酸が必要なのに、摂取する必要があるタンパク質は80グラムで大丈夫なのである。

 

残りの220グラムはどう調達しているのだろうか。

 

実は私たちの細胞は、細胞内にあるタンパク質を分解して、アミノ酸を再利用している。

 

残りの220グラムの正体はこれだったのだ。

 

220グラムは細胞が自らリサイクルしているので、実際に摂取する量は80グラムで良いのである。

 

このように、細胞がアミノ酸のリサイクルを行うおかげで、私たちは食べ物を1日くらい全く食べなくてもただちに死ぬことはない

 

山で遭難したときなど、何も食べずに水だけで一週間は生きられるのは、細胞が細胞内にある不要なタンパク質を分解して、摂取していない分のタンパク質まで補ってくれているからなのである。

 

まとめ

  • タンパク質は、アミノ酸できた化合物であり、熱に弱い

 

  • そしてその基本構造は、いくつものアミノ酸が連結し、それが立体構造をとっている

 

  • ヒトにはおよそ25,000種もののタンパク質があると言われているが、実はその多くは機能が分かっていない

 

  • タンパク質は非常に多種で多機能であるため、その役割は「ほぼ何でもやっている」である

 

  • 体内でセントラルドグマによって作られるタンパク質も、食べ物から摂取するタンパク質も、物質としては基本的に同じものである

 

  • ただし、体外から食べ物として摂取されたタンパク質は一度細かく分解され、自分自身に必要なタンパク質に再構築される

 

  • 細胞には、細胞内にある不要なタンパク質を分解してそこからアミノ酸を得て、新たなタンパク質を作る材料にするという、アミノ酸をリサイクルする機能がある