タンパク質はどのようにしてできる? 転写、翻訳ってなに?
生物、細胞がどのような性質や特徴をもつかは、体内でどのようなタンパク質が作られるかによって決まる。
そしてどのようなタンパク質を作るかを決めているのがDNAである。
今回は、タンパク質はどのようにして作られるのか、その流れを簡単に解説していく。
転写、翻訳、RNAなど、ボリューミーな内容になっているが、分かりやすくまとめつもりなので少しでも理解が深まれば幸いである。
目次
セントラルドグマ
何だかゲームや小説に出てきそうなこの言葉。
セントラルドグマとは、分かりやすく言うとタンパク質が合成される一連の流れを言う。
図示すると以下のような感じだ。
上記の流れ、つまりセントラルドグマは全ての生物に共通して見られ、その過程で必須であるRNAも全ての生物に見られるものである。
DNAから直接タンパク質が出てくるわけじゃなく、いくつかのプロセスがあるんだね!
転写
DNAはヌクレオチドが鎖状につながったものであり、A、T、G、Cの4種類の塩基が並んでいる。
転写は100%まんまコピーされるわけではない。
そこで、②の転写の塩基配列の部分をもう少し詳しく見てみると・・・
DNAどうしが結合するときと同じパターンで、DNAの一部がRNAに転写されるときは、AはT、GはCに置換されて転写されるのである。
しかし、赤く目立たせた部分のようにちょっと違うところがある。
RNAでは、T(チミン)の代わりにU(ウラシル)という塩基が使われるのだ。
DNAどうしが塩基部分で結合したときはA・T、C・G同士が必ず結合したけど、RNAへの転写のときはAの置換はUになるんだね。
例えばDNAの塩基配列が
ATGCCTAGならば、
UACGGAUC
という配列でRNAに写しとられるのである。
↓転写についてもっと詳しく知りたい方は以下の記事もどうぞ!
翻訳
次に、転写によってDNAの一部をコピーしたRNAでは翻訳という作業がおこなわれる。
翻訳とは、RNAの情報からタンパク質を合成する過程をいう。
以下は、転写を終えたRNAを簡易的に示したものである。
このRNAに対し、3つの塩基ごとに決まったアミノ酸が1つ指定され、運ばれてくる。
これが翻訳である。
このように結合して、まるでアミノ酸の串団子のようになった状態のものが折りたたまれる。
イメージで言うと、針金を折り曲げて立体を作るように、アミノ酸がつながったものが折りたたまれて立体構造を作っていく。
そしてさらに、折りたたまれて立体になったものがさらにいくつか集まって合体し、タンパク質になる。
こうして、DNAが持つ遺伝情報から具体的なタンパク質が作られていく。
※このDNAの情報がRNAに転写されてタンパク質が作られる流れは、核を持たない原核生物(原核細胞)も同じです。
↓以下の記事では、翻訳についてもう少し詳しく書いています。
生命の統一原理
セントラルドグマは、別名で「生命の統一原理」と呼ばれる。
一体どういう意味なのだろうか。
先にも述べたように、セントラルドグマは地球上の全ての生物に共通して見られる仕組みである。
人間、魚、植物、キノコ、バクテリアなど、見た目や生態がまるで違う生き物であっても、その根本で行っていることは皆同じなのである。
だから生命の"統一"原理って言うんだね!
このことは全ての生命が共通の祖先から生まれたことと大いに関係がある。
進化や分岐が進み、今や一見無関係に見える生物でも、その出発点が同じだからこそ、セントラルドグマは全ての生物に共通して見られるのである。
RNAとは何か?
RNAとはリボ核酸の略で、DNAとは構造が似ているものの、糖や塩基が異なる。
RNAとDNAの違い=糖や塩基の違いなんだね!
実はRNAにはいくつか種類があり、転写に関わるRNAは、DNAから受け取った遺伝子情報をコピーし、伝える役割をしている。
よってこの転写に関わるRNAを特にmRNAと呼び、頭の"m"は「伝達者」という意味の英語の"messenger"の頭文字である。
なお、RNAはDNAのような二重らせん構造をとらず、ただの一本鎖である。
↓DNAの詳細については、以下の記事も併せて読むとより理解が深まると思います。
コラム①:なぜDNAとRNAの両方を使うのか?
タンパク質を作るときにDNAとRNAを使うはどうして?全部DNAでやったらダメなの?
確かに、タンパク質を作るための転写や翻訳といったプロセスには、RNAが必ず間に入っている。
その理由は、「性質が異なるDNAとRNAを使い分けたほうが都合が良いから」である。
実は、DNAに比べてRNAはすぐに分解されてなくなりやすい性質がある。
この性質を専門的には「不安定」と言ったりするのだが、RNAは不安定な物質なのである。
ここで、DNAとRNAの組成の構造の違いを思い出してみよう。
DNAは二重らせん状の構造で、RNAは一本のヒモ状の構造である。
さらに、これらを構成している塩基も糖も違う。
このように、DNAとRNAはその構造が異なるため、DNAは分解されにくい(安定していると言う)一方で、RNAは分解されやすい(不安定)という性質の違いがある。
そうした性質を踏まえると、DNAは安定的なので遺伝情報を常に(長期的に)保管しておくのに都合が良い。
一方で分解されやすいRNAは、転写など一時的に遺伝情報を運用のするのに都合が良い。
遺伝情報のコピーを持ったRNAがいつまでも存在していると、タンパク質が必要以上に作られたりして、悪影響が出る可能性があるからだ。
こうして、性質の異なる両者を使い分けることで、タンパク質の生成を効率的に行うことができるのだ。
コラム②:なぜ塩基が異なるのか?
では塩基についても考えてみよう。
塩基はDNAではA、T、G、Cが使われ、RNAではA、U、G、C、が使われる。
これはなぜだろうか。
実はDNAの塩基は自然に変質してしまうことがよくあり、特にCがUに置き換わってしまうことが頻繁にある。
変化してしまった塩基を修復する酵素が存在するほどである。
もしDNAの塩基にUが使われていたらどうなるだろう。
おそらく、もともとUなのか、Cが変化したUなのか見分けがつかなくなる。
そこで混乱がないようにDNAでは代わりにTを使っているのである。
一方、RNAは合成や分解などが頻繁に起こり、反応性が高いので、Uを使うことはエネルギー効率的にもメリットがあると言えるだろう。
ちなみに、TはUから作られている。
自然に変化してできたUをそのまま使えばエネルギー節約になるかも!
まとめ
- DNAからいくつかの段階を得てタンパク質が作られる過程をセントラルドグマという
- DNAの遺伝情報がRNAに写し取られることを転写という
- RNAは塩基や糖がDNAと異なる以外は基本的に同じであり、二重らせん構造はとらず一本鎖である
- DNAは長期的に遺伝情報を保管しておく役割、RNAは一時的に遺伝情報を保持するという異なる役割のため、両者は構造が異なっている