エイブリーの実験、ハーシーとチェイスの実験とは?
遺伝子の本体は何かということを巡り、様々な研究や実験がなされてきた。
その中でもイギリスの遺伝学者グリフィスは、遺伝子の本体を「熱に強い物質」ではないかと発表し、一石を投じた。
今回はグリフィスに続き、エイブリー(アベリー)の実験と、ハーシーとチェイスの実験を見ていこう。
↓一応この記事の続きとなっております。
目次
エイブリー(アベリー)の実験
エイブリー(アベリー)はカナダ生まれのアメリカ人研究者である。
エイブリーも、グリフィスと同様に肺炎双球菌を使って以下の実験を行った。
病原性を持つS型の肺炎双球菌を大量に培養して、容器に入れ、すり潰したのである。
グリフィスとは違って、熱は加えてないよ!
この地点で細菌は死んでいるものの、熱を加えていないのでタンパク質は変質せずに残っている。
そして、S型菌をすり潰して出てきたDNAとタンパク質が入った容器を以下のように分け、生きたR型を入れて培養したのである。
結果
すると、結果は①のタンパク質を分解してDNAのみを残した容器から、生きたS型の細菌が検出されたのである。
DNAを残したほうの容器からは、R型に混ざって一部にS型が出現した。
このことから、DNAが形質転換に作用することが示されたのである。
※形質転換=遺伝子の性質を変えること。
ハーシーとチェイスの実験
ハーシーとチェイスは共にアメリカの研究者で、共同で実験を行った。
彼らはT2ファージというウイルスを使った実験を行った。
今度はウイルスという別のものを使って、別のアプローチを仕掛けたんだね!
※実はエイブリーの実験では、S型肺炎双球菌をすり潰した溶液の中に、タンパク質とDNA以外のものが混ざっており、実験の結果、本当にDNAが作用したのかどうかの批判や突っ込みが懸念された。
そこでハーシーとチェイスはそれらに応えるためにも、実験を行ったのである。
ウイルスを使った実験
ファージはタンパク質とDNAのみからできているという非常にシンプルな体の構造をしたウイルスで、感染対象は大腸菌である。
ファージは人間ではなく細菌に感染するウイルスなんだね。
ファージは大腸菌に感染すると、その体内で増殖し、最終的に大腸菌の体を破って増殖したファージたちが出てくる。
つまり、この感染の際ファージから「何か」が大腸菌に注入され、最終的にファージが増殖するのである。
ハーシーとチェイスは、この「何か」こそが遺伝子の正体であると考えたのである。
しかも、ファージはDNAとタンパク質からのみできているので、答えは二択である。
過程と結果
まず彼らはDNAを標識(マーキング)したファージと、タンパク質を標識したファージを用意し、大腸菌に感染させた。
これらを標識したのは後に分かりやすくするためである。
そして、ファージが付着(感染)した大腸菌を、それぞれファージごと遠心分離した。
遠心分離をすると、軽いものは漂い、重くて大きいものから容器の底に沈殿する。
ちなみに大腸菌はファージより大きいので、大腸菌が一番底に沈殿する。
だから大腸菌に注入された「何か」も、大腸菌と一緒に沈殿するはずである。
その結果、大腸菌とともに沈殿したのは標識したファージのDNAだった。
一方で、タンパク質を標識したほうは、沈殿物からは標識したものが見つからなかった。
よって、注入された「何か」はDNAであることが判明した。
そして、このハーシーとチェイスの実験と、これまでのグリフィス、エイブリーの実験を通し、それらの結果をもって、遺伝子の正体がDNAであることが完全に証明されたのである。
まとめ
- エイブリーはグリフィス同様に肺炎双球菌を使って実験を行い、遺伝子に変化をもたらすものはDNAであることを突き止めた
- ハーシーとチェイスはT2ファージというウイルスを使うという違ったアプローチで実験を行った
- ハーシーとチェイスの実験と、これまでのグリフィス、エイブリーらの実験結果をもって、遺伝子の本体がDNAであることが完全に証明された
iZooに行ってきた! カメ編
先日、休日に静岡県のiZooに行ってきました。
そこで見て体験した生き物たちを紹介・解説していこうと思います。
量が結構あるので分けていこうと思います。
そこで今回は"カメ編"です。
※あくまで生物たちにスポットライトを当ててますので、施設そのものの紹介だとか、内装とか雰囲気とかはあまり書きませんのでご了承ください
目次
iZooとは?
