生きるものに魅せられて

自然・生物の知識を分かりやすく発信するブログ

精子と卵はどのようにしてできるのか? 両者のでき方の違いとは?

f:id:inarikue:20191203091822j:plain

私たち人間を含め、多くの生物が生まれるためには精子と卵が受精する必要がある。

さらに受精には精子と卵が必要で、精子はオスが作り、卵はメスが作る。

では、これらはどのようにしてできるのだろうか。

今回は精子と卵について見ていこう。 

 

目次

 

 ↓生殖については、こちらの記事で広く浅く解説しています。

inarikue.hatenablog.com

 

 

精子

精子は、動物のオス(男の子)が作る雄性配偶子である。

今回は、私たち人間を例に精子について見ていこう。

精子の構造

精子の体(?)は分割すると頭部・中片・尾部の3つのパーツに分けることができる。

※色は私が勝手につけています。

f:id:inarikue:20191104214054p:plain

先体・・・元はゴルジ体で、卵と結合するためのタンパク質を分泌する。

 

精核・・・精子

 

ミトコンドリア・・・運動するためのエネルギーを作る。

 

中心体・・・微小管(細胞骨格)の起点となり、ここから尾部に向かって微小管が伸びる。精子はこの微小管がないと運動できないため精子を作る生物の細胞には必ず中心体がある

 

どのようにして作られる?

母親が妊娠し、胎内で子が育っていく中で精子の元が作られていく。

しかし、精子は最初から"精子"という形ではなく、始原生殖細胞という細胞から作られる。

 

男の子の中に始原生殖細胞ができると、将来精巣になる場所へと移動し、ホルモンにさらされて分化するのだ。

始原生殖細胞精子なるか卵になるかまだ決まっていない細胞で、これが男の子の体の中できれば精子に、女の子の体の中にできれば卵に分化していきます。

 

f:id:inarikue:20191104215100p:plain

 

始原生殖細胞は分化すると精原細胞という細胞に名を変える。

精原細胞は体細胞分裂をして数を増やし、十分な数にまで増えたところくらいで個体が誕生する。

つまり、生まれたばかりの男の赤ちゃんの精巣には、精子ではなく、精原細胞という状態で入っている

 

f:id:inarikue:20191104215958p:plain

 

個体が生まれ、成長して思春期(10~12歳ころ)を迎えると、精原細胞は再び大量の男性ホルモンを浴びる。

この時期を保健体育では第二次性徴と習うのだが、覚えている方も多いのではないだろうか。

男性ホルモンを大量に浴びた精原細胞は一次精母細胞となる。

※このときの実際の始原生殖細胞は分裂して増えていますが、下図では分かりやすくするために複数は描かず、1個だけを描いています。

 

f:id:inarikue:20191104220826p:plain

 

一次精母細胞はその後減数分裂を開始し、それ経て精細胞となる。

この一次精母細胞は減数分裂のスタートとなる細胞であり、精原細胞までは体細胞分裂をしていたのが、ここからは減数分裂に変わる。

 

ちなみに精細胞の地点ではまだ精子特有の運動性を持っておらず、精子とは呼ばない

減数分裂のあと、精細胞は変態して初めて運動性を獲得し、精子と呼べるようになる。

 

f:id:inarikue:20191104222521p:plain

 

卵はメスが作る雌性配偶子である。

実は、卵は人間の細胞の中で最も大きな細胞である。

卵の構造

では、今度は卵の構造を見てみよう。

下図は、減数分裂の第二分裂中期の状態のヒトの卵である。

f:id:inarikue:20191104223656p:plain

表層粒・・・後の受精に必要な酵素を含んでいる。

 

卵核・・・文字通り卵の

 

ゼリー層・・・粘膜の層であり、卵を保護している。精子が大量に群がったときの緩衝材的な役割を果たす。

 

どのようにして作られる?

母親が妊娠し、胎内で子が育っていく中で卵の元も作られていく。

卵も精子も、始原生殖細胞がホルモンを浴びて分化していくという点は同じである。

 

f:id:inarikue:20191104224149p:plain

 

しかし、卵ができるプロセスは精子とは少々異なっている

先に、精子体細胞分裂でその数が十分になってから個体が誕生すると説明した。

 

だが、卵は個体が誕生する前に一次卵母細胞細胞となり、さらにこの一次卵母細胞が減数分裂を開始して少し経った頃に個体が誕生する。

つまり、女の子の赤ちゃんは、減数分裂が途中で止まった状態の卵を卵巣に持って生まれてくるのだ。

 

f:id:inarikue:20191104224828p:plain

 

この減数分裂を開始して少し経った頃」とは、具体的には減数分裂の第一分裂の前期の頃である。

 

卵は精子と違ってある程度成熟してから生まれてくるんだね!

 

個体が生まれ成長すると、第二次性徴の時期にて卵は精子と同じように大量のホルモンを浴び、止まっていた減数分裂が再スタートする。

そして卵はこの減数分裂の結果、大きいものと小さいものに分裂する。

この点も精細胞の分裂とは大きく異なる点であり、このように分裂後の細胞の大きさが不揃いである分裂不等分裂という。

 

f:id:inarikue:20191104231509p:plain

 

減数分裂でできた細胞のうち、大きいものが卵細胞となり、一方で小さいものは極体と呼ばれるものになる。

極体は将来子の体にはならず、やがて消滅してしまう。

 

精子では1つの精母細胞から4つの精子ができたけど、卵は1つの卵母細胞から1つしかできないんだね!

 

※ヒトの場合、女性の排卵が起こるのは減数分裂の第二分裂の中期の頃で、精子と出会うのも分裂真っ只中の中期の頃です。実際に精子が入ってくると卵細胞まで分裂が進みます

 

減数分裂についてはこちらの記事で解説しています

inarikue.hatenablog.com

 

まとめ

  • 精子は、動物のオスが作る雄性配偶子であり、運動性を持っている

 

 

  • 始原生殖細胞はホルモンを浴びることで精原細胞卵原細胞に分化していく

 

  • 卵は、動物のメスが作る雌性配偶子であり、人間の細胞の中では最も大きな細胞である

 

  • 卵は精子よりも成熟した状態で赤ちゃんが生まれてくる

 

  • 卵の減数分裂不等分裂であり、1つの一次精母細胞から4つの精細胞ができる精子と異なり、1つの一次卵母細胞から1つの卵細胞しかできない