生きるものに魅せられて

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生物はどのようにして子孫を残すのか? 生殖にはどのようなものがある?

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生物にとって生殖は最も重要な行為である。

たとえどんなに体が巨大であっても、強力な毒を持っていても、種として生き残らなければ意味がない。

だから生物たちは様々な生殖手段を工夫し、今現在に至るまで生き残ってきた。

今回は生物の生殖について簡単に学び、その驚くべき繁栄戦略を垣間見てみよう。

 

目次

 

 

生殖とは何か

生殖は、簡単に言ってしまえば子供を作ることである。

生物が次の世代を生きていく新しい個体を作ること、それが生殖だ。

 

生殖は生物の体の中にある生殖細胞によっておこなわれる。

生殖細胞とは、生殖のために作られた特別な細胞のことだ。

そしてその生殖細胞を作っているのは精巣卵巣である。

 

生殖細胞

生殖細胞は分裂を繰り返し、配偶子胞子になる。

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配偶子とは、同士が合体して一つの新しい個体を作る細胞である。

精子がまさにこれである。

特に精子は自ら泳ぐ(運動する)ことができる、運動性を持った細胞でもある。

 

精子卵子って細胞なんだね!

 

一方で、合体をせず単体で新個体を形成できるものを胞子という。

胞子と聞くとキノコを思い浮かべる方も多いだろう。

主にシダ植物コケ植物菌類(キノコ)などが胞子を作って生殖をおこなう。

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adegeによるPixabayからの画像

 

有性生殖

単に「生殖」と言っても、生殖には有性生殖無性生殖がある。

有性生殖配偶子を形成しておこなう生殖で、配偶子(例えば精子と卵)が接合することで新たな個体が生じる。

 

有性生殖では、それぞれ異なる遺伝子を持つオスとメスから新個体が生まれる。

異なる遺伝子同士の組み合わせから子が生まれるのだ。

結果、生まれた子は親とは異なる遺伝子を持つことが多くなり、バリエーションが増え、環境の変化に適応しやすくなる

 

だがデメリットも当然存在する。

生殖をするために精子を持つオスと、卵を持つメスが出会わなければならないことだ。

そのため増殖のスピードも無性生殖に比べて遅かったりする

 

無性生殖

有性生殖とは異なり、配偶子を作らずに子孫を残す生殖方法無性生殖という。

無性生殖をおこなう生物は、胞子を作ったり、分裂して自分のクローンを作る

そのため、増殖スピードがかなり早いというメリットがある。

しかし、生まれてくる個体は基本的に自分のクローンなので、環境の変化には弱い

 

ところで、無性生殖にはいくつかの種類がある。

これからはいくつかの無性生殖の形態についてみていこう。

 

分裂

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LoggaWigglerによるPixabayからの画像

分裂は、1匹の個体が母体となり、その母体から体細胞分裂によって同じ大きさの新個体が生じる無性生殖の一種である。

2つの個体に分かれる分裂を二分裂、多数に分裂することを多分裂という。

 

身近な例をいうと、二分裂をおこなう生物にはゾウリムシ、アメーバ、イソギンチャクなどがいる。

 

ゾウリムシは縦に2つに裂けて分裂するんだって!ひえ~!!

 

一方で、多分裂を行う生物にはマラリア原虫などがいる。

マラリア原虫は名前から想像できる通り、マラリアを引き起こす病原体である。

マラリアは、が媒介者となって引き起こされる危険な感染症である。

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マラリア重篤な症状を引き起こす理由も、この分裂の多さにある。

 

出芽

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江の島水族館にて

出芽は、母体から小さな個体が出現・分離し、新たな個体となる生殖である。

分裂とは異なり、母体からは小さな個体が生じ、生育する。

ヒドラ、カイメン、サンゴ、酵母などがこのような殖え方をする。

 

栄養生殖

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croisyによるPixabayからの画像

主に植物に見られる生殖で、根や茎などの体の栄養器官が分離し、新しい個体となる。

イチゴサツマイモ、ジャガイモなどが例である。

 

栄養生殖も無性生殖の一種なので、増えた個体は当然親固体のクローンである。

これを利用し、美味しいジャガイモやサツマイモをとって増やすと美味しいものが簡単にできる。

 

ちなみに人間は、サツマイモはを、ジャガイモはの部分を食べているよ!

 

 ↓サツマイモとジャガイモ、イチゴについて、雑学記事を書いていますので興味がある方ははどうぞ!

inarikue.hatenablog.com

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胞子生殖

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MrsBrownによるPixabayからの画像

胞子を作っておこなう生殖で、胞子が発芽・生育して新たな個体になる。

先にも軽く触れたが、菌類コケ類、コンブアオカビなどがこのような生殖方法をとる。

 

コラム:受精と接合

配偶子が合体することを接合または受精という。

両者は言葉の意味が似ているのだが、違いはあるのだろうか。

 

実は、受精は意味が少々限定されている。

受精は接合の一種であり、精子と卵が合体することを特に受精と呼ぶのだ。

つまり、配偶子が合体するという意味では、普通は接合を使う

 

有性生殖をおこなう生物は配偶子を作るが、その作る配偶子は生物によって様々である。

精子と卵はすべての生物が共通の形をしているわけではないのだ。

 

だから、配偶子の中には、精子と卵が全く同じ姿をしていて(同形配偶子という)、両者の見分けがつかない場合もある。

 

受精は、配偶子が精子なのか卵なのか、はっきりと見分けがつく場合で、それらが合体した場合のみを指す言葉なのである。

 

ちなみにヒトを含め多くの多細胞生物では、精子と卵が違った見た目をしているので、それらが合体をすれば受精である。

一方、例えばケイソウやアオミドロといった生物は配偶子が同形なので、それらの合体の際には接合と表現する。

 

まとめ

  • 生物が次の世代を生きていく新しい個体を作ることを生殖という

 

  • 生殖は生殖細胞という特別な細胞でおこなう

 

  • 生殖細胞は分裂を繰り返し、配偶子胞子になる

 

  • 配偶子とは、同士が合体することで新個体を形成し、精子がこれに当たる

 

  • 胞子はそれ自身が単体で新個体になっていく

 

  • 生殖には有性生殖無性生殖という、配偶子を作るかどうかの違いで2つに分けられる。

 

  • 有性生殖では配偶子形成を伴い、異なる遺伝子を持つもの同士から子が生まれる

 

  • 無性生殖では配偶子は形成されず胞子や自分のクローンを作って生殖がおこなわれる