生物にスポットライトを当てると言いましたが、さすがにiZooとは何ぞやということくらいは書きます笑
まず、iZooは静岡県の南端賀茂郡河津町という場所にある爬虫類・両生類専門の動物園だ。
爬虫類や両生類専門の動物園なので、普通の動物園にいるようなライオンやキリンなどはいない。
代わりにカメやワニ、ヘビやカエルといった好き嫌いが分かれる生物たちが沢山飼育されている。
カメ、ワニ、ヘビ、トカゲ、カメレオン、カエル、サンショウウオなど珍しい生物を沢山見て体験できる日本唯一の動物園。
あと、爬虫類や両生類の他にもゴキブリやムカデ、クモなども見ることができる。
私はゴキブリがキツくてその辺りのコーナーは全然目視できなかったが笑
見る人を選ぶ動物園ですが、足を運んでみると貴重な体験ができるだろう。
カメ類
当施設で飼育されているカメは陸棲のカメであるリクガメ類がメイン。
他には、ニオイガメやミドリガメ、クサガメといった水に入るカメ類の飼育もされている。
ホウシャガメ(Astrochelys radiata)
マダガスカル固有種のリクガメ。
甲羅の模様が放射状を描き、とても美しく、観賞価値が高い。
写真の通り主食は野菜や果物などの植物系だが、小さな昆虫を食べることもあるらしい。
上記の写真のものは乾いて砂っぽくなっているが、実際は下図のように美しい。
By Hectonichus https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15194769
生息地である低木林帯などの開発や、外来種、観賞価値が高い故のペット用としての乱獲の結果、現地マダガスカルでは絶滅危惧種及び法的な保護対象となってしまった。
ワシントン条約にも登録され、商業目的の国際取引も禁止されている。
現在では保護が進められ、動物園などが飼育管理のもと繁殖を試みており、日本の動物園でも繁殖に成功している。
スッポンモドキ(Carettochelys insculpta)
スッポンモドキの赤ちゃん?が展示されていた。
あまりにも可愛かったので紹介しておきます笑
オーストラリアやパプアニューギニアに生息する完全水棲のカメ。
"スッポン"と名前がついているが、日本のスッポンとは全く別種のカメで、本種のみで一科一族一種を形成する。
流れが緩やかな川や池に生息し、食性は植物食傾向が強い雑食性。
つまり、野菜や果物、藻類などを好むがエビなどの甲殻類や昆虫、魚も食べる。
完全に水中暮らしのためか、手がウミガメのようにオール状になっている。
小さい頃はこのように非常に愛くるしく、一時はペットブームにもなったのだが、気性は荒く、同種との混泳は不可。
甲長も60センチ程になるため、一般家庭での飼育には相当な覚悟が必要になる。
コラム:スッポンとスッポンモドキ
似ているようで別種であるスッポンとスッポンモドキ。
両者を比べてみよう。
※スッポンモドキは現地では食用にされています。
両者は結構違うところがある。
まずスッポンは獰猛で、ほぼ肉食寄りの雑食である。
私も「スッポンは噛み付いたら離さない」なんていうのを聞いたことがあるくらいだ。
また、スッポンモドキは水中生活に特化しており、一方でスッポンは手足がしっかりしていて、陸上に上がることもある。
あと、スッポンは陸上でも意外に素早く動けるとのこと。
↓スッポン。手足に爪があり、陸上歩行も可能。
利用に関しては、日本においてスッポンモドキを食用にするケースはあまり聞かないが、スッポンは割烹店などで提供されるのを見かける。
どこかのバラエティ番組でスッポンの血を飲んでるの見たことある!笑
フチゾリリクガメ(Testudo marginata)
ヨーロッパの、乾燥した岩場や低木林帯に生息するリクガメで、多湿を嫌う。
大きさは、大きくなるオスで甲長が30センチほど。
成長に伴い、甲羅の縁が外側に反り返るような形になることから、この名がついた。
このカメも植物よりの雑食で、稀にカタツムリなどを食べるとのこと。
日本でもペットとして輸入されることがあり、少ないが流通している。
ケヅメリクガメ(Geochelone sulcata)
アフリカ(スーダン~西アフリカ)に生息するリクガメで、アフリカ大陸最大の大きさを誇るリクガメ。
乾燥した草原帯(サバンナ)に生息する。
成長すると甲長は85センチを超えるとのこと。
この大きさは既述の通りアフリカ最大であり、世界で3番目に大きなリクガメである。
食性は草食性の強い雑食性で、植物を主食としている。
多肉植物などの茎や葉を食べ、水分も同時に摂取する。
このカメ、昼と夜は自分で掘った穴の中で休んだり隠れたりしている。
じゃあいつ活動するのかというと、明け方と夕暮の時間帯に活発になる。
かなり大型のリクガメであるが、基本的に丈夫で、人馴れをすることからペットとしての人気も高い。
しっかり健康管理をして迫力ある大きさに育て上げたいところだが、このカメに部屋をまるまる献上するくらいの覚悟がないと飼育はできない。
ホクベイカミツキガメ(Chelydra serpentina serpentina)
その名の通り、北米に生息するカミツキガメ。
カミツキガメは日本では外来生物として散々暴れまわってテレビでも頻繁に取り上げられているため、そういう意味では日本人に馴染みのあるカメではないだろうか。
肉食傾向が強い雑食性で、性格は獰猛、口に入るものはとりあえず何でも食べてしまう。
基本的に夜行性で、ほとんど水の中で生活し、陸に上がることは稀だという。
甲長は最大で50センチ近くになり、噛む力も非常に強いため危険。
赤ちゃんの頃は小さくて可愛らしいが・・・
日本ではペットとして輸入された(90年代ごろ)ものが野生化したうえ、千葉県の印旛沼水系では自然繁殖まで確認されている始末。
その後カミツミガメ類は特定外来生物に指定され(2005年)、飼育・運搬・輸入などが原則的に禁止とされている。
実は許可を得ることで飼育は可能になるが、それは学術的な研究などを目的としたものでなくてはならない。
水族館や動物園などの研究施設ならまだしも、個人飼育にそのような許可が下りる可能性はほぼないと言っていいだろう。
iZooでもちゃんと許可をとって飼育・展示しているとのことだよ!
