呼吸とは何か? 酸素を使わない呼吸とは?
「呼吸をする」というと、一般的には酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すことである。
しかし、それは生物一個体レベルの話。
では、本日はもっと生物学的に呼吸というものを考えていこう。
※今回の記事は以下の代謝の話と併せて読むとより理解が深まります。
暇な方は以下の記事も読んでみてください。
目次
呼吸=息をすること?
呼吸といえば、一般的には酸素を吸って二酸化炭素を吐くこと。
しかし、これはある一個体の生物の全体を見たときの話である。
生物の体を作っているのは細胞であり、呼吸をしているのは細胞である。
私たちが酸素を吸うのは細胞の呼吸にそれが必要だからであり、二酸化炭素は細胞の呼吸の結果出てきたものを口から吐き出しているに過ぎないのだ。
今回解説するのは細胞レベルでの呼吸の話である。
呼吸とは?
呼吸とは生物の代謝の一種であり、摂取した有機物を分解してエネルギーを獲得する一連の行為だ。
私たちは肉を食べたり、魚を食べたり、野菜を食べたり、外部から有機物を摂取する。
そして摂取した有機物を使ってエネルギーを作り、筋肉を動かしたり、体温を維持したりして生きている。
摂取した有機物は放っておいても我々のエネルギーになるわけではなく、酸素などを利用して化学反応を起こし、有機物を必要なエネルギーに変えている。
この一連の行為が呼吸なのである。
呼吸にも種類がある?!
呼吸には大きく分けて
- 酸素を使う呼吸
- 酸素を使わない呼吸
の2種類がある。
私たちは酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すことが呼吸だという感覚が当たり前なので、特に「酸素を使わない呼吸」という言葉には違和感を覚えるだろう。
呼吸=酸素が絶対必要ということではないんだね。
酸素を使う呼吸
人間を含め、ほとんどの動植物がおこなっている呼吸だ。
これは生物の細胞内にあるミトコンドリアという器官がおこなっている。
我々人間を例にとって酸素を使う呼吸の仕組みを説明してみよう。
まず、私たちは食べたり飲んだりして体の中に有機物を取り入れる。
体内に取り込んだ有機物のうち、特に呼吸に使われるのは糖である。
糖はミトコンドリアに入る前に一度分解され、それから細胞内の器官であるミトコンドリアに入る。
※ここでの「糖」をグルコースと呼ぶ。
その際、水素と二酸化炭素が取り出されるが、二酸化炭素はここでそのまま放出される。
一方で水素は私たちが外から吸った酸素と科学反応して水ができる。
この水ができる科学反応によって大きなエネルギーが放出される。
この放出されたエネルギーを使って私たちは生きている。
以上の流れを簡単な反応式で書いてみると分かりやすい。
ATPは上記で述べた、水と酸素の反応によって放出されたエネルギーのことを指す。
確かに、有機物である糖が分解されてエネルギーができてるね!
酸素を使わない呼吸
酸素を使わない呼吸は主に微生物がやっている。
また、酸素を使わない呼吸には種類があり、代表例として発酵がある。
発酵は何だか聞いたことがあるね!発酵食品とか!
発酵とは?
発酵は微生物たちがおこなう酸素を使わない呼吸である。
発酵という言葉を聞いて、ヨーグルトやチーズ、お酒を真っ先に思い浮かべる人も多いだろう。
事実こういった食品は、微生物の呼吸である発酵を利用して作られているからだ。
アルコール発酵
酵母菌という菌がおこなっている発酵。糖(グルコース)からエタノールと二酸化炭素、そしてATP(エネルギー)を作る。
エタノールはアルコールだよね。これを利用してお酒ができるのか!
乳酸発酵
乳酸菌という菌がおこなっている発酵。グルコースから乳酸とATPを作る。
グルコース → 乳酸 + ATP
微生物はエタノールや乳酸を作るのが目的で呼吸をしているのではなく、あくまでATP(エネルギー)を得るために呼吸をしている。
我々人間はそういった微生物たちの呼吸によって生まれる副産物的なものをありがたく利用させてもらっているのだ。
まとめ
- 呼吸には酸素を使う呼吸と酸素を使わない呼吸がある。
- 酸素を使わない呼吸は主に微生物が行っており、その代表例が発酵である。
- 微生物の発酵の過程で作られたアルコールや乳酸を人間は食品として利用している。
酸素を使って呼吸をする生物も、酸素を使わない生き物も、必ずグルコースを使って呼吸を行っているんだね。