免疫には他にどのようなものがある? 拒絶反応、アレルギー、エイズなど!
生物の体には免疫機能が備わり、体を守っているが、この免疫が時として体を好ましくない状態に陥れてしまうことがある。
今回は自然免疫や獲得免疫の以外の、様々な免疫反応を見ていこう。
※今回の記事は免疫に関する基礎知識を持っていることを前提に解説しているので、以下の記事もぜひ参考にしてください
目次
移植組織と免疫
皮膚や臓器など、他人の組織を自分の体に移植すると、それを体が異物と認識して攻撃する。
これを拒絶反応という。
移植組織は抗原と認識され、しかも移植された組織はそれ自体が巨大であるため、細胞性免疫がはたらく。
するとキラーT細胞がやってきて移植組織の下の皮膚ごと食べ、組織は定着せずに脱落してしまう。
これが臓器などの場合も、機能できなくなるくらい攻撃を受ける。
二次応答
二次応答による免疫反応の強化は、実は拒絶反応に対しても見られる。
これはマウスを使った実験で確認されている。
あるマウスXにマウスYの皮膚を移植したところ、10日で脱落した。
その後、また同様にマウスYの皮膚を移植すると、今度は3日で脱落したのである。
※抗体や二次応答についてはコチラ
アレルギー
免疫反応が過敏に起こることによって生じ、体に様々な異常が見られる反応。
アレルギーを引き起こす抗原をアレルゲンという。
アレルギーには症状が出るまでの時間によって、即時型と遅延型の2種類がある。
即時型は文字通り、アレルゲンが体内に入ったりすると即座に反応が起こる。
花粉症や食物アレルギーが例である。
一方で遅延型は、反応が出るまでに1〜2日かかり、1ヶ月後もあとになって反応が出るものもある。
金属や漆アレルギーが例で、汗などにアレルゲンとなる成分が溶け込んで反応する。
アナフィラキシーショック
即時型のアレルギーの中でも、特に激しい反応をアナフィラキシーショックと呼ぶ。
即時型のアレルギーを引き起こすアレルゲンに接すると、個人差はあれど重篤なショック症状を起こすことがある。
例えば、ダニにアレルギーを持つ人がハウスダストを吸ってしまったとき、その人の体はアレルゲンを吸い込まないために、なんと呼吸を止めてしまう。
また、ハチ毒やヘビ毒を注入された人の体が、毒が全身に回らないよう、血液循環の要である心臓を止めてしまう。
このように、アレルゲンに対して体が極端な反応を起こしてしまうのがアナフィラキシーショックなのである。
自己免疫病
自己免疫病とは、自己であるはずのものに対して、何らかの理由で免疫細胞が攻撃を始める病気である。
自己免疫病は自己形成の例外である。
自己の成分に対して抗体が結合したり、キラーT細胞が攻撃をしてしまうことで引き起こされる。
関節リウマチ
関節に痛みや炎症が生じ、ひどくなると骨が破壊されたり、関節が変形してしまう病気。
女性に多い病気でもある。
我々の関節は膜につつまれていて、この膜を免疫細胞が異物とみなして攻撃することによって炎症などが生じる。
同じくリウマチという名前がつく「リウマチ熱」という病気もあるけれど、関節リウマチとは全然違う病気だから注意してね!
バセドウ病
別名で甲状腺機能亢進症とも呼ばれる。
抗体が甲状腺にくっついてしまうことで、甲状腺が刺激され、脳から指令が来たと勘違いし、ホルモンを大量に分泌して代謝を上げまくる病気である。
原因は免疫細胞によって作られる抗体。
本来は抗原を標的にする抗体・・・ではなく、自己を標的にしてしまう抗体が作られることによって起こる。
甲状腺とは脳から指令を受けてホルモンを分泌し、代謝を維持する役割を持つ場所だ。
過剰なホルモンが分泌され、代謝が上がりすぎてしまうと、やたら汗っかきになったり、しっかり食べているのに体重が減るなどの異常が出る。
眼球が飛び出すなどの症状が出る場合もあるよ!
AIDS
ほとんどの人が一度は聞いたことがあるだろう病気で、通称エイズ。
後天性免疫不全症候群とも呼ばれ、詳細は分からないが感覚的に何となく恐ろしい病気だと思っている人も多いだろう。
原因はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)。
HIVは感染者の血液や精液、母乳などに多く含まれ、これらが体内に入る(性行為をする、注射器を使いまわすなど)ことで感染する。
エイズ感染のプロセス
エイズはこれまで紹介してきたアレルギーや自己免疫のような、免疫が暴走したものではなく、免疫そのものが失われてしまう病気である。
HIVは体内に侵入すると、獲得免疫を司るヘルパーT細胞に感染し、ヘルパーT細胞が死んでしまう。
これは、獲得免疫が機能不全になることを意味する。
ヘルパーTは獲得免疫において、樹上細胞から直接抗原提示を受ける唯一の免疫細胞だ。
そして実はヘルパーT細胞は一度死んでしまうと、再生産が二度とおこなわれない。
理由は、ヘルパーT細胞は胸腺という場所で作られるのだが、その胸腺が5〜6歳頃に消滅してしまうからである。
つまり、HIVに感染すると重要な免疫の1つである獲得免疫が全てストップしてしまうのだ。
ここで注意したいのは、不全になるのはあくまで獲得免疫であり、自然免疫は機能し続けるので抗原に対して全く無力になるというわけではないということだ。
免疫が一切なくなるわけじゃないよ!
ただし、自然免疫は加齢とともに低下する。
エイズが恐ろしい病であることに変わりはない。
まとめ
- 皮膚や臓器などの移植組織に対してはたらく免疫を特に拒絶反応という
- 二次応答による免疫の強化は拒絶反応においても見られる
- 免疫反応が過敏に起こることによって生じ、体に様々な異常が見られる反応をアレルギーという
- アレルギーには即時型と遅延型があり、即時型の中でも特に激しい反応を起こすことをアナフィラキシーショックという
- 自己免疫病とは、免疫細胞が何らかの理由で本来は抗原でない自己の細胞などを攻撃してしまう疾患である
- 自己免疫病には関節リウマチやバセドウ病などがある
- AIDSは獲得免疫が機能不全になってしまう病気で、HIVというウイルスが原因で起こる