ガラパゴスゾウガメ(Geochelone nigra porteri)
このカメの名は一度でも耳にしたことがある方は多いだろう。
エクアドルのガラパゴス諸島に生息する、世界最大のリクガメで、ガラパゴスゾウガメはガラパゴス諸島産のゾウガメ類の総称。
草原から森林、低木帯など様々な場所に生息する。
甲長は最大で130センチほどになり、体重は300キロに達し、寿命は100年を超える。
現在、絶滅の危機に瀕しており、ワシントン条約に登録されるなど、その事態は深刻。
2012年地点で日本で飼育されているガラパゴスゾウガメは全てオスであり、動物園でも繁殖ができない状態が続いている。
現在、エクアドル共和国との話し合いでメスの輸入について話し合いをしているらしく、今後の種の保存活動に期待したいところだ。
ちなみに当該施設で飼育されているガラパゴスゾウガメはサンタクルスゾウガメという種である。
ガラパゴスゾウガメは日本で3頭飼育されており、iZooと上野動物園にいるとのこと。
その他いろいろ
ここからは、適当に撮ったものを張っていきます笑
巨大リクガメが大量に・・・
館内を数匹のリクガメがウロウロしています。
とりあえず何でも口に入れようとするので、ボーっとしてると足ごと靴を噛まれます。
噛み付かれると結構痛いらしいです笑
餌を買ってあげることもできます。
噛まれると危ないので必ずトングで。
施設の外にはイシガメ・クサガメの池がありました。
今はまだ気温が低いので中止しているみたいですが、暖かくなると餌をあげられるみたいです、池の鯉みたいに笑
ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)とガーが泳ぐ巨大カメ池もあります。
実はここが一番のんびりできて癒されました笑
ミドリガメは容易に入手することができますが、大きくなるうえ気性も荒くなり、飼いきれなくなった人がその辺の水辺に放流して野生化して問題になっています。
近いうち何かしらの規制がされること待ったなしのカメですが、さてどうなることやら・・・。
ちなみに混泳しているガーは今年の4月から、特定外来生物となります・・・。
次回はiZooで見て体験した他の生物についてまた紹介していきます。
2019.03.21 追記
その2 トカゲ編できました!
遺伝子とは? グリフィスの実験とは?
生物は全て遺伝子を持っており、遺伝子の本体はDNAである。
このことは今でこそ自明であるが、では遺伝子の本体がDNAと分かるまでにどのような紆余曲折があったのだろうか。
今回はDNAが遺伝子の正体だと証明されるまでの、ある実験を見ていこう。
続きを読む無顎類とは? どういう生物がいる?
ほとんどの脊椎(せきつい)動物は口に入れたものを噛み砕くための顎を持っている。
しかし一部には顎を持たず、口が吸盤のような円形をした生物たちもいる。
また、そうした生物は原始的な体の構造をしていたり、生きた化石と呼ばれることもある。
今回は無顎類(むがくるい)という生物たちに迫る。
目次
無顎類とは?
無顎類は脊椎動物の中で顎を持たない生物たちを指す。
また、現存する無顎類は口が吸盤のような丸い形をしていることから、円口類とも呼ばれる。
↓イメージとしてはこんな形の口と歯をしている。"ヤツメウナギ"や"ヌタウナギ"で画像検索をしてみよう。
特徴
無顎類に属する生物たちには以下のような特徴がある
- 口は上下ではなく左右に開閉する
- 半規管が1~2つしかない
- 体が粘膜で覆われている
- 動きが緩慢で、運動能力は高くない
- 原始的な魚類と言われるが、胸鰭(むなびれ)や腹鰭(はらびれ)がない
ここで、半器官という聞き慣れない単語が出てきたので、2番について少し解説する。
我々人間を含め、脊椎動物の耳の中には半規管と呼ばれる器官があり、この半規管は体の平衡感覚や回転感じ取る器官である。
脊椎動物の場合、この半規管が通常3つあるので、特に三半規管とも呼ばれる。
つまり半規管は運動のコントロールに関わる器官である。
無顎類は種にもよるがこの半規管を1~2つしか持たないのである。
無顎類の位置づけ
無顎類は生物の分類名であり、正式名を無顎口上綱(むがっこうじょうこう)という。
脊椎動物は、顎を持つかどうかで無顎口上綱、顎口上綱の大きく2つにわけることができる。
無顎類(無顎口上綱)に分類される生物は、顎口上綱に分類される生物よりも圧倒的に数は少ない。
ヌタウナギ綱に属するヌタウナギ類、頭甲綱に属するヤツメウナギ類のみである。
魚類も、鳥類も、爬虫類も、両生類も、そして我々人間を含む哺乳類も、全て顎口上綱の中に属している。
無顎類って魚なの?
無顎類は厳密には魚類ではない。
しかし有顎類(顎口上綱)は無顎類から進化したとされており、よって無顎類は「原始的な魚類」ということで、魚類図鑑にて解説されていることが多い。
※ちなみに無顎類は浅い海の中で誕生したとされている。
ほとんどが絶滅
地球に初めて無顎類が誕生したのは今から5億年ほど前の、古生代のカンブリア紀という時期。
ちなみに無顎類は有顎類よりも1億年ほど先に出現している。
だから無顎類はかなり長い歴史を持ち、現存する種が「生きた化石」などと呼ばれることは頷ける。
しかしながら、ほとんどの種は同じ古生代の末期までに絶滅してしまっている。
※絶滅の原因は不明
上図の赤く塗られた部分に属していた生物たちは全て絶滅している。
現存するのはヌタウナギ綱に属するヌタウナギ類と、頭甲綱に属するヤツメウナギ類のみである。
古生代という時代については、ざっとですが以下の記事で解説しています。
無顎類の一種であるヤツメウナギについて、別記事で解説しているので暇な方はご覧ください。
まとめ
- 無顎類は顎がないという特徴以外にも、半規管の数が少なかったり、見た目は魚のようで胸鰭や腹鰭がなかったりと、他の脊椎動物とは変わっている
- 無顎類は海で誕生し、見た目も魚っぽいが、厳密な分類では魚類ではない
- 無顎類は、正式には無顎口上綱という
ヌタウナギとは? ウナギとは違う? そもそも魚じゃない?
ヌタウナギは、我々のよく知るウナギとは程遠く、厳密な分類では魚類にすら分類されていない。
彼らは無顎類や円口類という生物に分類され、魚類図鑑において「魚類とは最も遠縁の生物」だとか、「原始的な魚類」などと載っている。
今回はそんな不思議なヌタウナギについて語ろう。
目次
ヌタウナギとは?
ヌタウナギとは、ヌタウナギ類(正確にはヌタウナギ綱)の総称である。
一口にヌタウナギと言っても、ヌタウナギ、クロヌタウナギ、ホソヌタウナギなど様々な種類がおり、これらをまとめてヌタウナギと呼んでいる。
ヌタウナギは世界に約80種近くが確認されており、温帯域に主に生息するが、熱帯域にはいない。
生息する海の深さは浅海域~深海域まで、様々である。
ウナギでもなく、魚類でもない
ヌタウナギの分類を図示すると以下のようになっている。
ヌタウナギが属する無顎口上綱(むがっこうじょうこう)の生物たちは、無顎類、円口類とも呼ばれ、文字通り顎(あご)を持たない生物たちである。
ところで、私たちが一般的に魚類と呼んでいる生物たちは、実は上図の顎口上綱というグループの中に分類されている。
顎口上綱に属する生物には軟骨"魚"綱、硬骨"魚"綱と、はっきり"魚"という文字が入っている。
だが、ヌタウナギは無顎口上綱の中にいる。
ちなみに、私たちが普段かば焼きなどにして美味しく頂いているなじみ深いウナギは硬骨魚綱の中にいる。
つまり、ヌタウナギは我々のよく知るウナギとは外見が似ているだけで、全くの別種であるばかりか、魚類にすら分類されていないのである。
↓下は私たちに馴染みのある普通のウナギ
体の特徴と生態
ヌタウナギは体の特徴などから原始的な生物・生きた化石とも呼ばれている。
他の脊椎動物とは一線を画すような構造をしていたり、謎も多い生物である。
では、そんなヌタウナギの生態や体の特徴を見ていこう。
顎がない?
ヌタウナギは無顎類であり、我々人間や海に生息している多くの魚のような上下に開閉する顎がない。
ヌタウナギの口の構造は、円形または楕円形の口で、左右にキザギザの歯がついており、口を左右に開閉することで噛むことができる。
運動は苦手?
ヌタウナギは動きが緩慢であり、素早く泳ぐとか、機敏に泳ぎ回るような運動は苦手である。
その理由として
- 脊椎動物の中で動脈血圧が最も低い
- 小脳がない
ことが挙げられる。
まず、ヌタウナギは動脈血圧が低い。
これが何を意味するのかというと、血液を全身に送り出す心臓の力がかなり弱いということである。
事実ヌタウナギには心臓が3~4つある。
次に、小脳がないことも運動能力の低さを物語っている。
小脳は我々人間にとっても、運動能力を制御する役割を持つ非常に重要な部分である。
夜行性だが・・・
ヌタウナギは上記のように運動能力が低いため、外敵が多い昼間の活動は避ける。
つまり夜行性である。
その眼は皮膚の下に埋没してしまっており(退化している)、水晶体や虹彩がない。
もちろん目を動かすような筋肉もない。
しかし網膜と視神経は存在しており、はっきりとした獲物や敵の姿は見えなくても光を感知することはできる。
光を感じとる器官が頭部と尾部の皮膚に集中的にあるとのこと。
つまり、昼夜の区別はできている。
腐食性
ヌタウナギは何を食べているのかというと、基本的に腐食性。
つまり死骸や弱った魚などを狙う。
死んで海の底に沈んだクジラの死骸などを真っ先に嗅ぎつけ、群がる姿がよく撮影されている(結構気持ち悪い笑)。
細長い体で狭い場所まで潜り込み、肉をはぎ取るようにして食らう。
また驚くべきことに、ヌタウナギは腐肉や死骸の中(無酸素状態)に潜り込み、しばらくの間生きられることが確認されている。
※このようなことが可能な理由は心臓が複数あることと関係しています。
スーパースライマー
ヌタウナギを象徴する特性が、とにかく大量の粘液を放出することである。
※粘液は英語でslime(スライム)という。
腹部にある粘液孔という場所から出すのだが、この粘液がヌタウナギの最大の武器である。
その量はなんと、一瞬で960ミリリットル程を出せるとのこと。
これはカップ4~5杯分に相当するほどの量。
この粘液を使い、防御面では、サメなどの外敵に噛みつかれたりすると大量に放出し、撃退する。
攻撃面では、弱った魚などの口から入り込み、粘液を大量に出して窒息させるというエグいこともする。
また、ヌタウナギは一度噛みつかれたくらいではダメージを受けない。
ヌタウナギの皮膚はダブダブにたるんでおり、歯などが通りにくいのだ。
むしろ相手に噛みつかせ、口が開いた状態で思いっきり粘液を出して窒息させようとする。
※粘液については以下のナショナルジオグラフィックの記事を参照にしました。
大量の粘液でサメを撃退する動画も見られるので、是非見てみてください。
柔軟性が高い体
ヌタウナギは脊椎動物でありながら脊柱(背骨)を持たない唯一の動物である。
本当に脊椎動物なのか疑いたくなるが、脊柱の代わりに脊索というものを持っている。
脊索は軟骨性であるため柔らかく、このおかげでヌタウナギは自分自身の体を結んでしまえるほどの柔軟性を持っている。
ちなみに、脊索は基本的に脊椎動物の発生時に共通して見られるが、成長とともに背骨に置き換わる。
しかし、中にはヌタウナギのように脊索を体の支えとしてずっと持ち続ける生物もいる。
粘液の研究と活用
ヌタウナギのアイデンティティーである強力な粘液は、人類にとっても利益をもたらす可能性がある物質として、研究が進められている。
粘液の中には大量に繊維が入っており、この繊維がクモの糸に匹敵する強度と軽さを持っていることが分かったのだ。
クモの糸で衣服を作る研究はだいぶ前からされており、ヌタウナギの粘液も有効活用できないか模索されている。
もしヌタウナギの粘液が有効に活用された場合、ナイロンの代替となることが期待できる。
ナイロンは石油から作られているので、もしヌタウナギという生物由来の繊維が有効に活用できれば、石油の消費量が減り、結果的に環境保全に一役買うだろう。
まとめ
- ヌタウナギは私たちがよく知るウナギとは全くの別種であり、厳密には魚類にすら分類されていない
- ヌタウナギは泳ぎがあまり得意ではなく、夜行性である
- ヌタウナギは大量の粘液という強力な武器を持っており、これを使って攻撃と防御を行う
- 粘液は大量に繊維を含んでおり、今後生物由来の繊維としての有効活用が研究、模索されている
磯の生き物は楽しすぎる 2019.03.06 海水水槽レポート
今回は、前回から2か月ほど経過した海水水槽の様子を報告していきます。
トラブルなどもありましたが、外の気温もだんだん温かくなり、磯での採集もぼちぼち行くようになってきています。
目次
現在の水景
現在の水景はこんな感じ
相変わらずダークな雰囲気を醸し出している磯水槽です笑
この水槽は特にレイアウト変更はしないので、あまり変わってないけど、1枚目の写真の右側に注目!
これはホッキ貝の殻です。
スーパーで活きたものが安売りしていたので、焼いて食べたあとに殻をレイアウト用として入れてみました笑
早速アゴハゼが入ったりして休んでますね笑
さすがに貝が大きすぎて、生きたまま入れるのがためらわれたので自分が食べました。
もちろん、とても美味でした。
アンタはキツいやろ・・・笑
曲者のカニ
見てください、かなり綺麗に脱皮しています。
最初見たときは死骸かと思ったのですが、イソガニの脱皮殻です。
脱皮は成功して良かったのですが、大きくなるにつれてイソガニが日々凶暴になってきました。
磯に生息するカニはイシガニというカニと、イソガニというカニがほとんどを占めます。
イソガニはイシガニに比べて大人しいほうなのですが、あくまでイシガニ基準ですからね・・・。
ヤドカリを襲うようになり、体格差的に大丈夫だと思っていたケアシホンヤドカリもやられました。
触角が切れてしまったケアシホンヤドカリ。
元気がなくなり、一時「死んでしまうのでは?」と思ったくらい。
後に脱皮で再生していきますが、本当に心配でした。
隔離
そこでカニを隔離することに・・・。
元の海水水槽の海水を使ってすぐに水槽を立ち上げ、ここで単独飼いすることに。
じっと隠れています。
脱走
そんなイソガニでしたが、残念ながら脱走の末、凍って死んでしまいました。
脱走対策は穴をふさいでしていたつもりだったのですが、怪力でフタそのものを開けるという力技で脱走されてしまいました。
どこを探しても見当たらず、結局数日後に非常に寒い玄関でカチカチになっているのを見つけました。
自分の対策の甘さに悔しい思いをしましたが、イソガニは飼育していて曲者ながら本当に楽しかったです。
採集時は片バサミで少し弱っていた個体でしたが、脱皮で再生し、積極的に餌も食べてくれました。
そして、好ましくはないですがヤドカリを襲うまで元気になってくれました。
もし次に飼育する機会があるとすれば、カニ同士か単独飼いで、脱走対策を本当に注意したい。
自分の飼育していた個体はかなり大きなサイズまで成長してましたが、あれがイソガニのMAXサイズなのかな?
とりあえず、どこまで大きくなるのか見たかったな。
何もいなくなった水槽。
寂寥感と虚しさが残る。
採集もぼちぼち
1~2月中旬くらいまでは雪が多く、凍てつく寒さに採集がなかなかできませんでした。
カモメの群れ。
しかし、2月の中旬を過ぎると急に暖かくなり、潮見表を見ながら磯へ赴く機会も増えました。
・・・とは言ってもそれでもまだ寒く、海水に手を突っ込むと手がおかしくなりそうです笑
今の時期はまだ海水が冷たく、生物も少ないのですが、ヤドカリやアゴハゼはちらほら見かけます。
自然界ではヤドカリはこんな歪というか、ギリギリの貝殻に入った個体も見かけます。
新しく加わった仲間たち
なんと!ケアシホンヤドカリのLサイズ個体を採集できました。
これで我が家では古参のケアシも含めて2匹目となります。
このヤドカリ、赤い触角に毛が生えた脚で、ケアシホンヤドカリにそっくりなのですが、実は別種です。
ヨモギホンヤドカリという種類のヤドカリで、本当にケアシにそっくりです。
しかし、そっくりながらヨモギとケアシの見分け方は意外に簡単で、脚の先端手前に黒いラインが入っているかどうかで見分けます。
黒いラインが入っていればヨモギ、入っていなければケアシです。
ですから、この2枚目の子はヨモギホンヤドカリということになるみたいです。
生体たち
カニの件は残念でしたが、生体たちは採集したヤドカリを数匹追加したものの、それ以外にほとんど変化はありません。
ヤドカリたち
ホンヤドカリは見ていて本当に興味深く、飽きないですね。
色々な大きさのヤドカリがいて、色々な貝殻に入っている。
本当に十人十色で、みんな違ってみんないい。
体色も様々で、この個体は青みが強い。
よく小さなヤドカリが大きなヤドカリの上に乗っている光景を見かけるのですが、何か意味があるんでしょうかね笑
とても好きな仕草?の一つでもありますが笑
ケアシホンヤドカリに似ていますが、先ほどの同定の話でも述べたように、脚の先端手前に黒いラインがありますね。
今後追加するとかは考えていません。
続いてお待ちかね?のケアシホンヤドカリ笑
あ、実は黄色い貝殻からこのエメラルドグリーンの貝殻に一時引っ越ししてました笑
数日で戻りましたが笑
こちらは新入りのケアシホンヤドカリ。
やっぱりケアシホンヤドカリは採集に行くと採れる平均サイズがデカいですね。
アゴハゼ
アゴハゼは立ち上げ当初から4匹いますが、1匹も欠けず、元気にしております。
4匹とも体の模様が微妙に違ったりしていて、見ていて面白いです。
レイアウトの石が保護色のようになってていいね!
色々なところから顔を出します。
こういう仕草が本当に好きです笑
水槽を覗き込むと餌をもらえると思って出てきます。
よく真正面で対面するのでこんな写真が撮れます笑
イトマキヒトデ
イトマキヒトデはこの水槽内の強烈なアクセントでもあります。
ヒトデって動かないし飼ってて何が楽しいの?って飼育する前は思っていたのですが、飼育してみると本当に面白い生き物です。
ヒトデの裏側。
ちょっとグロテスク?
私は触手とかあまり好きではないのですが、ヒトデは大丈夫です笑
拡大してみた。
ヒトデって鈍いだけで結構動きます。
あとかなり食べます。
でも数週間何も食べなくても大丈夫みたいです。
悪食というやつでしょうか、死骸から海藻まで、食べられるものは何でも食べようとします。
生きた魚やヤドカリを襲うことはないのですが、貝類が大好物なようで、生きたアサリなどを入れるとすぐに察知して捕食しに来ます。
生きたアサリを持ち上げていますね笑
貝殻が閉じていてもこじ開けて食べます。
※イボニシについて
実はこの水槽には、滅多に姿を現さない、超レアキャラがいます。
それはイボニシという小型の巻貝です。
滅多に姿を見せないのでまともな写真がありません。
軽くイボニシについて紹介しておくと、イボニシは淡水性のキラースネールという貝の海版という感じです。
つまり貝食性の肉食貝です。
餌となる他の貝類を見つけると酸で貝殻に穴をあけ、中身を食べます。
磯にいくとたまに小さな穴だらけの貝殻や、貝に群がるイボニシを見かけます。
イボニシは養殖の牡蠣なども食害するため、その界隈では嫌われ者らしいです笑
また、腐肉食性的な一面もあり、死骸にも群がります。
我が家のイボニシは昨年12月頃~今年2月頃まで一切姿を見せず、死んでしまったと思っていたのですが、2月中旬頃に生存を確認。
それと同時に、イボニシは砂に潜る習性があることが分かりました(この目で確認済み)。
この習性のようなものはネットでも見つけることができなかったのでちょっと感動。
小型の巻貝が砂に普段潜っているのですから、なかなか発見できないのも無理ないですね・・・。
それにイボニシは飢餓耐性も高いらしく、1度給餌すればしばらく食べなくても大丈夫なようです。
我が家では常に砂に潜っていて、仮に出てきたとしてもその小さな体でレイアウトの隙間などに入り込むので、滅多にお目にかかれません。
次見つけたら絶対写真撮りますので許してください笑
今日はここまで!
閲覧ありがとうございました。
細胞膜とは何か? 原形質流動って?
私たち人間を含めた動物や植物、魚、そしてゾウリムシやミジンコも細胞に核をもつ真核生物という生き物である。
そして真核生物の細胞の中には、核以外にも様々な器官がある。
今回は、真核生物の細胞について、地味ながら外側から見ていこう。
↓以下の記事も参考にどうぞ
目次
細胞膜とは
真核生物だけではなく原核生物も含め、生物の細胞には二重層の膜があることが分かっており、これを細胞膜という。
細胞は、この細胞膜で自己と外部を仕切っている。
下図は簡単な真核細胞を書いたが、ご覧のとおり黒い太線が細胞膜である。
細胞膜は仕切りみたいなものなんだね!
細胞膜の役割
細胞膜の役割は大きく分けて3つあり、それは
- 細胞と外部を仕切ることで細胞の内部環境を一定に保つ
- 特定の物質のみを通過させることで細胞を守る
- 隣り合う細胞と情報交換を行う
である。
2番目の性質がちょっとわかりにくいので補足しておこう。
細胞膜は外部との仕切りであると同時に、外部とのやりとりを行うゲートでもある。
細胞には常に様々な物質が届けられたり、あるいはやって来たりするが、そうした物質が必ずしも細胞にとって必要なものとは限らない。
そこで、細胞膜はやってきた物質をなんでもかんでも内部に通すわけではなく、特定の物質のみを通す仕組みになっており、そうすることで細胞を守っているのである。
↓細胞膜の詳しい仕組みについては以下の記事もご覧下さい
細胞膜の構造
細胞膜は5~6nm(ナノメートル)ほどの厚さである。
これは電子顕微鏡という顕微鏡を使わなければ見ることのできない厚さである。
学校の理科室などに置いてある光学顕微鏡では見えないよ!
次に具体的な構造を見ていこう。
下図は、細胞膜の断面図であり、上が細胞の外側、下が細胞の内側である。
見てみるとまず気付くのが、リン脂質という物質が2つ並び、二重の層を形成していることだ。
冒頭で述べた"二重層の膜"とはこのことである。
ちなみにリン脂質とはその名の通り、リン酸と脂肪酸が結合したもの。
リン酸と脂肪酸はそれぞれリンを主成分、脂肪を主成分とした物質である。
リン酸は水になじみやすい性質を持ち(親水性)、一方で脂肪酸は水になじみにくい、水を弾く性質(疎水性)がある。
つまり細胞膜は、水になじみやすいリン酸と、水になじみにくい脂肪酸という相反する物質でできたリン脂質の二重層構造なのである。
脂肪は油だから水を弾いたりすることは分かるけれど、そんな水をはじく脂肪酸でできているなら物質のやりとりができなくない?
指摘の通り、実はリン脂質の部分は、内外の先端に水になじみやすいリン酸があるものの、中に脂肪酸があるので物質が出入りできないようになっている。
そこで、必要な物質はタンパク質の部分を通してのみ出入りをする。
このタンパク質は膜の中にあるので膜タンパク質と呼ばれおり、膜タンパク質はリン脂質の中を自由に移動できる。
膜タンパク質では、血液によって運ばれてきた養分が入ってきたり、逆に細胞から出た老廃物などを血中に排出したりして、物質が出入りしている。
イメージとしては、リン脂質が無数に並んだ中にタンパク質がプカプカ浮いている感じだよ!
細胞質基質
何だかめんどくさそうで難しそうな名前だが、細胞質基質は下図の薄い青い部分。
難しそうな名前の割には何もないんですけど・・・。
何もない空間のように見えるが、細胞内は水を主成分とする液体で満たされている。
これが細胞質基質であり、主に水分と酵素が混ざってできている。
人間の体は半分以上が水だったよね。それはこうやって細胞に水が多く含まれているからだよ!
細胞質基質の役割は細胞内の中のものを循環させることである。
絵からは分からないが、実は細胞の中は常に流動している。
細胞質基質が動く(流動)することによって細胞の中で循環が起こるのだ。
原形質流動
またまた難しそうな言葉が出てきたが、細胞質基質が流動することを専門用語で原形質流動という。
※原形質とは細胞膜を含めた細胞全体のことを表す。
細胞質基質は何の原動力もなく動いているわけではなく、先述の、中に含まれている酵素などの化学反応で生じたエネルギーをもとに動いている。
ちなみにこの化学反応は、生きている細胞でしか起こらない。
つまり、原形質流動が起こっているか(細胞質基質が動いているか)を観察すれば、その細胞が生きているのか、あるいは死んでいるのかを判断することができる。
まとめ
- 細胞は二重層の膜で包まれており、これを細胞膜という
- 細胞膜は細胞の内外での物質のやりとりを行い、細胞内の状態を維持する役割をしている
- 細胞膜は、リンを成分とするリン酸、脂肪を成分とする脂肪酸が結合したリン脂質とタンパク質でできている。
- 細胞内の、一見何もない空間のような部分は水を主成分とした液体で満たされており、これを細胞質基質という
- 細胞質基質は常に流動し、細胞の中のものを循環させる役割をしている
- 細胞質基質が流動することを専門用語で原形質流動と言い、この流動が起こっているかどうかで、細胞の生死を判断できる
最後に、今回チラっと出てきた顕微鏡の話も以下の記事で解説しています。
暇があったら見てください笑。
単細胞生物と多細胞生物の違いは? どんな生物がいるの?
全ての生物は必ず細胞を持っている。
ちなみに、最近の研究によると人間は37兆個の細胞からできているという。
だが、"細胞を持っている"とは言っても、人間のように多数の細胞から複雑な体を構成している生物もいれば、細菌類のように、たった1つの細胞に生きるために必要なものを全て備えているものもいる。
今日は単細胞生物と多細胞生物を比べてみよう。
目次
単細胞生物
1つの細胞で1つの体を構成している生物を、単細胞生物という。
単細胞生物は1つの細胞で全てをやっている。
つまり単細胞生物は1つの細胞に、生きるために必要な器官などを全て備えている。
単細胞生物の例は細菌類やゾウリムシなど。
では、身近でイメージしやすいゾウリムシの体を見ながら単細胞生物を見ていこう。
※ゾウリムシはその辺の池や水辺にいます。
ゾウリムシで見る単細胞生物
Wikipediaから引用させていただいた、ゾウリムシの絵である。
by Ciarachristina https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=32860645より引用。
各部位の名称は
- 食胞
- 小核
- 細胞口
- 細胞咽頭
- 細胞肛門
- 収縮胞
- 大核
- 繊毛(せんもう)
で、このうち4番と5番以外について順に見ていこう。
①食胞
食べたものを消化するところ。人間でいう胃などの消化器官に該当する。
②小核
核。ここにDNAが入っているのだが、普段は使わない。普通核を持っている生物の細胞には1つの細胞につき核が1個あるのだが、ゾウリムシには小さな核(小核)と大きな核(大核)が2つある。詳細は後述。
③細胞口
いわゆる口。ここから餌を体内取り込む。ゾウリムシの実際の写真を見るとここだけくぼんで見えるので、すぐ細胞口だと分かる。
⑥収縮胞
体内の水や老廃物を排出する、いわゆる浸透圧というものの調整をおこなう場所。ゾウリムシは淡水に生息しており、周囲の水よりも体内の液体ほうが濃度が濃い。そのため常に水が体内に入り続けて最終的に水で膨らみすぎて破裂してしまう危険がある。それを防ぐために、この収縮胞から体内の水を排出して、バランスを保っている。
⑦大核
大きいほうの核。こちらにも小核同様DNAが入っており、普段使う核はこの大核である。
コラム:ゾウリムシの小核と大核
全ての生物は細胞を持っているが、細胞には種類があり、細胞の中に核を持つものと持たないものがいる。
そして、細胞に核を持つタイプの生物の場合、基本的に1つの細胞には1つの核しかない。
しかしゾウリムシは小核と大核の2つの核を持ち、小核は普段は使わない。
小核を使うのは生殖のときである。
ゾウリムシは通常は分裂してクローンを生み出す無性生殖をおこなうことで増えていく。
しかしこのときも小核は使われない。
小核が使われるのは有性生殖のときのみで、特定の条件下でゾウリムシがペアになり、互いの小核を交換することで有性生殖をおこなう。
ゾウリムシは無性生殖と有性生殖の両方を使い分けているのである。
無性生殖だと遺伝子が全く同じクローンしか増えないから、有性生殖によって自分と相手の遺伝子を交換して、遺伝子の多様性を確保するんだね。
※YouTubeに今回の記事とリンクするゾウリムシの良い動画があったので、時間がある方は是非どうぞ↓
多細胞生物
多数の細胞で1つの体を構成している生物を多細胞生物という。
例は我々人間や犬、魚など。
ちなみにクラゲも多細胞生物だよ
多細胞生物は1つ1つの細胞が役割分担をし、1つの体を構成している。
単細胞生物と多細胞生物の違い
先ほどのゾウリムシの例でも見たように、単細胞生物は生きるために必要な器官が1つの細胞に全て備わっていた。
それに対し、多細胞生物の細胞は1つ1つの細胞が特定の役割に特化し、役割分担をしている。
ある細胞は目の細胞になり、ある細胞は肝臓の細胞になり、ある細胞は手の細胞になり・・・という感じで、1つ1つの細胞が体のパーツである。
しかも目の細胞は目しかできないし、肝臓の細胞は肝臓の役割しかできない。
単細胞生物では、細胞は体の一部というよりも本体だったね!
単細胞生物から体細胞生物へ
最後に、ちょっとだけ細胞の歴史を見てみよう。
地球に最初の生物が誕生したのが38億年前
↓
多細胞生物が出現したのは10億年前
地球に最初に誕生した生物はもちろん単細胞生物だったが、それから多細胞生物が出現するまでに28億年かかっている。
では、10億年前に多細胞生物がある日突然出現したのか?
実は、単細胞生物と多細胞生物の中間的な生物が発見されている。
細胞群体
単細胞生物が多数集まり、1つの個体になったものを細胞群体という。
あまり聞いたことはあまりないかもしれないが、ボルボックスやユードリナという生物が例だ。
細胞群体は単細胞生物が多細胞生物に進化する過程にある、中間的な生物と言われている。
細胞群体は多数の細胞が集まっている点で多細胞生物に非常に似ているように思われがちだが、両者には決定的な違いがある。
それは、細胞群体はあくまで単細胞生物の集合体に過ぎないということだ。
先に述べたように、多細胞生物は1つ1つに役割があるのだから、細胞がバラバラになったら生きていくことができない、あるいは生命活動に大きな支障が出る。
例えば手足がなくなったり、肝臓がなくなったり、何かが欠けるとかなりのハンデを負うよね。
しかし、細胞群体は単細胞生物の集まりなので、一部がバラけたり、集団から1つの細胞になってしまったとしても生きていくことができる。
最後に:単細胞生物=単純か?
ここまで、単細胞生物と多細胞生物の違いについて見てきたが、単細胞生物=単純な生物だろうか。
ちょっと以下の写真を見てほしい。
これは海ぶどうという海藻の一種である。
飼育している方、食用で食べたことのある方様々だと思うが、実はこの海ぶどう、単細胞生物である。
たった1つの細胞しか持たない生物がこんな複雑で巨大な体を作ってるなんて、面白すぎる・・・!
よく1つのことしかできない人を"単細胞"と揶揄することがあるが、実際の単細胞生物は1つの細胞で色々やらなければならないのでかなり忙しそうだ。
また、多細胞生物の細胞1つ1つが何かの役割に特化した"スペシャリスト"とするならば、単細胞生物は1つの細胞で色々なことをやっている"ジェネラリスト"である。
海ぶどうを例に挙げたように、単細胞生物にも不思議で興味深い体の作りをした生物はいるし、多細胞生物にだって面白い背負い生物がたくさんいる。
当記事を読んでくれた方に、ぜひ生物について色々調べたり、興味を持っていただけたら本当に嬉しい限りである。
まとめ
- 1つの細胞で1つの体を構成し、そこに生きるために必要な器官などを全て備えている生物を単細胞生物という
- 多数の細胞で1つの体を構成している生物を多細胞生物という
- 多細胞生物は1つ1つの細胞が特定の役割に特化し、その役割しかできないので、細胞が欠けたりすると体に大きな支障が出る
- 単細胞生物が集合して1つの個体になったものを細胞群体という
- 細胞群体は多細胞生物と違い、単細胞生物の集合体に過ぎないので、欠けたり最悪バラバラになっても生きていくことができる